治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

カーブの先の上り坂 ミッション×2の鹿児島旅行ご報告 その2

2023-09-11 09:48:17 | 日記
機内では、彼女と私が二列席に。
夫は近くで一人座ります。
私たちからは離れているけど、荷物の上げ下ろしは手伝ってもらえる微妙な位置(笑)。

離陸すると、相変わらずきったねえ羽田の海が窓の外に広がります。
やっぱり処理水は大丈夫だ、と私は思いました。
ここはこんなドブみたいな色なのに、三浦半島に行くとあんなにマシになっている。すぐ近くなのに。
そして奄美に行くとあの美しさなのだ。
海はすごい。
夏ばっばの言う通り、時々牙をむくけど。
そして甘えてはいけないけど。

雲を上から見るだけで、心が洗われるようでした。
考えてみたら私、久々に飛行機に乗る人を連れて、窓際に座ってしまっている。
席を変わってあげようかな。
と思ったら彼女は、夢中でモニターを見ていました。ヘアスタイルの作り方とかやっていた。もともとおしゃれに関心が深い人なのです。

鹿児島に着陸寸前、きれいな虹がかかりました。
私は「ねえみてみて」と窓の外をさしました。
「わあ、きれい!」
いい予兆だといいな。

降り立って預けていた自転車を引き取り、バスへ。
夫が切符を買ってきてくれました。
鹿児島空港にはサイクルステーションもあり、ロードバイクの人たちはそこで組み立てしています。
ブロンプトンの私たちは輪行袋に入れたままバスで運びます。
「これなあに? 自転車?」と係りのおじさん。
「そうです」
「どこ走るの?」
「桜島」
「じゃあフェリーでうどん食べるといいよ!」
「あれ、食べたことないです。15分で食べるの大変そうですよね」
「乗ってすぐに注文しないとね」

なんていう会話を交わしました。

それから鹿児島中央駅に着き、ホテルへ。
フロントで、彼女の部屋一泊分、私たちの部屋二泊分の部屋代を前払いします。入湯税も払います。
彼女が財布を出そうとしますが、大丈夫です。
ご家族から旅費は預かってきているのです。
当初私の分も払うと送金してくださったのですが、夫が一緒に来ることになり私の旅行はたんなる家族旅行になりましたので、返金しました。

そして彼女に今後の説明をし、オプションを出しました。
「明日。7時には伊敷病院に着いている必要があります。6時半にタクシーを呼ぶか、駅からタクシー等に乗るか、決めてください。交通費は先日お渡ししましたね。あれはご実家から預かってきたお金です。
 伊敷病院は有名ですから運転手の人は知っていると思いますが、知らないときのために、念のため住所はこちらです。
 鹿児島中央駅の付近はにぎわっています。これから遊びに行くのは自由です。ただしお買い物するのなら、自分の貯金から払ってください。
 夕食はいつも早いですか? うちは夫が遅めに食べたがります。明日も早いから一人で早く済ませてもいいし、遅めでいいのなら一緒でもいいです」
 ここで夫が「19時はどうだろう」と言いました。彼にしては譲歩してくれています。19時で一緒でいいというので、それまで自由行動としました。彼女は街に飛び出していきました。
 元々華やかな生活をしていた彼女。ウインドーショッピング等は大好きです。
 だけど今の生活ではそういうこともできないのです。GHでは「外出は週に二度、含通院」と決められているから。コロナ禍では週一回だったので、通院があるとあとはずーっとGHと作業所の往復しかできないのです。
これでは治るものも治らないのですよね。

あと、温泉も入れるよと言いました。
実は焼酎風呂も勧めたことがあるのですが、無理だと言われました。
なぜならGHでは2人一緒にお風呂に入らなければならず、お湯に何か入れることなど許されず、そもそもすでに汚れたお湯なので、身体をつける気にもならないということ。
だいたいが知的障害のある女性と一緒に入るので、ほぼ介助に終われ、規定の時間(20分)が終わってしまうということ。
だから私は、ぜひ今回は温泉付きの宿にしたかったのです。
ゆっくりと手足を伸ばしてお風呂に入ってもらいたかった。
「気持ちいい」を取り戻してもらいたかった。

そもそもGHではお風呂の最終時間が16時半。
なので、今通っているB型も本来16時までなのに、一人だけ15時上がりにしてもらっているそうです。じゃないとお風呂に入れないから。

もちろん職員の生活もあるので、利用者のお風呂を早く済ませたいのはよくわかります。
でも皆さんに知っておいてほしいのです。
「支援された暮らし」はこういうものであることを。
だったら、知的障害のない人はなるべく自由度の高い暮らしを選べるように小さい時から準備した方がいいし、そういう人がリソースを食わないことで、本当に支援が必要な人への支援が少し自由度の高いものにできる余裕ができるかもしれません。
つまり「治るが勝ち!」なのです。
支援乞食になるより、治った方が自由な人生を送れるのです。

彼女が街で遊んでいる間、私たちは温泉(&洗濯)。
湯上りの部屋で洗濯機が終わるのを待っている間、ジャニーズ会見をワイドショーでやっているのを見ました。
社名変えないのか。すげえな(褒めてない)。
っていうかなんでテレビ突然この問題やりだしたのだ?

ローカルニュースに目を向けると「豚熱が逼迫しているので、ワクチンの説明会に、豚専門獣医だけではなく牛専門獣医も招集」みたいなのやっていて「産地の分業はすごい!」と感心したりしました。
犬猫ばかり見ている横浜の町医者獣医とかはここでは役に立たないんだろうか?
もっと逼迫すると馬の人とかも呼ばれるのだろうか?

そしてレストランへ。
彼女は先に待っています。
「なんにしようか~」とか言い終える前に、注文するものを決めていたようでした。海鮮漬け丼定食です。
精神病院から刑務所的GHに送られた彼女は、ほぼほぼ、生ものを口にする機会がないのでした。だから生ものを食べると決心していたのです。魚の美味しい鹿児島でよかったです。
私たちは刺身定食にしました。



繰返しになりますが
支援される人生とはこういうものです。
外出の自由、お風呂の時間、食べるもの、すべて他人に指図され、管理され、ただただ福祉法人の売り上げとなるだけの人生です。
皆さんはご自分のお子さんにそういう人生を送らせたいですか?
だから「治るが勝ち!」なのです。

施設の食べ物だから、PFCバランスは考えてあると思います。
でもサラダは週に一回くらい。たいていは玉ねぎの煮たの。牛肉はまず出ないし、豚肉もほとんど出ない。肉は鶏肉のみで魚介類はほぼ魚肉ソーセージ、ということでした。
彼女は小さいころから小食だったし、精神病の薬を飲み始めてから必ず下剤も処方されるので、腸内環境は悪く、主治医に「体重増やさないと」と言われています。それでがんばってGHの食事はお漬物一枚残さず食べるけれど、増えない、ということでした。
夫はそれをきいて、追加できびなごとか、さつま揚げとか、注文していました。
ゆっくりだけど、全部食べていました。
そして小さい頃私が遊びに来ると彼女の母が「淳子ちゃんはなんでもおいしいおいしいと言って食べてくれる。なのにあんたは食べてくれない」とぐちっていたというエピソードを披露してくれて
夫は大笑いしていました(笑)。

「明日神田橋先生にはみていただけるんですよね?」というので「とにかく早く行って順番取らないと」と言いました。
かつてと違って今は午前中先着15名。8時からの整理券配布ですが、7時には行かないといけないみたいだ。
だからとにかく病院にたどりついて。
病院に行くと、愛甲さんが待っていますよ。

神田橋先生には彼女が行くことはお知らせしてありました。
愛甲さんからも私からも。
でも病院のルールはルールです。遅く行って整理券に間に合わなかったときにごねることは愛甲さんも私もできません。
幸い毎日早起きな人なので、とにかく早く行ってくれと言いました。

結果的に彼女は5時半に病院につき、一番だったそうです。
なぜかというと、眠れなかったそうです。
「あなたは一生障害者だ」と言われるのが怖かったそうです。
でも結果は真逆でした。

続く

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