- 吉富有治
- ジャーナリスト
1957年、愛媛県生まれ。大阪在住。金融専門誌、写真週刊誌「FRIDAY」の記者などを経てフリー。地方自治を中心に取材し、テレビのコメンテーターや雑誌などに寄稿。著書に「大阪破産からの再生」など。
<4>要のカジノは風前の灯…経済効果はいまだに明示されず(全文)
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いわゆる大阪都構想が目指すものは成長戦略と二重行政の解消、そして住民に近い基礎自治体、この3つだ。
この成長戦略は経済成長を意味し、大阪市を廃止して4つの特別区を設置すれば大阪は首都東京のように経済発展すると維新の会は説明する。これがホントなら万事メデタシだが、話はそれほど簡単ではない。
いわゆる都構想の設計図である特別区設置協定書に成長戦略の具体案は示されていない。参考として、大阪市を廃止して4つの特別区をつくれば10年間で約1兆1000億円もの歳出削減効果が生まれ、その余剰金の一部を投資に回せば約5000億円から約1兆円の経済効果が生まれるという某大学のリポートがある程度だ。しかし、このリポートこそ成長戦略の理論である。
ところが特別区が担う仕事の何を削れば1兆円超のコストカットが生まれ、何に投資すれば5000億円以上のリターンがあるかの記述はない。むしろ特別区がせっせとコストカットに励めば住民サービスが削られるデメリットさえ多くの識者から指摘されている。
実は、都構想の具体的な成長戦略と呼べるものは2025年の大阪・関西万博、IR(カジノを含む統合型リゾート)誘致、インバウンドしかないのだ。その中でも最大の柱がカジノである。唯一、大阪に進出を決めている事業者が米MGMリゾーツ・インターナショナル。ところが同社はコロナ禍の影響で営業不振に見舞われ、従業員1万8000人の解雇を発表した。ラスベガスでの営業を再開したが、コロナ禍の収束まで厳しい営業を強いられるのは確実だろう。
今のところMGMは大阪進出を断念していないが、当初予定していた投資額よりはスケールダウンする可能性があり、投資に見合うリターンがないと経営陣が投資に見合うリターンがないと判断すれば進出断念もあり得る。
そうなれば大変だ。万博とカジノの会場予定地は大阪湾に浮かぶ埋め立て地の夢洲。カジノが来なければ万博後の夢洲はぺんぺん草が生える不良資産になるかもしれない。夢洲が“悪夢洲”にもなりかねない。
「正直、カジノが大阪に来ることは半分諦めている」とは大阪市の幹部職員の弁。成長戦略といえば聞こえはいいが、実態はこの程度のものでしかない。 (つづく)
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