受験生を持つ親にとって、大学の学費は気になるところだ。文部科学省の調べによれば、私立大学の初年度納付金(入学金と授業料とを合わせた金額) の平均額は、文系学部114万3229円、理系学部150万7121円、医歯系学部は478万9736円となっている(2015年度)。『大学ランキング 2018』(朝日新聞出版)では、私立大学の初年度納付金ランキング(2016年度)を、分野別に掲載している。最近の初年度納付金事情について、教育 ジャーナリストの小林哲夫氏が解説する。



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 国立大学は文系、理系、医歯系を問わず、初年度納付金の額はだいたいどこも同じだ。2016年度の初年度納付金の標準額は、81万7800円となっている。これに対し、私立大学は地域、大学によってその額が大きく異なる。

 初年度納付金が安い大学を一覧にすると、上位には北海道、九州、沖縄の大学が並んでいる。これらの地域の大学関係者によれば、「首都圏や関西圏に比べて地元経済はふるわず地域住民の所得は高くない。それを鑑みての学費設定という側面もある」そうだ。

 宗教系大学に注目すると、仏教系は初年度納付金が安め、キリスト教系は高め、という傾向がデータから見てとれる。

 龍谷大、武蔵野大(以上、浄土真宗本願寺派)、駒澤大(曹洞宗)は、平均をかなり下回る。  一方、キリスト教系では、たとえば、MARCHの一角である青山学院大、立教大は、他大学よりも高い。「ミッションスクールに通う学生はお金持ちだから学 費も高い」という話も耳にするが、すべてにあてはまるものではない。なお、キリスト教系でも藤女子大、北星学園大(以上、北海道)、西南学院大(福岡)、 九州ルーテル学院大(熊本)、長崎純心大(長崎)など、北海道、九州の大学はやはり安めに設定されている。

 ここ数年、初年度納付金を値上げする大学がいくつか見られる。

 グローバル化、教育の質の向上、施設の充実などの改革を進めるうえで、諸経費が必要という理由からだ。

 明治大は、2017年度に初年度納付金を改定した。たとえば法学部は前年度比8万円増の128万7800円となっている。同大学は次のように説明する。

「継 続的に諸改革を実行するためには、安定的な財政基盤の確立が必要不可欠な条件でもあります。経費節減は当然として、学費には極力依存せずに、受託事業や各 種補助金など外部資金の獲得等による自助努力をしてまいりましたが、本学のさらなる飛躍のためには学費の改定に踏み切らざるを得ないとの判断に至りまし た」(明治大のウェブサイト)

 東京経済大は2016年度入学生から授業料を5万円値上げした。その苦しい胸の内を正直に打ち明けている。

「2015 年度末での繰越収支差額は14億800万円と赤字幅が拡大する見込みです。これは、収入面においては、少人数教育を推進するため学生数を限定することによ り学費収入がこれ以上見込めず、寄付金や経常費補助金などの大幅な改善も見込めない状況で……」(東京経済大のウェブサイト)

 日本女子大では入学金を値下げして、授業料を値上げした。

「本学では2015年度大学入学者から、初年度納入金を減額します。入学金を10万円減額し20万円とし、一方、授業料を各学部とも年度あたり6万円増額いたします」(日本女子大のウェブサイト)

4年間の総額でみると、高くなる計算だ。

 初年度納付金が毎年、少しずつ高くなり、家計をじわじわ苦しめている。こうしたなか、安倍晋三政権が政策の目玉として「高等教育の無償化」を掲げた。受験生を持つ親にとって朗報である。だが、その財源はどこで確保するのか。前途多難だ。

 11月17日、国会の所信表明演説で安倍首相が「高等教育の無償化」の部分を読み飛ばしてしまったことが話題になった。議事録には残っているが、大学授業料問題について解決の困難さを暗示しているようだ。(教育ジャーナリスト・小林哲夫)』

1992年には200万人を超えた18歳人口は年々減少し、いわゆる「2018年問題」と呼ばれる大学の危機、2018年度にはついに100万人を割る時期に突入しますので、これまで通りの入学金や授業料を維持することが大学経営上困難になって来たと言えます。以前は、少子化による18歳人口の減少による 影響で、私立大学の学費値下げ競争が起こるという極論も有りましたが、今後受験料、入学金、授業料の値上げは私立大学では続くと思います。一昔前にに比べ『国公立大学と私立大学の学費の格差是正策』で、国公立大学の入学金も授業料も安くなくなっている日本の大学の現実です。

 

 

 

 

 

 

 

大学の定員割れは、大学における深刻な問題となっている。1992年には200万人を超えた18歳人口は年々減少し、いわゆる「2018年問題」と呼ばれる2018年度にはついに100万人を割る。1989年にはわずか14校であった定員割れ大学は、1999年以降一気に増加し、現在では私立大学の実に半分近くが定員割れとなっているような時代