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教育カウンセラーの独り言

今起こっている日本の教育の諸問題と受験競争の低年齢化している実態を見据えます。

農業における対策:チェルノブイリ事故後15年における効率の評価その教訓

2011年08月24日 20時56分06秒 | ニュース

農業における対策:チェルノブイリ事故後15年における効率の評価その教訓。 - 厚生労働科学研究班より出展引用

チェルノブイリ事故後の対応をまとめた報告書

デビル-カベリンG他.農業における対策:チェルノブイリ事故後15年における効率の評価。その教訓。(2001年キエフ国際会議のプロシーディング)
国連人道問題調整部、ニューヨーク(2001)118-128
翻訳責任 国際医療福祉大学 鈴木元

この資料に関する注意

チェルノブイリ事故後の対応をまとめた報告書ですが、ここに記述されている方法が、日本でも適用すべきかどうかは吟味が必要です。
ある観点から見て有効と思われる対策が別の加点から見ると新たな問題を生むこともよくあることです。
総合的な観点から実施するかどうかを判断する必要がありますので、専門家の支援を受けることが不可欠です。

3.2.3.推奨される除染技術

現在の放射線防護技術と調和を図りながら、介入(除染)を決断し、除染のためにどの技術を選択するかを決断する際には、コストと共に社会的要因を考慮すべきである。種々の除染技術に関して、適用した場合に回避される線量を評価し、その費用を計算しておく。その中には質的社会因子を含めても良いと思われるが、便益(回避累積実効線量)とデトリメント(費用、除染作業者の累積被曝線量)に関して、個々の技術毎に費用便益解析法(ICRP1977)あるいは多重寄与解析法(ICRP1989)で評価する。

除染計画の中では個々の手法に優先順位を付ける。この優先順位付けに当たっては、各々の現場の環境に応じてなされるべきである。しかし、これまで蓄積されてきた経験と調査に基づけば、長期的に以下の主要で単純な除染方法を組み合わせることが推奨される。

(1) 個人住居のに面した庭や公共建造物・学校・幼稚園の周囲、および村落内の道路端の土を上層5~10cm(放射能の深度分布により調整)を剥ぎ取る。剥ぎ取った汚染土は、個々人の敷地内や村落の中に特別に掘った穴に入れ、穴から掘り起こした清浄な土を除染した土地表面に敷き直す。この方法は、特別に放射性残土の処理のために保管場所を必要としない。
(2) 個人の果樹園は、深く掘り返すか、上層5-10cmの表層を除去する。2001年の時点において、畑は既に何度も耕されており、放射能は上層20~30cmの深さに均一に分布している。
(3) 除染した庭等は、清浄な砂や可能であれば砂利の層で覆い、残存する放射線を低減する。
(4) 屋根を洗う、あるいは葺き替える。

これらの方法は、単一の個人所有の土地や建物、および村落全体の土地や建物の除染に適用できる。後者の場合には、除染による外部被曝線量低減効果は、更に大きい。表3.4に種々の都市部の表面汚染に関する除染効率の値を示す。詳細な効率や技法、必要な道具、費用、必要な時間、放射性廃棄物の量その他に関しては、他の報告に詳しい(Roed 他。1995)。

表3.4. 様々な都市の表面除染の除染効率(線量率低減係数、単位無し)

表面技術線量率低減係数、単位無し
洗浄 10
砂洗浄 10 ~ 100
屋根 ホース洗浄、または砂洗浄 1 ~ 100
掘る 6
表層土除去 4~10
木、灌木 短く剪定、または除去 ~10
道路 掃き掃除、吸引清掃 1~ 50
道路(アスファルト) 内張 (lining:土とアスファルトとの間に砕石等を敷き詰める?) >100

(Roed ら 1995)

都市の除染により生じた放射性廃棄物は、既存の衛生要件にあった方法で廃棄されるべきである。大規模な除染の際には、将来、放射能の環境漏洩が無視できるように一時的な保管場所を隔離された場所に設置すべきである。その保管場所は、国際標準の放射能警告シンボルを表示しなければならない。

3.3. 農業対策

チェルノブイリ事故後、旧ソ連邦の最も汚染の激しかった地域と西ヨーロッパの地域で農業対策が実施された。その目的は、介入レベル以下に食品の放射性物質汚染を低減することである。大々的な農業生産システムの対策が白ロシア、ロシア、ウクライナで実施されたが、当初、西ヨーロッパでも幾つかの食品規制が実施された。事故後最初の2~3年は多くの対策が広範囲に行われた。そして、それらの対策は現在まで継続している。さらに、3カ国においては、何年もの間137Cs汚染濃度が高いままの田舎で、汚染レベルが改善されていない家族経営の牧草地に対して集中的な食品生産に対する対策が開始されている(IAC 1991, IAEA 1996a, IAEA 2001)。

西ヨーロッパでは、汚染されたかなりの地域において、高度で継続的な137Csの食品移行がみられた。これらの国では、主に改良事業を行わなかった牧草地で自由に牧草を食べた放牧動物由来の食品に対する対策が主であった。

3.3.1. 早期

1986年5月2日から5日にかけて、約50,000頭の牛、13,000頭の豚、3,300頭の羊、700頭の馬が30km圏から人間と共に避難してきた(Nadtochiy ら,2003)。30km圏には20,000頭以上の猫や犬を含む家畜が殺処分され、埋葬された。飼い葉が足りないため、また、移動先で飼育場所を確保できなかったため、多くの家畜がやがて殺処分された(Alexakhin ら1991、Pristerら1993)。事故後の急性期においては、動物の汚染レベルにより分類する事は不可能だったため、1986年5月から6月にかけてされた動物は、牛95,500頭、豚23,000頭に及んだ。

多くの死骸は埋葬されたが、一部は冷蔵庫に保管された。しかし、このことが衛生上の、そして実際的経済的難題を引き起こした。肉は直ぐさま食品として不適格と判定され、食品からの線量を抑制するため効果的な対策が旧ソ連邦その他の国々で実施された。しかし、この対策は費用がかさみ、大量の汚染廃棄物を出すこととなった。

事故後最初の何週かは、旧ソ連邦で実施された対策の主眼はミルク中の131Iを減らすこと、または、食品サイクルに汚染ミルクが入ることを阻止することであった。その方法は、ソ連邦1986年勧告に記されている。
- 家畜飼料から汚染牧草を除くため、放牧を止め屋内で非汚染飼料による飼育へ変更
- 放射線モニタリングを実施し、131I活性が対策レベル(当時は3,700Bq/L)を超すものは、はじく
- はじいたミルクは、加工品に使う(主に、濃縮ミルク、粉ミルク、チーズ、バターなど保存の利く製品へ加工)

事故後最初の2-3日は、集団農場のミルクに対する対策が実施されたが、個人経営の農場はあまり対策が実施されなかった。ミルクに対する対策は、管理者と地域当局には伝えられたものの、個人農場には伝達されなかった。このことにより、対策は限定的になり、特に田舎の村落では対策が遅れる原因となった。また、幾つかの地域では有効に機能しなかった。

事故後2~3週中に清浄な飼い葉を使った飼育が始まったが、これがうまくいけば1~2ヶ月の内に牛の137Csを食品として適格なレベルに低下させる事が可能となったはずであった。しかし、この対策はその時点では広く実施されることはなく、その理由の一部は清浄な飼い葉が春先のため不足していたことである。

1986年6月初旬には、汚染地域の放射能汚染密度地図が作成された。これにより、牧草汚染のレベルおよび汚染ミルクの生産地域を評価することが可能となった。

1986年も後半になると、植物表面の汚染は未だ高いレベルであったが、主要な農業対策は、制限的なものであった。最初の2~3ヶ月は、高度汚染土地の使用を禁じた。そして、より低いレベルの汚染土地には、継続的な生産が可能となるような勧告がなされた。もっと汚染の高い地域では、乳牛の飼育を禁じた。作物の汚染レベルを低減するために有効な方法は、飼い葉や穀類を遅く刈り取ることである。農産物の放射線管理は、食品生産の各段階、保管段階そして加工段階で実施された(IAC 1991, Alexahkin 1993)。

1986年5月から7月にかけて実施された放射線サーベイにより、白ロシア、ロシア、ウクライナで、各々凡そ130,000,17,300および57,000haの農地が経済的使用から排除された(Baryakhtar 1997)。

1986年6月から、その他の対策が農産物の137Csを減らす目的で実施された。
- 137Cs汚染レベルが555kBq/m2以上の地域での牛の禁止。前1.5か月間は清浄な飼料で飼育する。
- 外部被曝を最少にし、汚染チリの発生を避けるため、通常の穀物生産で使われるある手技を排除する。
― 汚染肥料を堆肥として使うことの制限
- 牧草の変わりにトウモロコシからサイロ飼い葉を作る
- 個人農場で生産されたミルクの消費制限
- 農産物の放射線学的モニタリングの義務化
- ミルク加工の義務化

表土を除くという除染方法は、農地には不適切であった。費用がかさむこと、土壌の肥沃さを失うこと、そして汚染土をどこかに埋没する事による環境問題などである。

1986年の8月~9月に、個々の集団農場に対して農地の汚染レベル地図と、個人所有小区画で農業を実施する際の指針を含む農産物汚染可能性に関するガイドラインが伝えられた(IAC 1991, Alexakhin 1993)。

西ヨーロッパでは、幾つかの国でローカルな水道事業者の飲料水の消費を控えるよう勧告がでた。

スウェーデンは、旧ソ連邦を除くと最も高い汚染レベルを被った。スウェーデンは131Iと137Cs活性の介入レベルを定め、輸入品と国内産品を規制した(セクション3.1)。また、その他の一連の対応がとられた。(1)もし牧場が10kBq/m2以上の131Iおよび3kBq/m2以上の放射性セシウムで汚染されていたならば、牛の放牧が禁止された。(2)新鮮な葉物野菜を消費しないよう、また、他の野菜はよく洗うよう助言を出した。(3)下水汚泥を土壌の肥沃のために使用するのを制限した。(4)深く鋤で耕すよう推奨した。(5)より高い位置で草を刈るよう推奨した。

ノルウェーでは、農地から収穫された穀物は、収穫後にモニターされ、新鮮穀物重量で600Bq/kg以上の放射性セシウムを含有するものは廃棄され、土中に鋤込みし直された。また、6月に収穫された干し草やサイロに保管した牧草は、全てモニターされ、ガイドラインを越すものは飼い葉としての使用が禁じられた。

ドイツでは、ババリア地方で幾つかのミルクが食品加工プラントに送られ、豚の餌として粉ミルクに加工される予定であったが、放射性セシウム濃度が高かったため、実行されなかった。

イギリスでは、赤ライ鳥を食する事が制限され、英国の中で汚染レベルが高かった幾つかの地方でアップランド羊の移動とが制限された。

オーストラリアでは、1986年5月の短期間、牛に新鮮な草を食べさせないよう助言が出された(Muck 2002)。

3.3.2. 後期

放射線サーベイによって、1986年末にはロシアの4行政区(ビリヤンスク、ツラ、カルガ、オレエル)、ウクライナの5行政区(キイフ、ジトミア、ロフノ、フォリン、チェルニゴフ)および白ロシアの3行政区(ゴメル、モギレフ、ブレスト)の農産物は、放射性セシウムの介入レベルを超過していることが判明した。ゴメル、モギレフ、キイフ、ジトミル行政区の最も汚染が激しかった村落では、事故後1年目の穀物とミルクの80%が介入レベルを超した(IAC 1991, IAEA 2001, Nodtochiy ら2003)。

さらに、1990年代初期にウクライナでは101,285haの農地が農業使用から撤退した。その面積の約30%は、137Cs汚染が555kBq/m2以上の地域であった。これらの村落から脱出した村民と共に、個人所有の牛も避難した。これらの避難住民によって、集団農場で非汚染食料を生産する準備や、非汚染食料を清浄地域から輸入する準備がなされた。

ロシアでは、1987年から1988年にさらなる家畜の避難が実施された。しかしウクライナに較べるとより選別した形で行われた。555kBq/m2以上の汚染地域の全ての羊は移動させられた。これは、反芻動物への放射性セシウムの移行率が高いためである。牛に関しても555kBq/m2以上の地域から6,880匹が移動させられたが、多くの家族は自分の牛を保持し続けた。

白ロシアでは、1989年に除染とその他の種々の対策にもかかわらず受容可能なレベルに線量が低下しなかった52の村落が移転の対象となった。更に、1991年に新法に従って何人かの人々が汚染地区から移転し、他の村落も移転した。こうして合計470の村落が移転した。移転に際して、家畜は可能な限り主人と共に移転した。

汚染地区で対策を実施する目的は2つある。第1は、食品の安全を保持し、国民の年間実効線量を1mSv以下に抑えるために介入レベルを守ることである。第2は、農産物への全体としての放射性物質の移行を減少させることである。一般的に、農業への対策を早く始めれば早いほど、費用対効果はより大きくなった(Prister ら 2000)。

1987年以降、農産物の高い放射性セシウム活性は家畜製品にのみ検出された。そこで、ミルクや肉の137Cs活性を低減する対策を実施することが、活発な農業のための修繕策として焦点があてられた。放射性セシウムの移行率が十分な低さであるジャガイモや根菜類は、生産され続けた。翌年には作物の放射性セシウム汚染はずっと低下し、対策が介入レベル以下に抑えるのに有効であったことが示された。1991年、3カ国で370Bq/kgを超過する汚染穀物の割合は0.1%未満であった。

もっとも困難な残された問題は、基準を満たさないミルク生産である。3か国で大規模な種々の対策が講じられたことにより(以下詳述)、放射性セシウム活性が介入レベルを超す家畜製品を急激に減らすことができた。図3.2に介入レベルを超したミルクの時間的変化が示されている。しかし、介入レベルが3カ国で異なる時期に低められたことに留意すべきであり、直接、比較することはできない。図3.3に3カ国における介入レベルの変化が示されている。

図3.2の3カ国の汚染食品の経時的変化は、大きく介入レベルの変更に依存しているが、同時に対策実施の規模にも依存している。この点は、ロシアのミルクに顕著で、1997年以降対策実施規模が減少したため、汚染ミルクの量が増加した。白ロシアとウクライナで最近、介入レベルを超す肉が減少したのは、前にモニターして基準をクリアーした家畜がされるようになったためである。ロシアでも前のモニターをしているが、肉の汚染レベルが高いのは、個人農場と集団農場の産物が混在しているからである。現在でも少数トンの肉が介入レベルを超しているが、これは怪我をした家畜をしたためである。


図3.3. 旧ソ連邦およびその後の独立国家で実施された介入レベル(TPL)の時間的経緯(Shevchukら2001)(訳者注:左図はミルク、右図は食肉。グラフからはミルク介入レベルが、 370Bq/L→約185Bq/L→110ないし100Bq/Lに徐々に変更。食肉は、3700Bq/kgから1991年に約750Bq/kgに変更、1996年から1998年にかけて500ないし100Bq/kgに変更。)

対策実施による最大の効果は1986年から1992年に達成された。1990年代にはいると予算逼迫のため農業対策は徐々に減少し、農業対策だけでなく製品生産部門での対策も不十分となった。しかし、利用できる資源を適正化することにより、137Cs対策の有効性は多くの家畜産物で受容できる汚染レベルを保つことができた(図3.2)。

3.3.3. 集約農業生産における対策

旧ソ連邦およびその後独立国となった3カ国で実施された主な対策を以下に述べる。優先順位が高い対策は、飼い葉に使われる穀類や植物への放射性セシウムの移行を低減する目的で土壌の肥沃土を改善し、化学肥料を使用することであった。3カ国でその実施度は異なった。実施すべき対策に関する勧告は、幾度も改訂され更新された(Alexakhin 1991, Prister 1998, Bogdevitch 2003)。

3.3.3.1. 土壌処理

土壌処理により放射性セシウム(および放射性ストロンチウム)の植物への移行が減る。方法は、鋤で耕すこと、種を蒔き直すこと、窒素・リン・カリ(NPK)化学肥料および石灰の使用である。最初放射性物質は多くの植物が根から栄養分を吸収する上層の土壌に分布しているが、耕すことで放射性物質が希釈される。深く耕すことと浅く耕すことの両方が徹底して行われ、また、表土を剥ぎ取り深く埋め直すことも併せて行われた。化学肥料により収穫が増加したことにより、植物中の放射性物質が希釈される効果があった。さらに、化学肥料は土壌中のCs/K比を低めることにより、植物根からの放射性セシウムの吸収を低減した(Alexakhin 1993)。

上記の全ての土壌処理を実施した場合、一般的に徹底改良と呼ばれた。チェルノブイリ降下物により汚染された牧草地の対策として最も効果的で実践的であったのは、事故後最初の2~3年の時期に土壌の肥沃化を増す徹底改良であった。通常、土壌改良された土地では、商品価値の高いマメ科や穀類の植物が栽培された。干し草用の畑と牧草地の徹底改良の有効性は、牧草の種類と土壌の性質に強く依存した。ディスキング(円盤状の農耕具で耕すこと)、土地表面に肥料や石灰を散布することなどの伝統的な表面土壌処理は、効果が劣った。酸性土壌は、石灰を加えられた。小さな湿地は排水され、深く耕し、改良され、緑地として使われた。90年代になると、土地の性状に注目が集まり、状況に応じた適切な土壌処理が効果を上げた。年月がたつに従い、既に肥料を施していた土地に追加的に肥料を投与する必要があった。そして、適切な投与頻度を決めるために細心の評価が行われた。しかしながら、実際の投与頻度は、時に予算逼迫により制限を受けた(Alexakhin 1993, Vidal ら2001)。

汚染の激しかった3カ国において追加的に化学肥料を施した面積を図3.4にしめす。徹底改良を実施した面積は、図3.5に示す。1986年から1994年の間、追加的K肥料の平均的投与量はK2Oとして60kg/haである。90年代、耕作適格地での生産性が低下した。これは、経済的状況が悪化したため、以前のような頻度で対策を実施できなくなったためである。このため、汚染された生産物の割合が増えた。ロシアのいくつかの地域では、放射線安全基準を上回るミルクと肉の量が増えた(図3.2)。例をあげれば、ノボジブコフ村(ブリアンスク行政区)のように最も汚染の高かった村落では、K肥料の使用が不十分で、1995年から1996年に農産物の137Cs活性が増加し、適切な対策が実施されていた時期(1991-1992年)に比べて50%以上上昇した。


土壌処理の効果は、土壌のタイプ、栄養分の状況とpHに影響された。また、作物の種類により影響を受けた。さらに、NPK肥料と石灰の投与頻度が明確に放射性物質の植物移行低減効果に影響した。幾つかの研究により、徹底改良、石灰と化学肥料などの対策による放射性セシウムの土壌-植物移行低減係数が求められた。低減係数は、やせた砂礫土壌で2~4、肥沃な土壌で3~6であった。これに加えて、鋤により耕すことにより土地表面の汚染が希釈されたため、外部被曝線量率が2~3分の1に低下した。

90Srの問題は137Csのそれに比べると急いで対策が講ざれなかったが、幾つかの対策が開発され、ダイシング、鋤入れ、種の蒔き直し後に土壌から植物への移行低減係数として2~4が達成された。

これらの対策にもかかわらず、汚染の激しかったブリアンスク行政区の南西に位置する村落では、1997年~2000年に20%の牧草と干し草が介入レベルを超過した。干し草の137Cs濃度は、乾燥重量で650~66,000Bq/kgであった。

3.3.3.2. 汚染土地で育てる飼い葉作物の変更

1997年~2002年に白ロシアで調査された実験データ(図3.6)に明らかなように、幾つかの植物種は、他の種より放射性セシウムの吸収が悪い。その差はかなりの大きさであり、飼い葉作物のハウチワマメやサヤエンドウやソバやクローバーなどは放射性セシウムを蓄積しやすいので、耕作対象から完全にあるいは部分的に排除された。

図3.6. 異なる作物での137Cs取り込みの比較。サヤエンドウを100とした場合の相対表示。(左からニンジン、キャベツ、トマト、ポテト、豆(haricot)、ビーツ(table beet)、キュウリ、二十日大根、サヤエンドウ)

白ロシアでは、2つの製品を生産することを目的に、汚染地域で菜種が栽培された。目的とは、食用油と動物飼料としての蛋白団子である。多くの品種の中から、137Csと90Srの移行率が2~3分の1の品種が選ばれた。菜種の栽培においては、肥料を追加(6 t/haの石灰とN90O90K180の化学肥料)することにより、放射性セシウムと放射性ストロンチウムの植物移行を約半分に低下させた。これにより蛋白団子に使われる菜種の種の汚染を減じた。菜種油の製造工程で放射性セシウムと放射性ストロンチウムは効果的に取り除かれ、最終的に汚染は無視できるほどであった。こうした菜種油の生産は有効で、経済的にも利益が上がる方法であることが証明された。そして、それは生産者である農民と生産工場の両者に利益を与えた。過去10年間に菜種の栽培面積は4倍に増え、22,000haに達した(Bogdevich ら 2002)。

3.3.3.3. 清浄飼育

汚染されていた家畜を前に適切な期間、汚染されていない飼料や牧草を与える手法(所謂、清浄飼育)は、各々の放射性物質の当該動物における生物学的半減期に従い肉やミルクの放射性物質汚染を効果的に減じた。放射性セシウムのミルクへの移行の半減期は2~3日なので、ミルク中の放射性セシウム活性は、飼料の変更により急速に変化した。一方、筋肉中の放射性セシウムの生物学的半減期はもっと長いので、肉に関しては長い期間清浄飼育が必要であった(Pristerら 1993)。

清浄飼育は、汚染放射性核種の家畜への取り込みを減ずる。チェルノブイリ事故後、清浄飼育は、旧ソ連邦および西ヨーロッパ諸国において最も重要で、かつ、最も高頻度で実施された対策であった。公的統計によれば、この手法で対処された牛の数は、ロシアで毎年5000~20,000頭、ウクライナで毎年20,000頭(政府により1996年まで支援された)であった(IAC 2001)。白ロシアをあわせた3カ国で、清浄飼育は食肉生産において一般的に実施され、これに体外計測モニタリングを組み合わせて、もし前の家畜の筋肉に介入レベル以上の放射能活性があれば農場に戻し、さらに清浄飼育を継続した。

3.3.3.4. Cs結合体の投与

ヘキサシアノ鉄酸塩(プルシアンブルー)は、大変効率のよい放射性セシウム結合体である。それは、腸管での放射性セシウムの吸収を減らすことにより、放射性セシウムのミルクや肉への移行を減らせるので、乳牛やヒツジやヤギや食肉動物に毎日食べさせる飼料に混ずることができる。それは、毒性が低く、安全に使用できる。効果が優れた製品を開発するとともに、安く国内で生産できるように、種々のヘキサシアノ鉄酸塩製剤が多くの国で開発された。家畜産物において、ヘキサシアノ鉄酸塩製剤による放射性セシウムの低減係数は最大で10にもなった(IAEA 1997)。

プルシアンブルーは、粉末として飼料に混じたり、ペレット状の飼料製造工程で混入されたり、おがくずに混ぜたりした。ロシアでは、地域でフェロシン(5% KFe[Fe(CN6)]と95% Fe4[Fe(CN6)]の混合物)が開発された。それは98%の純度の粉末として投与されたり、なめ塩(10%フェロシン)や10%フェロシン吸着おがくず(ビフェジと呼ばれた)として使用された(Ratnikovら1998)。

3カ国それぞれで毎年プルシアンブルー投与を受けた牛の頭数を図3.7にしめす。また、ヘキサシアノ鉄酸塩をふくむ徐放剤ボリが開発され、牛のこぶ胃に導入された。ボリは2~3カ月にわたりCs結合体を放出し続けた。ボリはもともとノルウェーで開発された15%ヘキサシアノ鉄酸塩・10%蜜蠟・75%重晶石の混合物を圧縮したものである(Hove & Hansen 1993)。

プルシアンブルーは1990年代初頭から家畜産物の137Cs汚染を低減する目的で使われ始めた。プルシアンブルーは、徹底改良に適した牧草地がない地域の村落において、とりわけ使い勝手がよく、有効であった。使われ始めたころ、プルシアンブルーは飼い葉からミルクや食肉への137Cs移行を1.5~6.0分の1に低減した(Hove ら 1996)。白ロシアでは、プルシアンブルーの特別濃縮剤が生産され、牛一頭当たり毎日0.5kg濃縮物の割合で配給された。平均的な低減係数としてミルクで3が達成された。ボリは白ロシアとロシアの集団農場で乳牛に投与された。

ウクライナでは、プルシアンブルーは白ロシアやロシアのように広範に使われることはなかった。そして、その使用は90年代初頭に限定されていた。これは、ウクライナには国産のプルシアンブルーがなく、西ヨーロッパから購入するには高価すぎたからである。その代わり、彼らは地域でとれる粘土質のミネラル結合体を小規模に使用した。その効果はプルシアンブルーより低かったが、安あがりであった。

3.3.4. 集団生産における対策の有効性

実際に農場で実施された個々の農業対策の有効性を表3.5にまとめた。低減係数(対策前後の放射性核種の濃度比)が表示されている。

表 3.5. 旧ソ連邦3カ国で実施されたいろいろな対策の低減係数のまとめ

対策137Cs90Sr
通常の鋤おこし(初年度) 2.5~4.0
表土を剥ぎ取り、深く鋤きこむ 8~16
石灰 1.5~3.0 1.5~2.6
化学肥料の投与 1.5~3.0 0.8~2.0
有機肥料の投与 1.5~2.0 1.2~1.5
徹底改良
初年度の適用 1.5~9.0* 1.5~3.5
追加的適用 2.0~3.0 1.5~2.0
表層の改良
初年度の適用 2.0~3.0* 2.0~2.5
追加的適用 1.5~2.0 1.5~2.0
飼い葉作物の変更 3~9
清浄飼育 2~5(期間に依存) 2~5
Cs結合体の適用 2~5 (-)
ミルクからバターへの加工 4~6 5~6
菜種から菜種油への加工 250 600
菜種から菜種油への加工 250 600

*湿地の泥炭層では、排水により15

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我が国での除染の取り組み例

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廃棄物が集まる場所での放射線管理をあらかじめ準備しておくとよいでしょう。
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森林の伐採による除染での線量率低減効果推計

森林条件

・元素組成は水と同じ
・密度は0.05g/cm3
・幅100m
・奥行き50m←これを伐採
・高さ10m

線源条件

・核種はCs-137
・降下量は1MBq/m2でそれ以外の吸着量(=フィルタとしての森林)が1MBq/m2
・線源は森林内均一分布

計算した線量

地表から高さ50-100cmの間の空気吸収線量を計算(γ線のみ考慮)。

結果

検証された結果ではありません。

考察

・1mの伐採はほとんど効果なし
・(50mのうち)10m伐採するとその汚染森林由来の線量率を4割程度に低減できる
・この設定では森林からの放射線の寄与は1割程度
・地面の汚染を1/10にすると半分の寄与が森林からとなりそう

地表の汚染による線量

地表のみの汚染時の放射線の飛跡図(この図ではベータ線も考慮)。

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地表面の汚染から受ける線量

ひまわりを用いた土壌浄化

Peter Soudek, Šárka Valenová, Zuzana Vavříková and Tomáš Vaněk. 137Cs and 90Sr uptake by sunflower cultivated under hydroponic conditions. J. Environmental Radioactivity, 88(3), 236-250 (2006)

水耕栽培によるCs-137の取り込み割合

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世界同時株安なんて怖くない

2011年08月24日 20時41分23秒 | 株式

全吉占いのブログ

納得して人生を生きて死ぬ人 ・文句を言いながらこんなはずではなかったと言って死ぬ人占い業に携わって25年。占いに関心を持ったら、前者になりたいものだ。

占いを勉強して、不安と心配がなくなればいいのだが

ますます不安と心配が大きくなったりする人がおおい。


生年月日が悪いと言って人生をあきらめてしまう人もおおい。


ちょっと、まて。


違うだろ。


新しい可能性を開くのが占いだろ。


占いではなく こんな開運手法もある。 乗馬で開運

世界同時株安なんて怖くない

テーマ:ブログ

「マスコミの本質は大衆に受ければよい」


受ける話は何かというと、極端な話で 今は 世界恐慌 世界同時株安 ということだ。


米国の低下や国債の格付け引き下

欧州ではギリシャそしてその周辺国では国債の金利が急騰


だから 世界同時株安をおそれて 慌てて保有している株を売る、株価が少しでも下がればやっぱりと納得する。


マスコミに影響される おばかな投資家達が多い。


マスコミは常に 間違っていて 大衆をミスリードする。 これだけ知っていれば金持ちになれる。



さて そろそろ 買い増しのときが やってきたようだ。

引用元://ameblo.jp/fsoftjp/

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続・8月23日 まだ2号機3号機は水蒸気爆発が起きる可能性ある、東電も知っている 小出裕章(吉田照美

2011年08月24日 20時10分23秒 | ブログ

8月23日 まだ2号機3号機は水蒸気爆発が起きる可能性ある、東電も知っている 小出裕章(吉田照美ソコダイジナトコ)

2011年8月23日

2011年8月23日(火)、昨日に引き続きまして文化放送「吉田照美のソコダイジナトコ」の週刊エンターというコーナーにて小出裕章氏のインタビューが放送されました。1週間前に取材した内容とのことです。コメント欄にてかふうさまより教えていただきました。

放送内容

・週刊エンター:ソコダイジナ衝撃レポート「原発のウソ、そしてホントの話」京都大学原子炉実験所 小出裕章 

動画

内容書き起こし
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65759532.html

この放送には続きがあります。
続き:8月23日 絶望してしまったらそん時が、最後の負けだと思います 小出裕章(吉田照美ソコダイジナトコ)


8月22日 汚い国。少なくとも50キロ離れた飯舘村までは人が戻れるレベルではありません 小出裕章(MBS)

2011年8月23日

2011年8月22日(月)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組内容

2011年8月22日【月】

新エネルギー 3 

上田崇順アナウンサーの連続企画です。前回は、太陽光発電や水力発電の現場を取材し、新エネルギーの可能性を探りました。今回は、個人では、どのようなことができるのかを取材しています。屋根に太陽光パネルを設置したお宅を訪れ、一家は、どのような生活を送っているのか?電気の使用量は変わったのか?売電で儲かるのか?儲からないのか?などを報告します。
京都大学の小出先生にはきょうも原発事故関連について聞きます。

録画

内容書き起こし
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65759478.html


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Subject: ●火星▲32日目■横山光輝の白峰365日語録

2011年08月24日 18時14分23秒 | 悩み

■火星も月と同じく人工衛星で、絶妙の間合いをとりながら
地球に隕石がぶつかるのを防いでいます。

火星の地下には、太古の神殿があります。

国連軍はすでに、1000人ほどが火星に常駐しています。

●日の移住計画も存在しています。

信じるか信じないかは、あなた次第です。

引用元 http://ameblo.jp/yokoyamatakeshi


  

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一足早く2学期 福島・相馬の15校で始業式

2011年08月24日 14時02分30秒 | 受験・学校

2011年8月23日14時11分アサヒコム

写真:始業式の朝、たくさんの荷物を持って登校する児童たち=23日午前7時45分、福島県相馬市、金子淳撮影始業式の朝、たくさんの荷物を持って登校する児童たち=23日午前7時45分、福島県相馬市、金子淳撮影

<script language="JavaScript" type="text/javascript"></script><script src="http://imp.asahi.com/bservers/AAMALL/acc_random=30518658/pageid=84705695/AAMB1/SITE=KYOUIKU/AREA=RECT2/AAMSZ=300X250/OENCJP=EUC"></script><script></script><script></script>

 『福島県の公立小中学校のトップを切り、相馬市立の15校で23日、2学期の始業式が行われた。同市では、東日本大震災の津波被害や原発事故に伴って学校が避難所になり、新年度の授業開始が4月18日と遅れた。このため、その分2学期の授業を一足早く始めた。 市立中村第一小学校では児童393人が登校。夏休みの間に、放射能への不安などから4人が転校したが、教師と父母らが学校敷地内の除染に取り組み、2人が避難先から戻ってきた。  夏休み中も屋外活動に慎重な保護者が多かったとみられ、1年生の女子児童(7)は「外であまり遊べず残念でしたが、本をたくさん読むことにして、20冊読みました」と話していた。福島県は希望する児童・生徒に線量計を配る事業を始めており、同校でもこの日、希望調査の用紙が児童に渡された。 』

まだ暑い夏休みに相馬市立の15校で2学期の始業式が行われましたが。子供達同士お互いに力を合わせて健康に気を付けて頑張って下さい。校庭で2学期から伸び伸び友達同士遊べると良いですね。夏休み中も外で友達同士遊べなかったようで、子供達もかなりストレスもたまったと思います。安心して校庭や家の外で、皆仲良く遊べる日が来ます様に心から御祈り申しあげます。荷物を一杯持ちしんどそうな顔をしている男の子の写真まだ夏休みが終わるのが早過ぎたのではないでしょうか。夏休みを切り上げないでも、週休5日制の土曜日を活用して授業時間の不足を補っても良かったと思います。

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中国の漁業監視船、尖閣周辺の日本領海に侵入

2011年08月24日 12時44分08秒 | 国際・政治

読売新聞 8月24日(水)10時56分配信 『24日午前6時16分頃、沖縄県石垣市の尖閣諸島・久場島の周辺を航行する中国の漁業監視船2隻を海上保安庁の巡視船が確認した。 2隻は同6時36分以降、約30分間にわたって日本の領海に侵入。同8時15分現在、接続水域内を南に向けて航行中という。政府は同7時13分、官邸危機管理センターに情報連絡室を設置した。 第11管区海上保安本部(那覇市)によると、中国の漁業監視船が尖閣諸島付近の領海に侵入したのは初めて。』

今後中国海軍の巡視船の増強や武装した漁業監視船の日本領海の侵犯が増えると思います。中国海軍の初空母就役前の挑発行為です。大型化する最新のヘリ搭載型漁業監視船の導入で海上保安庁の巡視船による海上警備や領海監視も危険な任務となっていることも事実です。現場の警備に当たられている海上保安官は、中国海軍の漁業監視船が近づいて来るとぞっとするし恐怖感を覚えると言われています。現場の保安官の安全と生命を守る為に海上保安庁巡視船の防弾設備の強化と高速の大型巡視船の配備も増やすべきです。海上自衛隊の護衛艦や対潜哨戒機との連携による領海と海上警備が必要と思います。

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米ジョー・バイデン副大統領は、何もしないまま「逃げ菅」を決め込む菅直人首相に恨みつらみ発言

2011年08月24日 12時11分13秒 | 国際・政治

2011年08月23日 18時48分00秒 | 政治

◆米国のジョー・バイデン副大統領が8月22日夜に来日し、23日午前、菅直人首相と首相官邸で菅直人首相で会談した。バイデン副大統領は8月17日~22日に訪中。 22日朝、四川省成都を発ち、モンゴルに立ち寄り、その帰途、来日した。
 菅直人首相は、会談を控えて、閣議前の閣僚懇談会で、「30日に内閣総辞職」を明らかにしており、間一髪のところで、「逃げ菅」の本領を発揮した。
 朝日新聞asahi.comが8月23日午前10時14分、「菅首相『30日に内閣総辞職』 閣僚懇で見通し」という見出しをつけて、以下のように配信した。
 「菅直人首相は23日午前の閣僚懇談会で『30日に内閣総辞職をすることになるだろう』と述べた。与謝野馨経済財政相が23日午前の記者会見で明らかにした。枝野幸男官房長官は23日午前の会見で「(首相の発言は)政府・民主党首脳会議で相談した日程の見通しについて話したものだ」と説明。26日に再生可能エネルギー特別措置法案が成立し、菅首相の辞任条件が整うことが内閣総辞職の前提だとの認識を示した」
 「逃げ菅」の本領とは、「三十六計逃げるが勝ち」という菅直人首相の得意技のことである。今回、菅直人首相は、米国オバマ大統領から、寸前のところで「逃げ切った」のである。オバマ大統領は、菅直人首相に対して、①普天間飛行場の辺野古への移転実行②TPPへの参加決定③米国債の債務免除文書へのサインと記者会見による世界への発信の3点を強く迫っていた。
 しかし、①は、沖縄県民の猛反対、②は、農協など農業団体の猛反対、③は、右翼団体に知られたら、銃弾を浴びせられかねないため、いずれにも、簡単には応じられない。そこで、菅直人首相は、もう1つの得意技である「のらりくらり引き伸ばし戦術」を使ってきていた。この得意技を政権延命にも応用していたのだが、うっかり「一定のメド」での退陣に口を滑らせて、「退陣3条件」(①今年度第2次補正予算②赤字国債を発行するための特例公債法案③再生可能エネルギー特別措置法案の成立を示して、これらのメドがついたのが命取りとなった。そればかりでなく、オバマ大統領から実現を迫られていた3つの要求に応えられなくなり、これが政権からの逃走を余儀なくさせたもう1つの「退陣3条件」となつた。つまり、この3条件を実現すれば、オバマ政権から喜ばれて、政権維持・延命につながったかも知れない。ただし、日本国内からの猛反発を受けて、退陣に追い込まれたこともあり得た。
◆バイデン副大統領との会談で、菅直人首相は、「オバマ大統領から招かれていながら、日本の政治の都合で9月の訪米ができなくなった」ことを詫びた。これに対して、バイデン副大統領は、言葉使いこそ丁寧ながら、かなり嫌味を言われたようだ。
 菅直人首相は会談冒頭、米国の東日本大震災に対する支援に謝意を表明。これに対しバイデン副大統領は「別に謝意を述べる必要はない。米国が同じ状況になれば、日本も同じことをしただろう」と応じたという。
 この「米国が同じ状況になれば」という言葉の裏には、「自然災害と経済災害という被害のの違いはあっても、いまは米国は経済被害により大変な状況にあるのに、日本は助けてくれないのか」という意味が含まれている響きがある。だからこそ、バイデン副大統領は、「そんな社交辞令はいらないから、もっと大事なことがあるだろう。そちらを誠実、忠実に実行して欲しかった」という恨みつらみが潜んでいるのが、はっきりと窺がえた。つまり、なぜ、①普天間飛行場の辺野古への移転実行②TPPへの参加決定③米国債の債務免除文書へのサインと記者会見による世界への発信の3点を実行してくれなかったのかという思いである。単なるリップサービスで終わるなら、日米首脳会談をしても、無意味だということだ。
 産経新聞msn産経ニュースは8月23日午後0時46分、「震災対応協力を確認 菅首相とバイデン米副大統領が会談」という見出しをつけて、以下のように配信した。
 「菅直人首相は23日午前、首相官邸で米国のバイデン副大統領と会談した。首相は会談冒頭、米国の東日本大震災に対する支援に謝意を表明。これに対しバイデン氏は「別に謝意を述べる必要はない。米国が同じ状況になれば、日本も同じことをしただろう」と応じた。両氏は大震災の復興や東京電力福島第1原発事故対応で両国が官民一体となって協力を進める考えで一致。今後も日米同盟を深化させていく方針を確認した。米副大統領の来日は平成19年2月のチェイニー氏以来。日米両政府は『9月前半』の首相公式訪米を調整していたが、菅首相の退陣が確実になったことを受け延期した。そのため米側は首相訪米の地ならしの意味合いがあったバイデン氏の訪日の目的を変え、大震災や福島第1原発事故対応にあたった駐日米国大使館員や米軍関係者の慰労を重視。日本側との公式行事は首相との会談と昼食会だけとなった。バイデン氏は23日午後、米軍が復旧活動にあたった仙台空港を訪れ、空港内でスピーチを行う。24日には都内の米軍横田基地で米軍関係者らを激励し、同日夕に帰国の途に就く」

2011年8月23日 「清話会」様のメルマガ「清話会メールニュース」におきまして、板垣の原稿【民主党代表選で、野田佳彦財務相の「大連立構想」と小沢一郎元代表の「元祖・大連立構想」が激突、「分裂から解党」への危機感高まる】が配信されました
清話会ブログ
「鳩山首相の「迷走」は米軍基地問題に国民を全員参加させ「一歩前進の迷走」だった!!
本日の「板垣英憲(いたがきえいけん)情報局」
米国CIA要員・前原誠司前外相が、米国オバマ大統領が要求している「普天間基地移転・TPP参加・米国債免除」の3つを短期実現、日米同盟強化のため民主党代表選挙に出馬宣言
◆〔特別情報①〕
 米国ジョー・バイデン副大統領が8月22日夜に来日するのを目前にして、前原誠司前外相は、大変焦っていた。表向きは、不出馬を表明していたのだけれど、米国CIA要員としては、そうもいかない。菅直人首相が、オバマ大統領との3つの約束を反古にしたまま、無責任にも「逃げ菅」を決め込み、退陣しようとしているのが明らかだったからである。
 そしてようやく、前原誠司前外相が8月23日夕、ついに民主党代表選挙に出馬宣言した。
 その最大の目的は…






板垣英憲の過去著書より連載しております↓
自・社連合が小沢一郎への逆襲をはじめた―欲で結びついた野合政権の醜怪な素顔 (ポケットブック)
価格:¥ 1,325(税込)
発売日:1994-07



もくじ

3章 社会党が"野合連合"をした裏にあった台所事情
―官房機密費の蜜の味を求めた社会党―
羽田連合政権との決別の断を下した村山富市

「政治家の力量では自民党が勝るが、個人の人格では社会党に及ばない」
 中央政界では、むかしからこういう言い方がされてきた。村山富市は、そうした社会党の人材の典型のような人物である。
 長い眉毛で好々爺然とした村山富市は、大正十三年三月三日生まれ。十一人兄弟の七番目である。大分高等小学校、東京市立商業学校、明治大学専門部政治経済学科に入り、学徒出陣で陸軍に入隊した。昭和二十一年に明治大学を卒業した。昭和二十八年、二十九歳のときヨシエ夫人と結婚した。
四王天延孝陸軍中将の名著「猶太(ユダヤ)思想及運動」 No.128


第三章 ロシヤ革命と猶太

前回からの続き

 諾代表の試みた報告演説に依つて、螢働者の反政府的運動の最も広く進展して居る所は濁逸であることが判つた。決議文の作成に当たり極端説を唱へたのはレーニン、ラデツク(ユダヤ)、ローザ・ルユクセンブルグ(ユダヤ女)及彼等一味の党友連で、彼等は總同盟罷工とか、怠業叉は武装的叛乱と云つた断然たる手段により、戦争中止のために戦ふべきことを提議した。


新刊本が増刷(4刷)となりました。全国一般書店にて好評発売中!
孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫) 孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2011-04-09

ソフトバンクを3兆円企業に育て上げた稀代の起業家・孫正義。その成功の原動力となったのが、自らの人生・経営哲学を「25文字」の漢字に集約した「孫の二乗の法則」である。これを片時も忘れないことで、孫は幾多の苦難を乗り越えてきた。では、私たちが自分の仕事や人生に活用するにはどうすればいいか。その秘訣を本書では伝授する。「孫の二乗の法則」を本格的に解説した唯一の書、待望の文庫化!(本書カバーより)
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前原の民主党代表選参戦で俄然面白くなったこの国の政局 new!!

2011年08月24日 11時40分52秒 | 国際・政治

 
 前原の突然の民主党代表選参戦で、この国の政局は俄然面白くなってきた。

 これはもちろん皮肉だ。

 そして政治が面白くなったとは言わない。

 この国の政治はしょせんくだらない。反国民的だ。

 くだらない政治の下でうごめく政局が面白くなったとい言っているのだ。

 前原の参戦によって代表選は前原の勝利で決まりだろう。

 しかしそれによっても民主党の安定政権はおぼつかない。

 前原の参戦によって、小沢が推す候補との対決選挙となれば民主党の分裂は
残ったままだ。もっと分裂する。

 だからたとえ前原が勝って民主党の結束は望めない。

 もっともそれによって小沢新党の流れが加速すれば、それはそれで
面白い。

 その一方で小沢が最後に前原を推すという情報がここにきてまことしやかに
語られる。

 つまり仙谷が小沢に頭をさげるということだ。小沢が勝ち馬に乗るということだ。

 しかし、骨肉の対立をしてきた小沢、反小沢が手打ちできるのか。

 常識的にはありえないが、民主党が政権を維持したいと考えるのならば
その「まさか」もありうる。

 自民党政権への逆戻りだけは許さないと考える連中や、政権にしがみつきたい
と考える社民党や連合、国民新党はそれを望むだろう。

 下手な対立候補を推して前原に負けるよりも、影響力を残して民主党を立て
直したいと小沢が考えればそれもありだろう。

 しかし、その場合でもこの国の政治はよくならない。 国民生活は救われない。

 政策がねじれるからだ。国民の間にもやもや感が残るからだ。

 私が望むのはこの国の「政治の先鋭化」である。

 すなわち政官財米の側に立つ政治か、一般国民の側に立つ政治かの選択を
国民にわかりやすく提示できる「政治の先鋭化」だ。

 そしてその一方に小沢が立つことだ。

 それに向かって始まる新党設立と政界再編こそ正しい政治に向かっての、
皮肉でなく本当に面白い政局なのだ。

 私が小沢一郎に今度の代表選にはかかわるな、裁判で無罪を勝ち取ること
を優先させろと繰り返し言っていることは、その時にそなえて政策力を磨け、
覚悟を決めろ、ということだ。

 前原の参戦ですべてが明らかになってくる。

 小沢もまた試されることになる。

 政局がおもしろくなってきたという理由がそこにある。

                            了

  

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国立大、包括連携へ動き活発 北海道・東海・関西18校

2011年08月24日 09時50分32秒 | 受験・学校

2011年8月20日3時2分アサヒコム

図:包括連携に取り組む国立大学包括連携に取り組む国立大学

<script language="JavaScript" type="text/javascript"></script><script src="http://imp.asahi.com/bservers/AAMALL/acc_random=19126111/pageid=53271928/AAMB1/SITE=KYOUIKU/AREA=RECT2/AAMSZ=300X250/OENCJP=EUC"></script><script></script><script></script>

『 北海道と東海、関西の計18の国立大学が、それぞれのエリアで包括連携に向けて動き出した。3エリアともベースは効率化と経営基盤強化のための事務連携だが、北海道と関西では単位の共通化など教育面でも手を結ぶ方針だ。文部科学省は「規模、内容ともに、これほど本格的な連携は初めて」としている。  東海4県では、地域内の国立全8大学(名古屋、名古屋工業、愛知教育、豊橋技術科学、岐阜、三重、静岡、浜松医科)が参加。来月27日、連携の合意書に調印する。職員研修、知財管理、資産運用、危機管理など幅広い分野で協力し、業務用コンピューターシステムの統一も検討している。  連携には、経費削減のほか各大学への交付金を一括して金融機関で運用できる利点もあり、収入増にもつながると期待する。名古屋大の浜口道成総長は「事務部門の連携を、学術・科学技術を支える共同体として発展していく第一歩にしたい」とコメントしている。  北海道では、北海道大と6単科大学(北海道教育、室蘭工業、小樽商科、帯広畜産、旭川医科、北見工業)の全国立大が事務と教育の両面で協力する。単科大は1~2年次の教養教育を担う教員が手薄なため、北大から教員の派遣を受けることなどを考えている。  関西では大阪教育、奈良教育、京都教育の3大学が手を携える。数億円をかけてテレビ会議システムを整備し、各大学の教室をつないだ遠隔授業ができるようにする。早ければ来年秋にも、共通の単位を与える双方向型の講義を実施する考えだ。付属学校同士で、共同の職員研修や研究をすることも検討する。』

各国立大学、毎の連携強化を深め、教養教育の為の教員の派遣や事務の効率化を図り、各国立大学同士の教育の内容の充実や大學運営の効率化と合理化を目指す連携時代に入ったと言えます。今後各国立大学間人事の交流や共同研究などが此れまでとは違い活発化すると思います。インターネットを通じての大学講義や大學間の単位互換制度も生まれるのでは有りませんか。少子化による18歳人口の減少も有り、各地域の特性を生かした各国立大学間の包括連携と協力が今後各地の国立大学間で増えて行く時代になったと思います。これからの新しい国立大學間の大學像と言えるのではないでしょうか。

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理数系の頭柔らかく 潟上で小中学生対象の講座  秋田

2011年08月24日 09時23分43秒 | 受験・学校

2011年8月19日1時10分アサヒコム 『小中学生を対象にした合宿の「理数探究体験セミナー」が17日までの3日間、秋田県潟上市の県総合教育センターであり、44人が参加、実験などに挑戦した。  県教委が今年度始めた理数学力向上推進事業の一環。物理の講座では、藤田静作・秋田大教育文化学部教授が「東日本大震災では様々な場所で停電が起きたけど、みんなにはどんな影響があったかな」と約10人に語りかけた。  「ストーブがつかなくて寒かった」「トイレの水が流れなくなった」……。子どもたちはあの日を思い出し、次々に答えた。  藤田教授の狙いは、身近な出来事で電気の大切さを再確認した上で、物理学と関連づけ、電気が流れる仕組みなど「裏側」に興味を持ってもらうことだ。講座の後半には応用編として、電圧と電流の比例関係を表す「オームの法則」の実験を行い、小学生もノートを広げて参加した。  算数・数学では、県教委の「わか杉思考コンテスト」に出た問題を解き、答えを導く方法が複数あることを学んだ。由利本荘市立鶴舞小学校6年の伊藤彩夏さんは「理科や算数は解けた瞬間が一番面白い。基礎を大事にしながら、頭を柔らかくして考えることの大切さも感じた」と話した。  県教委義務教育課の大塚久隆・主任指導主事は「難しい内容が解けた時の達成感は大きく、自信になる。考える力や説明できる力がつくよう応援していきたい」と語った。 』

小中学生を対象にした合宿の『理数探究体験セミナー』、教科書中心の学力中心の知識偏重学習に偏りがちな今の学校教育現状です。子供達の身近な日常生活の中から、今回の東日本大大震災の経験も生かし理科と数学の教科関連性を忘れずに子供達の目で見て、知り、聞いたことを生かした体験学習を理数科教育の面白さを実験も交えながら、子供達の持っている発想力を生かしながら問題解決能力や思考力に結びつけて行く秋田県教育委員会が今年度から始めた理数学力向上推進事業の一環の「理数探究体験セミナー」の新しい試みです。今の時代は、柔らか頭が子供から大人まで必要では有りませんか。高度情報化時代と言われるインターネット時代で、新しい情報がどんどん入り時代遅れにならないようにしなけばなりません。

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