私の職場の近辺にはジュンサイを栽培している浅い沼が数多く散在していますが、その中でも最も
近くにある1hrにも満たない小さな沼の周辺の土手の水際にはヒエ、イネ、イグサ科などの雑草など
に混じってアギナシがたくさん生えていてジュンサイ農家の嫌われものの一つになっています。
農家ではジュンサイの摘み取り作業も8月中旬には終了し、下旬から9月上旬にかけて沼周辺の草刈
り作業とか沼の中に侵入したアギナシ、タヌキモ、ヒツジグサなどの抜き取り作業が始まります。
こうした作業に取り掛かる前に、毎年沼の所有者の許可を得てこれらの植物を撮影をしたり採集さ
せてもらったりたりしていますから、除草作業に入る前に馴染みになった所有者が通知してくれます。
今年は8月31日に除草作業をするとの連絡がありましたので、昼食後の休憩時間を利用して出かけ
てジュンサイ沼から抜き取られた雑草の中からアギナシだけを20株以上を選び出して持ち帰りました。
なおこの折、この沼と村道を挟んだ水田の端に群生したオモダカも比較するために採集してきました。
このように綺麗に刈り取られ、抜き取られてもオモダカ科の植物は生命力は強靭なため復活して翌年
夏にも同様の開花が見られるはずです。
幸いにも、私の生活圏にはオモダカ科5種(オモダカ、アギナシ、ヘラオモダカ、サジオモダカ,マル
バオモダカ)の生息地がありますから、これら5種の形状、ことに花とを見るだけでほとんど間違いなく
見分けることが出来ます。
通常、開花したオモダカ科に遭遇した場合、花冠サイズの大きい(4〜6mm)のオモダカ、アギナシと、
小さな(3〜4mm)のサジオモダカ、ヘラオモダカ、マルバオモダカとは見分けられ、さらに植物の全容
(ことに、葉の形)を観察することで区別することは容易です。
オモダカ アギナシ
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マルバオモダカ
とりわけ、オモダカとアギナシとを区別するのが困難だったとした記載も間々見受けられますが、
以下の各点に留意すればそれほど難しくはないものと思います。
⓵ 輪生総状花序はアギナシでは高く花も離れて付くため葉の上に出るように見え、オモダカでは
低く花も蜜に付くため葉の中に隠れるように見えます。
ジュンサイ沼の岸に生えたアギナシ
別のジュンサイ沼に群生していたオモダカ
⓶ 葉は矢じり形をしていますが、アギナシでは葉身の狭いものが多くオモダカでは広いものが多
いという違いがありますが、両種とも変異が多いため葉身の幅だけで区別することは困難です。
アギナシの葉は多様ですが、概して葉身の細い線形のものが多い。
オモダカの葉身は幅広のものが多い。
きわめて特徴的なのは、アギナシでは頂裂片が側裂片よりやや長いのに対してオモダカでは頂裂片
の方が短いことで、葉身の幅の広狭に関わらずこの関係は変わらないことです。
頂、側裂片の先端はアギナシではオモダカより鈍とされていますが、それほどの違いが無く両種を
区別の有力な根拠とはし難いと思われます。
「顎なし」の名称の元となったアギナシのヘラ状の葉は殆ど1割程度にしか見られれませんから、
この有無だけで両種区別の根拠とはなし得ないと思います(オモダカにも稀に見られることがあります)
下の画像の様にヘラ状の葉を多数出している極めて稀な株もあります。
ヘラ状の葉が成長につれて3裂した葉に変わるということはない。
⓷ 秋には葉柄の基部に多数のムカゴ(零余子)を付けるとされますが、奇妙なことに、今年8月31日
にジュンサイ沼から抜き取った約20株以上のいずれにもムカゴの痕跡すらも見ておりません。その理由と
して、まだムカゴ形成時期に達していなかったのか、または今年の異常な暑さによりムカゴ形成が遅れた
ためなのかなど種々考えられますが、想像の域を超えていません。
刈り取りを免れたアギナシが沢山残されているのが分っていますから今月中旬以降にもう一度調べてみ
たいと考えております。(なお、ここに掲げたムカゴの画像は何れも9月中旬以降に撮影されたものです)
2012.9.14 撮影 2015.10.1 撮影
これまで、アギナシのどれほどの割合でムカゴを付けるのかという知見も持っていませんのでこれも併
せて調べておきたいと考えております。
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