2021-3-28「蕗の薹(1)」にはフキの雌雄株の開花について書きましたが、続けて開花し終えた薹の観察について書いてみます。
雌株
花茎は40〜70cmに伸びる。雌性花の筒状の花弁は褐色に変わり、受粉した子房は約2mmの紡錘形、褐色で、冠毛の付いた痩果となる。中性花も褐色に変わる。
未熟な雌性花の子房は淡緑色から褐色に変化する
雌性花の痩果
雌株中の中性花もやがて褐変する
雄株
花茎は20cmほどに止どまる。両性花の花弁は褐色に変わるが、花柱と雄しべは変色しない。子房は無く、冠毛は少ないというのが大部分であるが、
開花の済んだ雄株の両性花はそのまま褐色に枯縮してしまうのがほとんどである。
雄株の両性花は冠毛は少ない
開花の済んだ雄株の中にまだらな冠毛をつけた稔熟した痩果となるものも出てくる。
両性花と雌性花とは子房の大きさと冠毛の量とではまるで違う
上よりやや日時の経過したもの
初めは、これは偶発性の雌雄合一の珍しい個体かと疑っていたが、他の場所から採取した標本からも雌性花、雄性花の両方を持った雄株が見つかることから特異なものではあり得なかろうと考えた。
外見上からも雄株で成熟した痩果は雌株で作られたそれとほとんど違いがない
雄株に形成された痩果が雌株で形成されたそれと違わないものか否かを確かめるには発芽するか否かにあると考え発芽試験を試みている(シャーレの湿った棉花の上に並べた痩果)。
フキの花(蕗の薹)は雌雄異株で、雌株の花序の花房(この名称が適切か否かは不明)中には白い糸状の雌性小花と中性花(役割不明)とがあり、受粉した子房が稔熟して冠毛の付いた痩果となり離れ行く。雄株の花房には両性花があるが花粉を放出するだけの役目しかないと考えていた。
球形の花粉の表面には多数の棘がある
観察中、雄株の花房の小花の中に雌性花が混じっているものが見られた。
最初、おそらく奇形株と考えていたが、その後、調べてみたら同様の株が少なくないことを知った。
このことから、フキは雌性と雄性とに分かれるのにやや欠落のある植物ではないかと考えてた。
2021-05-11 追記
シャーレの湿った棉花の上においた雄株由来の稔熟した痩果が発芽したことから雌株にできた種子
と差がないとが知った。