野性種のノラニンジン(野良人参)から栽培種のニンジン(人参)が作られたとするものと、栽培種が逸出して野性化したのがノラニンジンだとする説とがありますが、それほど両者はよく似ていて区別することがなかなか難かしいからなのです。
両者を区別する相違点は幾つかありますが、最も特徴的なのは、ノラニンジンの約半数近くで白い傘形の大花序(複散形花序)の中央部に花弁の色の異なった(多くは、暗紫色)花が見られることです。
この花を花軸の元から切りとって実態顕微鏡下で花弁を切り離したのが下の画像出てす。
通常、暗紫色の花弁5個(稀に。6個)、花柱2本の出ている花盤(溝がある)、その下に淡緑色の有毛の子房、雄しべは1〜2本がが普通です(5本揃ったものも見られす)。
上がノラニンジン中央花で最も多い形ですが、この花には多彩な形があることが分かります。
取り出して横から撮影した画像を並べてみます。
花弁を上から撮影したのが下の画像です。
花軸が分岐して白、暗紫と取り混ぜた色の花を多数付けたものも少なからず見られます。
この中央花のその後を追ってみると、全部の花が結果して鳥の巣状に固まった果実塊(左)となった底部の中心に萎縮して未熟のままの状態で残っているのが見られます(中)。
この中央花があることの役割についても種々挙げられてはいますが、どれも納得ゆく説明にはなっていないようです。花粉媒介者を誘引するマーカーとなるのではという考えも、この花のドーム花序の中に潜っているアカスジカメムシなどカメムシの仲間とか蟻以外には花の周りに飛来してくる昆虫はほとんど見たことが無いため信じられません。
私はこの花は何の役割もない無駄な装飾花ではないかと考えております。
このノラニンジンを英語圏ではWild carrotまたはQueen Anne's lace(アン女王のレース)などとと呼ぶのは、この中央花を指を傷つけたアン女王の血痕に見立てたものからだそうです。