雄株と雌株とがはっきり分かれているイヌザンショウにも両性花があるとした記載は見たことがありませんが、最近たまたま雄株に実を付けるという奇妙な例に遭遇しましたので供覧します。
その前に、正常な雄花と雌花の画像を載せておきます。
雄株に開花した雄花は淡黄緑色の花弁5枚と雄蕊5本に葯があります。
雌株に開花した雌花は淡緑色の花弁5枚と円錐状に合着した花柱を持つ3子房があり
ます。これが結実すると球形の実が密に付けるようになります。
ところで、今回観察した株ですが;7月9日に雄株の開花が始まったばかりの花として撮影したのが下左の写真です。その一部を切り取って拡大したのが中央の写真ですが不鮮明ながら雄花の開花が見られました。さらに、7月17日に撮影したのが右端の写真ですが、雄花としての特徴が更に鮮明でした。
ところが、8月13日に観察した時には、花は散ってその後に小さな不揃いの実がまだらに付いているのが見られました。
植物の花には、両性花、雌雄異花(同株)、雌雄異株があり、サンショウ属などは定型的な雌雄異株ですから雄株に実が付くということは通常はあり得ないことなのです。
こうした現象は他の植物でも観察されるらしく、これを‶不完全雌雄異株″と呼んでいるとの記載もありましたので、この例も両性花というより恐らく、不完全雌雄異株としたほうが正しいのかも知れません。
今後もこの実の成熟過程を観察してゆきたいと思いますが、この株は公道端の草叢に生えたものですから何時刈り取られてしまうか分かりません。