菅義偉政権は、3日夜の参議院本会議で、新型コロナウイルス対策の実効性を高めるためとして、新たに罰則を導入する改正特措法と改正感染症法を自民、公明、立憲民主、維新の会の4党の賛成多数で可決、成立させた。13日から施行する。
一方、緊急事態宣言の前段階として「まん延防止等重点措置」を創設し、私権制限を強化、営業時間短縮の命令や、入院処置に応じない場合に行政罰の過料を科すことを決めた。
内容は、「改正特措法」については、・都道府県知事は、事業者に営業時間短縮などを命令できる。・緊急事態宣言の前段階に当たる「まん延防止等重点措置」を新設、・知事の命令を拒んだ事業者に対し、緊急事態宣言下で30万円以下、まん延措置下で20万円以下の過料を科す。
「改正感染症法」については、・入院を拒否した者に50万円以下の過料、・疫学調査拒否者に30万円以下の過料を科すというものだ。
懸念材料として、まん延防止等重点措置の新設については、・発令要件が曖昧、・国会のチェックが限定的になる。
事業者などへの営業時間短縮命令については、事業者への支援が不十分なまま、私権が制限される恐れがある。
拒否した場合に、過料を科す点については、密告などの社会分断、差別などの恐れがある。などが上げられる。
何事によらず、国民の共通の利益として、生命、安全、福祉などを確保するためには、ある程度の罰則は止むを得ないとはいえ、それが恣意的で行き過ぎてはならない。
今回についても、人事などで強権を振るっている菅首相の手によるもので危うさを感じるが、当初の案は、1年以下の懲役や、50万円以下の罰金という刑事罰を科すものとなっていた。
これに対し、野党第1党の立憲民主党が、懲役や罰金という刑事罰を止めさせ、過料という行政罰に、合わせて過料の減額をさせたことは止むを得なかったのではなかろうか。
菅内閣が、緊急を要するとして、与党の原案を強行する可能性もあり、また、立憲民主が現実路線を選んだことも、先を見据えて戦略的にはあり得ることだろう。
ただ、共産党、国民民主、社民は反対したため、野党が分断した形になり、今後、選挙を中心にした野党共闘にやや傷がついたことは否定できない。
しかし、今は、いかに新型コロナウイルス感染の早期収束のため、与野党が協力することが必要だ。
政府は、今回の措置により、過料ばかりを振りかざすのではなく、その前段として、納得できる補償を行わなければならない。併せて、さまざまな懸念の払しょくに努める必要性がある。「関連:1月28日」