正しい食事を考える会

食が乱れている中どういう食事が正しいのかをみんなで考え、それを実践する方法を考える会にしたいと思います。

「日本侵攻 アメリカの小麦戦略」日本市場開拓計画の立案―2通のマル秘報告書―2

2010-09-22 | 食事教育
「日本侵攻 アメリカの小麦戦略」日本市場開拓計画の立案―2通のマル秘報告書―2
【報告書Ⅱ】昭和30年12月2日 東京
 この報告書を、帰国まぎわの宿舎で書いている。滞在期間が55日。日本の諸官庁、農業団体はついに11の事業項目を承認した。すでに伝えた通り、農林省はこの事業が彼らの指揮下で行われるものでないことに、なかなか気づかなかった。しかし、一通の手紙が彼らにそれを悟らせた。農林省派、河野大臣の名で直接アリソン駐日アメリカ大使に手紙を出した(タモーレン農務官を無視し、われわれの頭ごなしにである)。アリソン大使は大臣への返答で、これはアメリカの金であること、その使い道を決めるのはアメリカ農務省であることをきびしく指摘した。この返事を受けてから、農林省の職員たちの態度に変化があらわれた。彼らは、これがアメリカの事業であることを悟ったようだ。交渉の責任者はタモーレン農務長官であり、我々はその指導下で活動していることも認識した。完全に協力的な態度になったというには早すぎるが、少なくとも彼らの権限には一定の限界があることを知り、前より友好的に接してくるようになった・・・・。

  よほど苦労したのだろう。バウム氏らは、日本人に対して使う用語の注意まで書き添えている。「アメリカがsupervise(監視する)」とか「direct(指図する)」などという表現は、直訳されると英語の持つ響き以上に刺激的になるようだから気をつけた方が良いと書いている。

当時の農林省内には「アメリカの宣伝の片棒をかつぐのはいやだ」という空気がかなり強かったようである。すでに述べた農林省大臣官房調査課の文書が「米国の小麦市場開拓措置」を批判したのは、ちょうどこの2通目の報告書が出た頃であった。ひょっとすると、この論者こそ、バウム氏の折衝でわたり合った農林省の当事者であったかも知れない。結局は、アリソン大使の親書を受けた河野農相の一喝で農林省内の抵抗はおさまった。アリソン大使がどんな文面で「厳しい指摘」をしたか知る由もないが、河野大臣は自分がまとめてきた第2次余剰農産物購入交渉の正式調印を2ヶ月後に控えており、その前にアメリカともめ事を起こしたくなかったのだろう。しかもこの秋、日本の稲作は空前の大豊作であったことから、アメリカの余剰食糧を受け入れる必要性も薄らいでいた。河野農相は、ほかならぬ身内の大臣官房の公文書で、痛いところを批判されて激怒したに違いない。
 いずれにしろ、農林省が態度を軟化させれば、もうバウム氏たちの交渉はもとまったも同然であった。彼は、日本側関係者と合意の出来た11の具体的事項を優先順に並べ、ワシントンの決裁を仰いでいる。(別表 第1期事業計画案)そして報告書の最後を、次のような自信に満ちた表現で締めくくっている。「この11項目からなる事業計画は検討をし尽くしたもので、バランスも取れているものと自負している。日本での市場開拓を成功させるために、どうかこのすべてを承認していただきたい。個々の事業内容は互いに補完し合い、全体の中で相乗効果を生むように配慮してある。それぞれが不可欠の歯車となって大計画を達成させるのである。但し、どうしても初年度予算としての限界を超える場合は、表に示した優先順位を参考にされたい。
〈第1期事業計画案〉
優先
順位 事   業   内   容 経  費 協力団体
1 キッチンカー(小麦食品を含む) 171,096 厚生省
2 1に必要なパンフレットなどの作成 41,750 厚生省
3 全国向け宣伝キャンペーン  371,237 農林省 (財)全国食生活改善協会
4 製パン技術者講習会     113,210農林省 (財)全国食生活改善協会
5 専任職員(日本人)の雇用      32,482 ーー
6 生活改良普及員の講習      62,349 農林省
 (小麦を使った料理法)
7 PR映画の制作・配給      92,000 農林省
8 食生活展示会の開催     23,160 農林省
9 小麦食品の改良と新製品の開発 58,164 農林省
10 保健所にPR用展示物を設置 59,508 厚生省 (財)日本食生活協会
11 学校給食の普及拡大     140,078 文部省、(財)日本学校給食会
    計        1,165,034 (4億2000万円)
注 (1)経費の単位はドル
  (2)(財)は財団法人



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