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Narashino Geography 54 「統治機構」について考える

2021-10-29 23:07:06 | 地理学

「統治機構」について考える

 

憲法の第1章は「天皇」。戦後の天皇は政治権力をもたない「象徴」になったが、「形式的な」政治的役割(衆議院の解散など)を担っている

一般に日本の統治機構といえば、日本国憲法に定められた内閣・国会・司法が抑制しあう「三権分立」ということになるでしょう。

それでは、天皇制はどのように考えるべきでしょうか。

日本国憲法の第1章は「天皇」(1条~8条)です。10月14日に岸田文雄首相は衆議院を解散しました。大島理森衆議院議長が「日本国憲法第7条により衆議院を解散する」と宣言しましたが、憲法7条には何と書かれているのでしょう。憲法7条は天皇の国事行為を定めた条項で、天皇は内閣の助言により国事行為を行うとされています。その第3号が衆議院の解散です。形式上のことですが、天皇の名の下に衆議院が解散されるということです。現在の天皇制では、天皇は政治的権能を持たないとされ「象徴」ですが、このように政治的役割を担っています。

安倍氏が目指す「復古主義政治」は、明治に作られた「封建的家父長制、男性優位」の近代天皇制に戻すこと?

安倍晋三元首相は復古主義的な政治を模索しましたが、彼の天皇制のイメージは、女性天皇が8人もいた「日本古来の」天皇制ではなく、「明治以降の」家制度(家父長制)、男性優位の絶対主義的近代天皇制でした。
さきほど今の憲法の第1章は「天皇」と言いましたが、明治時代につくられ、終戦まで生きていた「大日本帝国憲法」も第1章は「天皇」(第1条〜第17条)で

第1条大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス

第2条皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス

第3条天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス

などとなっています。女性天皇は、歴史上10代8人がいました(8人のうち同じ人物が2度天皇になったケースがあった)が、明治憲法では「皇男子孫之ヲ継承ス」と決められました。今の憲法にはさすがに「男系に限る」とは書いてありませんが、「皇室典範」に「男系に限る」旨書かれています。

古来天皇制は男系だった、と勘違いしている人も多いようですが、男系に限定されたのは明治になってから、最近の話なんですね。

安倍氏のイメージする「改憲」はこの「明治以降終戦まで生きていた」大日本帝国憲法への回帰なのかも知れません。

天皇が政治の実権を握るようになったのは、明治時代から

大まかに天皇制の歴史を眺めると、

① 聖徳太子以前のプレ天皇制(天皇不存在)の時代、中国の律令制に倣(なら)って模索した古代天皇制

② 奈良〜平安時代!天皇→貴族→武士へと政権が大転換!(中田敦彦)

③ 武家権力が台頭した中世天皇制

④    江戸幕府によって弱体化が進んだ近世天皇制

⑤ 中央集権的な国づくりに天皇を利用した近代天皇制

⑥ 日本国憲法によって象徴とされた現代天皇制

と整理できるでしょう。天皇は長く権威の象徴であり、①古代と⑤明治以降の近代だけ政治の実権を直接握っていたと言えるでしょう。

天皇制のソフトウェアは、常に権力を権威付ける立場として利用されることによってその制度を維持してきたところにあります。ですから、裕仁(ひろひと)天皇は人間宣言をし、明仁(あきひと)天皇、徳仁(なるひと)天皇は日本国憲法を守りと宣言して、国民に寄り添うことを基本にしています。

戦後の憲法は「個人を尊重」し、「封建的家(いえ)制度をなくした」はずなのに、実はなくなっていなかった、ということが、眞子さんの結婚騒動であらわになった

これは天皇制維持の基本戦略で、このリズム感で1000年以上制度を維持してきたと言えます。問題は「天皇制の相対化」で、話題になっている眞子さんと小室さんの結婚は大きな意味を持つことでしょう。日本国憲法は個人の尊重を規定して、家制度を否定しています。敗戦後の大日本帝国憲法改正(日本国憲法制定)議会の議論で最も意見が出されたのが家制度の否定(個人の尊重と結婚)についてでした。男性皇族には皇室典範によって、婚姻の自由はありません。皇室会議で認められなければ、結婚できないのですが、女性皇族には規定がありません。今回の2人の結婚騒動は、いまだに「家」などという陳腐(ちんぷ)な制度の残滓(ざんし)が残っていることを再確認させるものでした。ボクには、結婚の際に「家柄」などというものを問題にすることが理解できません。当事者がお互いを尊重することが大切だと思うからです。

「安倍一強」のもとで三権分立は有名無実化し、内閣に大きな権力が集中。官僚は人事で支配され、「忖度」ばかり。停滞、没落する日本

このブログでも書きましたが、地理のエレメントの一つが「政治」です。各国・地域の政治事情を理解することは世界を理解する基本です。日本には日本の政治状況があり、その政治によって、国民の暮らしや経済も規定されています。日本の国民主権を保障しているのは、民主的に選ばれた国会議員による立法であり、そのため国会は国権の最高機関と位置づけられています。また、「三権分立」という制度によって、権力同士を牽制させ、権力の暴走を抑制しています。しかし、現実は行政(内閣)が大きな権力を握っています。特に安倍首相の9年は「安倍一強」「アベ政治」と呼ばれた政治状況が続きました。かつては、優秀な官僚が、大臣を諌(いさ)めるような提言も行ったのですが、「政治主導」の名の下で、官僚は人事で支配され、すっかり「忖度(そんたく)」が身に付いてしまったようです。その仕掛け人は安倍首相の下で官房長官を務めた菅義偉氏でした。

10月31日は今後の日本政治のスタートライン

さてさて、10月31日は衆議院総選挙の投開票日です。どのような結果になるかはボクには予想もできませんが、今後の日本政治のスタートラインになることでしょう。(近)

 

 

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