降版時間だ!原稿を早goo!

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「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★名著復活!『天皇の影法師』。

2012年07月25日 | 新聞
【写真は本文と少し関係あります。京都・蓮華寺周辺で、山のあたりが八瀬比叡山口】

大正~昭和の新聞社の動きが分かる、猪瀬直樹さん(66=東京都副知事)の『天皇の影法師』が中公文庫で復刊した。
名著復活! である。
中央公論新社(読売新聞グループ)も、やるときはヤルなあ。

実は僕、1987年新潮文庫版【注】で読んでいたのだけど、覚えているのは「柩をかつぐ――八瀬童子の六百年」ぐらい(汗)。
だから、京都に行くたび思い出すのだけど。だははははははははは。


東京日日新聞、世紀の大誤報となった新元号「光文」事件に迫った「天皇崩御の朝に――スクープの顛末」はさておき(←いいのか、さておいて)、
同書を書き上げたのが、猪瀬氏37歳のとき。自分の37歳と比べ、ガックリしちゃう。

やっぱり、さておけないので――
「天皇崩御の~」は今読んでも色褪せない。
1926年、島根県松江の地方新聞社から物語は始まる。
X(エックス)デー当日の、東京日日新聞政治部と整理部記者(当時)の証言を積み上げ、
さらに、揺れる東日本社と親会社である大阪毎日(大毎)との激突、ネタ記者の去就までデータを丁寧に積み上げていく。
同じころ、政府、枢密院、共同通信、時事通信、電通(当時は通信社で配信業務をしていた)ではアアしてコウなっていた(←言えない)。
ところが、ある人物の「証言」が飛び出し、大誤報事件の謎はさらに深まった――。

猪瀬さんは「中公文庫版のためのあとがき」で書いている。
「純文学も批評もミステリーもノンフィクションも学術論文も兼ね備えたもの、そういう欲張りな『新製品』であった。そうでなければいけない、と思い込むのが若さだろう。(後略)」


次はぜひ、杉山隆男さんの『メディアの興亡・上下』(新潮文庫→文春文庫)を増補改訂で復刊してほしい! 読売グループ・中公さん頼むね! と思うのであった。

【注】『天皇の影法師』初版単行本は1983年に朝日新聞社から出て、その後87年に新潮文庫、さらに2000年に朝日文庫、ことし12年中公文庫に入った。


(* ̄O ̄)