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絵画指導 菅野公夫のブログ

大好きな絵とともに生きてます

ジャコメッティとともに

2012-05-21 | 読書
ジャコメッティとともにという本があります。

今はもう絶版になって久しいので、図書館に行って借りないと読めないかもしれません。
もし、再販されているなら、買いたいと思いますが。

私は持っている人から借りて、コピーをしました。

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絵や彫刻を志すなら、ぜひ読んでほしいものです。

ジャコメッティは彫刻家として有名ですが、針金みたいに細い彫刻が特徴です。

本人は、そのような特徴を持たせようとしたのではなく、大真面目で本物そっくりにつくろうとしています。ロダンはあまりにそっくりなので、実物の人間を型取りしたのではないかと疑われましたが、同じ姿勢で追究しても、ジャコメッティは絶対に疑われません。誰が見ても本物そっくりではないからです。

しかし、作品をよく観察すると、決してデフォルメしようとしてそうなったのではなく、大真面目にそっくりにつくろうとしているのです。だからある意味では、本物以上に本物のような気がするほどです。


私の感想はさておき、そのジャコメッティの姿勢を知ってほしいのです。

今まで、芸術家の手で捕まえられたのは、ほんのわずかでしかない。
自分は、この現実を捕まえたい。
そのためには、最低でも500年生きたい。そうすれば、もしかしたら少しは現実に迫れるかもしれないと言います。

日本人の哲学者矢内原が、ジャコメッティを訪ねて行き、話の流れで「ちょっとモデルをしてくれないか」と言われ、始めたらそれが一日10時間もモデルをすることになり、それをパリ滞在の期間中毎日、どのくらいだろうか期間を忘れましたが、少なくとも10日以上させられたという話でした。

ジャコメッティは休むことなく、矢内原は微動だにせず。
まるで戦いのようです。
矢内原にとって、モデルをすること自体が自分が哲学をすることでもありました。
モデルをすることで、ジャコメッティを通して、二人の関わり合いの中で、哲学した。

ジャコメッティは常に悲観的で、何度やりなおしてもうまくいかないと常に言っています。
そして、自己否定を繰り返すので、描いたものをすぐに消してしまいます。そしてなんどでもやりなおします。

一日が終わると、全て消し去って画面には何も残っていません。
絵具が乾かないからしばらく放置しようということはないのです。
描けない自分の責任だといいます。

普通に考えたら、10時間もモデルをしたのだから、どこまで進んだかな?と思いますし、あとどのくらいで仕上がりますか?という話になるでしょう。
しかし、いくら経っても仕上がるどころか、結果は何もないのです。

しかし、ジャコメッティは作品として残らなくても、かなり進んだといいます。

できれば、眠りたくない。次の朝目覚めると、夕べどこまで行けたかを忘れてしまう。
と言います。

「遠くへ行きたい」ともいいます。遠くとは、現実に近づくと言い換えればよいのでしょうか?
平たく言えば、作品が良くなると言っても良いのですが、ジャコメッティは色と形を使って、哲学しているのです。

哲学者が、言葉を使って哲学するように、芸術家は色と形を使った哲学なのだと。
それは、矢内原の感想ですが、まるでそんな風に思えたのでしょう。

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このように、言葉にしてみると、我々もただ単に絵を描くと言いますが、多かれ少なかれ哲学しているのだお思います。なぜなら、色と形を使って世界を把握しているからです。

デッサン会で、絵とは何かということが話し合われました。
それは、画家それぞれで常に抱えている問題だと思います。
それを考えないで絵を描くのは、本来は何もわかってないということです。

私は教員をしていましたが、教育とは何かと考えないでやっている人はいないと思います。
教育とは何か?それは、人格の形成だ。人間つくりだ。というコンセプトがあります。
そのための手段として美術もある。
展覧会で良い成績を取ることが教育なのではない。それも手段だ。
最も大切なのは、それらを通じてのハートつくりであり、人間的に成長することである。

そんなコンセプトを持って、取り組んできました。

何をするにも、「---とは何か?」ということは、大切なことです。

ジャコメッティの取り組みは、衝撃的です。この本に刺激を受けて絵を描いている人もたくさんいるでしょう。一度読んでみてください。
読み始めると止まらなくなりますよ。










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