Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「天山の巫女ソニン 1 黄金の燕」菅野雪虫著(講談社)

2009-01-12 | 児童書・ヤングアダルト
「天山の巫女ソニン 1 黄金の燕」菅野雪虫著(講談社)を読みました。
少しだけネタバレあります。未読の方はご注意ください。
生後まもなく、巫女候補に見こまれ天山(てんざん)につれていかれたソニン。
ソニンは十二年間の修行の後、「素質がない」と沙維(さい)の国の里に帰されます。
家族との温かい生活に戻ったのもつかのま、今度は思いがけない役割をになってお城に召されることに…。
三つの国を舞台に描かれる、落ちこぼれの巫女ソニンの物語の第一部です。
満場一致で講談社児童文学新人賞を受賞したそうです。

巫女のみが住む清らかな天山での生活から一転、貧しい生家に戻ったソニン。
あまりに違う毎日の生活やさまざまな人々に驚き学びつつ、変わっていく幼いソニンの姿は無条件に応援したくなります。
そして下界になじみ受け入れるだけではなく、天山で学んだことを生かしながら「これは正しいことか」「この人は信頼できる人か」を見極めてもいくソニン、たくましい。
でもそうやって自分の頭で生きていくソニンは、逆に周囲の大方の人間から浮いて、うとんじられることもある・・・。
世の中の厳しい面も作品ではしっかりと描かれています。

「家族と離された子ども、十数年かけたことが無駄になった人間などそうめずらしくもないのだとも知ったのでした。自分のような境遇などたいして酷い人生でもないのだと。」

外界と切り離された天山と下界の物語というと小野不由美さんの「十二国記」を連想したり、三国に分かれた半島というと昔の朝鮮半島を思い出したり(主人公の名前も韓国っぽい?)、燕の姿に変えられた王子たちというと民話の「白鳥に変えられた王子たち」を思ったり・・・と、ネタ元はきっといろいろあると思うのですが、それらをひとまとめに生かしてオリジナルな物語を作っていることはすごいと思います。

イウォル王子とソニンとのその後、江南(カンナム)の国の型破りなクワン王子とのかかわりなど、第二巻を読むのが今から楽しみです。

そしてこの本の特筆すべき点は表紙の絵がとてもいいこと!
水墨画をペンでのびのびと書いたような。背表紙の手書きの銀文字も素敵。
絵は画家のアーサさん(「本作り空」に所属?)だそうなのですが、ネットで検索しても、どういう来歴の方なのかわからず。
どなたかご存知の方があったらぜひ教えてください。