Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ひとつ、村上さんでやってみるか」村上春樹著(朝日新聞社)

2006-12-22 | 村上春樹
「ひとつ、村上さんでやってみるか」村上春樹著(朝日新聞社)を読みました。
今春限定で3ヶ月間開かれた「村上朝日堂ホームページ」に寄せられた読者からのメールに村上さんが答えた応答490通が収録されています。
実は私の質問も収録されていて、この本は永久保存版♪
村上さんの著作にちょっとでもかかわれるなんてうれしいなー。
巻末に「ボストン便り」も収録されており、すでに刊行されたフィッツジェラルドの『グレード・ギャツビー』(11月)の話やチャンドラー『ロング・グッドバイ』(来春)の新訳の話も収められてます。
読者からのメールは全裸家事主婦、恋愛の法則、女の子の条件、健康の秘訣、物欲について、腹が立つことへの処理法、最近作『アフターダーク』『東京奇譚集』への質問などもりだくさん。
私が面白かったのは「どんな風に死にたいですか?」という質問に「みんなが泣いているところに「なんちゃって」といいながらむくっと起き上がりたい。でもこれは死にまねですね」
「上野動物園のツチブタのよしこ」の話に「それにしても動物の名前ってどうやってつけるんですかね。パンダとかならみんなから応募するんでしょうが、ツチブタなんかだと「よしこにでもしとくかや、おらの妹と同じだども」という感じで決まってしまう気がします」
「バンド名のはなし」のメールに「もしぼくなら「くまそ」という名前をつけたいです。英語で書くと「QMA/SAW」です。かっこいいですね」
どれも村上さんの人柄がでていて思わず笑ってしまう回答でした。
そのほかにも「恋愛において男性が口を割ってはいけない」とか「自分のいないところでされる自分の噂話はできるだけ避ける」とかうなずいてしまう話もたくさん。
読み応えたっぷりの一冊でした。



「見仏記2」いとうせいこう/みうらじゅん著(角川書店)

2006-12-21 | エッセイ・実用書・その他
「見仏記2」いとうせいこう/みうらじゅん著(角川書店)を読みました。
今回の旅は滋賀、京都、四国、東京、鎌倉、北越、佐渡。文庫では新宿篇も特別収録されています。
私の実家は鎌倉に近いので鎌倉篇が面白かったです。
覚園寺(かくおんじ)へんぴな場所だけど行って見たいなあ。
目黒の五百羅漢寺も気になるお寺でした。
あと四国のおへんろグッズでもりあがるふたりがなんだかかわいかったです。

「ハリー・ポッターと謎のプリンス 上巻」J・K・ローリング著(松岡佑子訳)静山社

2006-12-20 | 児童書・ヤングアダルト
「ハリー・ポッターと謎のプリンス 上巻」J・K・ローリング著(松岡佑子訳)静山社を読みました。
第五巻でヴォルデモートが復活。
マグルの世界でも夏なのに国中に冷たい霧が立ち込め不審な事故が続いていました。そんな中、ダーズリーの家にダンブルドアがやって来ます。
ダンブルドアの右手の異変はなぜ?
16歳のハリーに、ダンブルドアの個人教授が始まります。

久しぶりのハリーポッターだったので懐かしい仲間に出会ったような気持ちで読みました。上級生になった3人には新しい授業や恋、さまざまなことが待ち受けています。
今回はヴォルデモートの生い立ち、過去が徐々にあきらかに。
本人の資質もおおいにあるとはいえ、ヴォルデモートもなかなかに辛くヘヴィーな過去を背負ってきてるんだなあと実感。
謎のプリンスはたぶん・・・、まあまだ下巻を読んでいないのでなんともいえませんが。
ところでドラコの負った仕事とはなんなのでしょう?
最終的な目標はハリー、そしてダンブルドアを倒すことだと思うのですが、まだそこまでの力はドラコにないと思うし・・・う~ん下巻を読むのが待ち遠しい!


「隠された恋 若き賢治の修羅と愛」牧野立雄著(れんが書房新社)

2006-12-13 | エッセイ・実用書・その他
「隠された恋 若き賢治の修羅と愛」牧野立雄著(れんが書房新社)を読みました。
賢治がトシの日本女子大時代の後輩遠藤智恵子さん(美人!)に求婚したという証言を検証します。そもそもその話を聞いたのは智恵子の義理の妹さんから。
その後記憶があいまいになってはいるものの、智恵子さんご本人に会い、トシの見舞いに行った際に賢治に送ってもらったという証言を得ます。
賢治の求婚に病床のトシが心を砕いていた可能性を示し、トシと賢治の関係に新たな見方を提示しています。
賢治とトシが宗教的な絆で結ばれていたこと、そしてトシを大切に思う気持ちから、賢治がトシの後輩に惹かれることはあったかもしれないなあと思いました。
手紙などの物証が残っておらず、推測にしか過ぎないことが残念!

「見仏記」いとうせいこう/みうらじゅん著(角川書店)

2006-12-13 | エッセイ・実用書・その他
「見仏記」いとうせいこう/みうらじゅん著(角川書店)を読みました。
小学生時代から、詳細なスクラップブックを作ってしまうほど、仏像に魅せられ自らの希望で仏教中学にも進んだみうらさん。
仏友・いとうせいこうさんと一緒に奈良、京都、岩手と仏像に会う旅に出かけます。
寝転がって仏像を見上げたり、ぎりぎりまで下を向いて歩き、ここだというところでパッと目をあげて一気に立ち並ぶ仏像を見たり、 円形に並ぶ仏像のまわりをぐるぐるまわって「仏像メリーゴーランド!」とハイになったり、みうらさんの仏を愛する気持ち、仏を見ることへの情熱には驚かされました。
いとうさんは仏像をみつつさまざまな思索に頭をめぐらせます。
東北の人の中央政権への反発、仏像の観光化の歴史についてなどなど。

仏についての記載ももちろん面白いのですが、ふたりの会話が深く、そちらも思わずひきこまれてしまいます。
「ベンチャーズみたいだよね、仏像は。何度も来日してくれるとさ、日本人は喜ぶじゃん。ガイジンがこの国を好きになってくれたって思って。でも、日本に住んでるらしいぜってとこまでくると、こんな国に住んでるなんてダサイって思うんだよね。向こうはやっと受け入れて愛してくれたって思っててもさ、その時点でもう日本人は内心馬鹿にしてるの。そう思いながら、でもうれしいような気もして受け入れるっていうような。まあ最低の国だよ。」
「みうらさんは記憶しておかないと悔しいって思う人でしょ。俺はわざと記憶を捨てるタイプでさ、一見二人はちぐはぐに見える。
でもね、死んだら自分の記憶はなーんにも残らないし、生きてたって他人には全部伝えられないって、つまりあがいてるんだよ。自分を残したいっていう業と執着は同じようにものすごく強くてさ。」

見仏記2には関東の仏も登場。そちらもこれから読破予定!


「日本にある世界の名画入門」赤瀬川原平著(光文社)

2006-12-13 | エッセイ・実用書・その他
「日本にある世界の名画入門」赤瀬川原平著(光文社)を読みました。
ドガ、モディリアーニからピカソ、ミロ、クレー、マグリットまで、日本で見られる世界の名画15作を赤瀬川さんが独特の言葉で表現する鑑賞案内。
シャガールは家庭で揚げる天麩羅?スーティンは汚いけれどうまい餃子屋?
なんだそりゃ、という風変わりな表現、でも絵と文章をつきあわせてみると確かに・・・と思う不思議な説得力。面白いです。
ピサロの絵は描かれていないけれど確かに犬の気配を感じる、とかマルケの絵の釣り人は何を話しているか、など、ひとつの絵からたくさんの物語を感じさせる赤瀬川さんの批評は一品。
年明けは自宅から電車で行けるブリジストン美術館に足を運んでみようかなー。



「ハルキ・ムラカミと言葉の音楽」ジェイ・ルービン著(畔柳和代訳)新潮社

2006-12-11 | 村上春樹
「ハルキ・ムラカミと言葉の音楽」ジェイ・ルービン著(畔柳和代訳)新潮社を読みました。
『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などの英語翻訳者として名高いルービンさんによる村上春樹論です。
日本版は英語オリジナル版に加えて新たに「アフターダーク」「東京寄譚集」論が含まれています。
村上さんのジャズ喫茶経営時代から作家デビューしてからの生活の変化、作品の変遷、翻訳の仕事についてなど丁寧に追っていてとてもためになる一冊。
ルービンさんが冒頭で「私はムラカミのファンです」と公言しているとおり作品論にも村上さんへの愛(そして奥様の陽子さんへの賛辞)にあふれています。
読んでいて初めて知ったのが素人時代に猫の愛好家の雑誌に掲載されたことがあるという事実。その記事、読んでみたいなー。
レイモンド・カーヴァーの来日に向けて村上さんの自宅にカーヴァー用の特注ベッドまで用意していたのに亡くなられてしまったというくだりには悲しくなりました。
それから読売文学賞を受賞したときの大江健三郎さんとのやりとりが素敵でした。



「鑑賞のための西洋美術史入門」視覚デザイン研究所編

2006-12-06 | エッセイ・実用書・その他
「鑑賞のための西洋美術史入門」視覚デザイン研究所編を読みました。
西洋美術史を、多くの図版とカラーイラストでわかりやすく解説された本。
分からづらい専門用語、○○派という意味など具体的に説明されていて面白く読めました。
古典だ、装飾だ、写実だ、色だ、形だ・・・と歴史は常に先人に学び、先人に反発しつつできあがっているものだということが実感できました。 それにしても現代美術の広がりはすごい。もう何がアートなんだかわからない。。。

「名画に教わる名画の見かた」視覚デザイン研究所編

2006-12-05 | エッセイ・実用書・その他
「名画に教わる名画の見かた」視覚デザイン研究所編を読みました。
絵の中に描かれた絵「画中画」をとりあげた美術解説書。
西洋絵画を中世から現代まで順を追ってイラストも交えてわかりやすく解説されています。
たとえば、「オマージュとしての絵画」の章では、ゴッホやモネなど印象派の巨匠たちの作品に描かれた「画中画」の日本の浮世絵に注目させ、「ジャポニズム」を軸に解説されています。
「引用される絵画」の章では、さまざまに描かれた「モナ・リザ」像が登場します。カラー図版が豊富でどの章からでも楽しめる一冊です。
一般の美術解説書からすると、ポイントが絞られている分上級者向き。



「センチメンタルダイエット」高橋秀実著(アスペクト)

2006-12-03 | エッセイ・実用書・その他
「センチメンタルダイエット」高橋秀実著(アスペクト)を読みました。
高橋さんの奥さんはこの10年で30キロも増量。現在158cm、80kg。
やせることを決意する奥さん。でも、運動は嫌い、朝めざめたらやせてた、っていうのがいい、という妻に困りはてる高橋さん。
「ダイエットとはなんぞや?どうすればやせるのか?」を探りに聖書をひもとき、洋服の号数の謎をつきとめに大学教授に会い、キロカロリーの計算に頭を悩ませ、ダイエット体験者の話に聞き入る。脱力して笑えるノンフィクションです。
この本を男性が読んだら「なんだこの奥さん勝手なことばかり言って!」と言いそうですが、私は女性なので「そうそう、女性の本音はこうだよね~」とうなずくことしかり。
体重をはかるのにいつも服をきて乗って、服の重さを多めに差し引いている奥さんの姿、まるで自分のことのようでした・・・。
体験談の最後に会った妙子さんの話が面白かった。
「ケーキはガマン」じゃなくて「ケーキは食べなくていいや」の発想。
ダイエットの雑誌や誰かから命令される形じゃなくて、自分でまあいらないや、と思う、または口に出すことで気持ちを軽くする。この発想転換が面白いなーと思いました。
それにしてもずけずけ言ってても最後は奥さんのお肉にふかふかうずもれる高橋さん、かわいらしい姿だなあ・・・。