「時のかさなり」ナンシー・ヒューストン著(横川晶子訳)新潮クレスト・ブックスを読みました。
2004年のブッシュ政権下のカリフォルニア、豊かな家庭で甘やかされながら育つ少年ソル。
1982年、レバノン戦争ただ中のハイファに移り住み、アラブ人の美少女との初恋に苦悩する少年ランダル。
1962年、トロントで厳格な祖父母に育てられており、自由奔放で輝くばかりの魅力に溢れる母に憧れる多感な少女・セイディ。
1944~45年、ナチス統制下のミュンヘンで、歌を愛し、実の兄亡きあと一家に引き取られた新しい兄と運命の出会いを果たすクリスティーナ。
四世代にわたる6歳の子どもの目線で語られる、ある一族の六十年。
絡まりあう過去を解きほぐしたとき明かされたものは。
フランスでフェミナ賞を受賞している長編小説です。
最初の語り手はいまどきのこども、googleをこよなく愛するソル。
母親テスは「子どもに暴力をふるってはいけない」「子どもが嫌いなものを強要してはいけない」「子どもに暴力的な映画やテレビを見せてはいけない」などソルの安全を一番に考え、いつもさきまわりしてトラブルが起きないようにする母親。
でも隠れてインターネットで暴力的、扇情的な画像を見ているソル。
この第一章では曾祖母エラ、祖母セイディ、父親ランダル、とすべての世代が一同に会します。
エラのあざの名前「リュート」、エラの歌に歌詞がない理由、母セイディにはあざがないと息子ランダルが語る場面、レーベンスボルン、姉グレタの持つ人形。
さまざまなキーワードが章を進み時間がさかのぼるにつれ、次第にあきらかになっていきます。
自分なりによいと思うやり方でがんばって子どもを育てる母親、
でも子どもは思うようには育たなく、むしろ「そうなって欲しくない方向」に育ってしまう。
たとえば、あざを予防的に早めにとろうとしたけれど、術後の予後が悪くて前よりもっとひどくなったソルの傷跡。
たとえば、ナチスの悪行を自分の人生をかけて研究してきたセイディの息子ランダルが、アメリカ軍礼賛になってしまったこと。
子育てまっただなかの私にとっては、人ごとには思えず、正直読んでいてつらかったです。
親子は反発しあうもので、本当に子どもに影響を及ぼせるのは隔世(祖父母)との人間関係なのでしょうか?
それからこの作品では名前も重要なキーワードです。
それぞれの子どもたちの名前の意味。
最終章では自分で自分に名前をつけたふたりも。
そして一族と同じくらい重要な人物・ヤネク。
「ぼくは、いつだってきみといっしょにいる・・・」
一族にひきつがれるアザはまるでヤネクの想いのよう。
第三章でさらっと登場するヤネクのその後を思うと、本当に胸が痛みます。
全部読み終えてから、もう一度最初から読み直すと、きっと感じるものがぜんぜん違うと思います。
一族の歴史をさかのぼって書くという設定がパズルのような読み解きになって、面白い本でした。
2004年のブッシュ政権下のカリフォルニア、豊かな家庭で甘やかされながら育つ少年ソル。
1982年、レバノン戦争ただ中のハイファに移り住み、アラブ人の美少女との初恋に苦悩する少年ランダル。
1962年、トロントで厳格な祖父母に育てられており、自由奔放で輝くばかりの魅力に溢れる母に憧れる多感な少女・セイディ。
1944~45年、ナチス統制下のミュンヘンで、歌を愛し、実の兄亡きあと一家に引き取られた新しい兄と運命の出会いを果たすクリスティーナ。
四世代にわたる6歳の子どもの目線で語られる、ある一族の六十年。
絡まりあう過去を解きほぐしたとき明かされたものは。
フランスでフェミナ賞を受賞している長編小説です。
最初の語り手はいまどきのこども、googleをこよなく愛するソル。
母親テスは「子どもに暴力をふるってはいけない」「子どもが嫌いなものを強要してはいけない」「子どもに暴力的な映画やテレビを見せてはいけない」などソルの安全を一番に考え、いつもさきまわりしてトラブルが起きないようにする母親。
でも隠れてインターネットで暴力的、扇情的な画像を見ているソル。
この第一章では曾祖母エラ、祖母セイディ、父親ランダル、とすべての世代が一同に会します。
エラのあざの名前「リュート」、エラの歌に歌詞がない理由、母セイディにはあざがないと息子ランダルが語る場面、レーベンスボルン、姉グレタの持つ人形。
さまざまなキーワードが章を進み時間がさかのぼるにつれ、次第にあきらかになっていきます。
自分なりによいと思うやり方でがんばって子どもを育てる母親、
でも子どもは思うようには育たなく、むしろ「そうなって欲しくない方向」に育ってしまう。
たとえば、あざを予防的に早めにとろうとしたけれど、術後の予後が悪くて前よりもっとひどくなったソルの傷跡。
たとえば、ナチスの悪行を自分の人生をかけて研究してきたセイディの息子ランダルが、アメリカ軍礼賛になってしまったこと。
子育てまっただなかの私にとっては、人ごとには思えず、正直読んでいてつらかったです。
親子は反発しあうもので、本当に子どもに影響を及ぼせるのは隔世(祖父母)との人間関係なのでしょうか?
それからこの作品では名前も重要なキーワードです。
それぞれの子どもたちの名前の意味。
最終章では自分で自分に名前をつけたふたりも。
そして一族と同じくらい重要な人物・ヤネク。
「ぼくは、いつだってきみといっしょにいる・・・」
一族にひきつがれるアザはまるでヤネクの想いのよう。
第三章でさらっと登場するヤネクのその後を思うと、本当に胸が痛みます。
全部読み終えてから、もう一度最初から読み直すと、きっと感じるものがぜんぜん違うと思います。
一族の歴史をさかのぼって書くという設定がパズルのような読み解きになって、面白い本でした。