Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「コケの謎 ゲッチョ先生、コケを食う」盛口満著(どうぶつ社)

2009-02-28 | エッセイ・実用書・その他
「コケの謎 ゲッチョ先生、コケを食う」盛口満著(どうぶつ社)を読みました。
コケ病にかかり、街や森の風景がすっかり違って見えるようになってしまったゲッチョ先生の、初期症状から慢性化までの物語。

ゲッチョ先生がまずコケに惹かれたのは、コケ屋(コケにはまった人)に聞いた、その「まずさ」。

「「コケはね、標本を入れておく紙包みのほうが虫に食われても、コケ自体は虫に食われないんです。植物標本には、普通、防虫剤が欠かせないでしょう。でも、コケの標本には防虫剤なんて必要ないんです。」
「えーっ」と驚く。それほど「まずい」のか。」

実際にコケを食べたゲッチョ先生、どんな味がしたのか?はぜひ読んでみてご確認ください。私にはちょっとチャレンジできないかも・・・。

コケは水中で育つモと地上で育つ植物の間にある、生き物で言えば両生類のような存在。
コケには匂いがある。
コケを見る人は、目には見えない「湿気」が見える。
沖縄独特のアーバン・モス(都市部に生えるコケ)の生態。
東京の裏庭にも、南極にも生えているギンゴケ。
ゼニゴケの受精と繁殖。

ゲッチョ先生のコケの師であるキムラさんの言葉が味わい深いです。
「コケの名前がわかるかどうかは、どうでもいいことです。
コケを見ていて、何でこんな所に生えているの?という発見がおもしろいんです。」
でもそれは深いコケの知識に裏打ちされて初めてわかる「おもしろさ」でもありますね。

難しい専門用語はできるだけ少なく、読みやすい工夫がされていて、門外漢の私にも楽しく読むことができました。
ゲッチョ先生が一般人→コケが気になる→コケがかわいく、あるいはかっこよく思える
まで、徐々にコケ病の症状が進む様子が面白いです。






「童話物語(下)大きなお話の終わり」向山貴彦著(幻冬社)

2009-02-27 | 児童書・ヤングアダルト
「童話物語(下)大きなお話の終わり」向山貴彦著(幻冬社)を読みました。
妖精フィツとの突然の別れから1年、14歳になった少女ペチカは大都市パーパスで暮らしていました。
花屋の夫婦の世話になり初めて幸せを手にしたに見えたペチカでしたが、世界の最後を告げる「妖精の日」はすぐそこまでやって来ていました。
以下、ネタバレありますので、未読の方はご注意くださいね。

下巻の始まりは水上都市、全体が時計のような形になっているアルテミファ。
この物語はストーリーだけでなく、数々の街の面白さが魅力です。
そして登場するのは煙突掃除夫として働いているルージャン。ペチカを追い、見失ったままこの都市で働いていました。そして彼は高い時計塔の上でフィツに出会います。
なぜフィツがペチカから離れここにいるのか?は、のちほど明かされるのですが、刑務所あがりのゴンドルに追われて、ルージャンとフィツはこの街を出ることに。

ペチカをいじめた悔悟の念に常にかられながら大都市パーパスを目指すルージャン。
「取り返しのつかないことをしてしまった。
どんなに泣いたって、もうあの日のパンを拾うことはできない。
あの時のペチカの目が脳裏に焼きついて離れない。
どうしても自分を許せなかった。どんなに忘れようとしても、あの目が許してはくれなかった。」

ほかのいじめっこたちと一緒になってペチカを「悪ふざけ」「冗談」でいじめぬいた過去。実際にひとりで生きていくようになって、幼いペチカがひとりで生きなければならなかった苦しみがようやく実感できたルージャン。
自分の犯した罪の重さが、やり直したい過去が、ルージャンを内側から切り裂いていきます。

いじめられた過去をのりこえていくことはもちろん大変なこと。
そしていじめていた自分、その罪を抱えていく心の傷みもまた大変なこと。

一方塔の街パーパスで花屋のオルレア、その夫で警察官のハーティーの優しさに触れ、暮らしをつないでいたペチカ。
しかし守頭は執拗にペチカを追い、ペチカの大事な母親の写真を奪っていきました。
この街でペチカは馬車で助けてくれた老婆に再会し、地図を受け取ります。
地図にある「忘れ物預かり所」を目指し、母の写真を探しに世界の果てに向かうペチカ。

その地図にあった古い文字。意味は「旅の途中」。
「アンティアーロ・アンティラーゼ」
新しく旅立つ子どもに向けてはなむけに贈ったりする言葉だそうです。
その言葉をお守りがわりに西に向かうペチカは、途中、機関車のりの女性ヤヤに助けられながら、西のはじの町にたどりつきます。

死後の国のような草原を抜け出し、忘れ物預かり所の番人ミレアに会うペチカ。
そこでペチカは自分が物の声を聞けることに気づきます。
「帰るべきところ」を目指し、ドアを開けたペチカ。
そこは故郷トリニティーの教会でした。

いちばん帰りたくなかった場所。でもペチカは一年前と街が違って見えることに気づきます。それはペチカ自身がさまざまな街を見て成長した証でもありました。
そこでのペチカとフィツ、そしてルージャンとの再会。

「昨日も助けてもらったし、ルージャンが前とは変わったのも分かるけど、でもやっぱりそれくらいじゃ許せない。フィツはルージャンのこと、信じてるみたいだけど、私はどうしても信じられない。」
ペチカが長いことかけて負った傷は、簡単に消えるものではありません。

翌朝町に出たペチカは、目が紫色になった村人たちに襲われそうになります。
それは壊れたはずだった炎水晶の影響。
ペチカはオルレア、ハーティ、老婆を救うためパーパスへ向かいます。二度とペチカを裏切りたくないと、裸足のまま密林を同行するルージャン。
失った信頼を取り戻すためには、そのチャンスを一度たりとも逃してはいけないという覚悟、ひしひしと伝わります。

たどりついたパーパスは火の海。そして空を骨の羽で飛ぶ奇妙な生き物の姿が。
それは悪の傀儡となり変わり果てたヴォーの姿でした。
天界の塔の上に連れ去られるペチカ。そこで見た巨大な炎水晶。

「炎水晶は人間を悪く変えるのではなかった。
ただ、人間の中にある悪い部分を引き出してくるのである。
いちばん恐ろしいのは、目を紫にした人たちが狂っているのではなく、普段もああいう気持ちを心の中に隠して生きているということだった。」

炎水晶に極限まで近づいてその影響を受けはじめるペチカとルージャン。
噴出す過去の強い憎しみ。
この作品では人間の、世の中の悪い面が強く激しく描かれています。パーパス崩壊の場面なんて、長く暗く痛く、読んでいてつらすぎました・・・。
対照的に、あたたかく優しい記憶たちは劇的ではなく、ひっそりと描かれています。でも逆にそれが私の中で印象に残るのです。
そしてそれは辛いときにふたりを支えたものでもあります。
ペチカ、ルージャンが恨み・憎しみに自分の心をのっとらせまいとする、葛藤と苦しみ。

「強くなりたい」
「もっと優しくなりたい」

ペチカから放たれる白い光、ついに屈服する炎水晶。
そして訪れた金色の雨、「妖精の日」。

フィツがかけた大きな虹、本当に胸がいっぱいになりました・・・。

フィツの言葉。
「変われるってことはすばらしいことなんだ。
変われるってことは、いつだって可能性があるってことなんだ。
変われるってことは、絶対にあきらめるなってことなんだ!」

他人には優しくするほうがもちろんいい。
けれど、故意に傷つけられた、誰かを傷つけてしまった、
その行為が消せない以上、あとはどう乗り越えるか、つぐなうか以外に道はない。
人は変われる。必ず変われる。

このメッセージが強く心に残りました。

「天山の巫女ソニン4 夢の白鷺」菅野雪虫著(講談社)

2009-02-26 | 児童書・ヤングアダルト
「天山の巫女ソニン4 夢の白鷺」菅野雪虫著(講談社)を読みました。
江南(かんなむ)の国を大嵐が襲い、人々の暮らしは大きな打撃を受けました。
沙維(さい)のイウォル王子は災害の援助のために、そして巨山(こざん)のイェラ王女は密かな企みを胸に、相次いで江南に向かいます。
江南のクワン王子を交えた三人は初めて一堂に会し、ある駆け引きをします。
一方、ソニンはクワン王子の忠実な家臣セオの存在に、なぜか言いようのない胸騒ぎを覚えていました。

巻が進んでも相変わらず面白さのレベルが落ちないすばらしいソニンシリーズ。
今巻ではそれぞれの国の次代を担う王子・王女たちが江南で一堂に会します。
舞台は江南ですが、四巻では私の大好きなクールビューティー・イェラ王女の活躍がたっぷりでうれしい!
自分の野心を隠すことを学び、人に好感を持たれるための優美さを身につけたイェラ。不器用にほめるソニンをイェラは一蹴。
 「どうしてそんなにおきれいになられたのですか?」
 「必要だったからだ」

自分をかなり高いレベルで自制し、周囲への印象を演出するすべをすでに見つけている彼女。そんな彼女がいつか恋におちたらどうなるのか?気になります。
次の巻で描かれたらいいなあ。
でも第四巻になってもソニンにもまったくそういう描写はないから、この先も恋愛関係は描かれないのでしょうか・・・。

今回は三国それぞれの強みと弱み、三国のバランスを崩すための長期的な目でみた政治的なかけひきが繰り広げられます。
今回のキーは「米」。
表紙の棚田の絵も、とても美しいです。

イェラ王女がソニンとともに江南の棚田を見て言った一言が印象的。
「巨山の建物は、みな天を目指す。我々はいつか、天にもいけると信じている。
だが、これを作った者たちは、自分たちが天地をどうこうしようなどとは思っていまい。なのに、この階段は、わたしの住む城より空に近いような気がする。」

ミナ王妃のバスルームで、イェラ王女とソニンがともに湯につかる場面も好きです。イェラ王女はソニンの前では自分を「つくる」ことができないのがほっとするところでもあります。

巨山王がイェラにたずねる場面。
「おまえはあの出来損ないの巫女にかぶれている、何にそれほど惹かれているのだ。まさか、純粋な心だなどというのではないだろうな?」
「違います」

イェラがソニンに惹かれるのは、無邪気さでも無垢なこどものような心でもない。
この世で起きるあらゆる出来事を目にし、かつそのことを観察し、推理する、考え続ける。自分の目で見て自分の頭で考えようとする、その健やかなまっすぐさ。

交渉を終え、帰国の途に着くイェラ王女。
「どれだけ力があれば守ることができるのだろう。
最後に残った一頭の獣を、水底に消えてゆく星を、奪われてゆく誇りと魂を・・・」

王女である自分の力をふるってもできないこと、でもその消えてゆくものへの愛惜の念を持ち続けられるイェラ王女、その治世が今から楽しみです。





「童話物語(上)大きなお話の始まり」向山貴彦著(幻冬社)

2009-02-24 | 児童書・ヤングアダルト
「童話物語(上)大きなお話の始まり」向山(むこうやま)貴彦著(幻冬社)を読みました。
世界は滅びるべきなのか?
その恐るべき問いの答えを得るために、光の妖精フィツは地上へとやってきました。
最初に出会ったひとりの人間を9日間監察して判断することがフィツの使命。
しかし、フィツがたまたま出会ったのは極めて性格の悪い少女ペチカでした。
単行本には未収録の設定資料「クローシャ大百科事典」が文庫化にあたり追加されています。
挿絵は宮山香里(かおり)さん。地図や独特の風物がやわらかい印象の絵で描かれています。厳しい作品の世界の中で、ほっと一息つかせてくれるページです。
ネタバレありますので未読の方はご注意ください。

ペチカの暮らす世界クローシャは、時間も貨幣も距離も、その単位すべてが私たちの世界とは異なるもの。
人々は「妖精の日」がくると金色の雨がふり、悪人はすべて滅びると信じています。

ペチカは貧しく小さな田舎町トリニティーに住む13歳の少女。
6歳のときに母親と死に別れ、それ以来孤児として教会の残酷な守頭に虐待を受け、周囲の子どもたちにいじめられてきました。
自分より弱いもの(子猫や、妖精フィツ)に怒りをぶつけるペチカ。
「あっち行け!」「死んじゃえ!」「私のものをとるな!」
ペチカが今までこういう言葉や仕打ちを受け、自分の心も体も傷つき損なわれてきたからなのだと思うと、本当に胸が痛みます。
大人たちも揃ってペチカをいじめるばかりで誰も助けてあげない・・・本当に可哀想。

「妖精は呪われたもの」と思い込んでいる住人がペチカとフィツがともにいるところを見つけ、家まで燃やされ、ペチカはその身を追われることに。
やがて盲目の老婆の馬車(正しくはロバ車)に助けられ、学問の都ランゼスへ。
そこで火の妖精ヴォーに出会います。
ヴォーはフィツと違って人間界が長い妖精。人間の虚栄心や猜疑心を利用し、面白半分に人間を翻弄します。
妖精も人間と同じで、いい面、悪い面どちらもあるんですね。

さらにペチカは老婆の馬車で西へ。
何も言わない老婆だけれど、温かい寝床をしつらえてくれて、スープを作ってくれて・・・少しずつではありますがペチカの気持ちは落ち着いてきます。
この老婆との「いつもと同じ」のやりとりは、ペチカが村で孤独な暮らしをしていたときの単調な辛い生活とはまったく違うもの。少しずつペチカの心がつくろわれつつあるのを読者である私たちも感じます。

しかし守頭は執拗にペチカを追っていました。
ペチカは老婆の馬車を逃げ出し、赤い森アウクライアの森へ逃げ込みます。
そして9日間が過ぎ、フィツとの別れが訪れます。

使われていない小屋を見つけ、自分で赤豆を摘んでだんごをつくり、天然の温泉で湯浴みするペチカ。残酷な人間社会と対照的に、この自然の中での暮らしはとても穏やかな理想郷のように描かれています。自然の秩序を乱すのはいつでも人間ばかりなり?
妖精の掟どおりフィツのことを忘れていくペチカ。今までのこともこれからのことも記憶があいまいなペチカは不安になり、一度町に出てみる決意をします。
北をめざしたペチカがたどりついたのは水路がはりめぐらされた観光都市アロロタフ。

ここの水門でペチカはヴォーと、彼が監察している人間イルワルドの図った罠に落ちてしまいます。人間たちを滅ぼす炎水晶のいけにえにしようとペチカを襲うイルワルド。逃れようとするペチカ。そしてフィツとの思わぬ再会。
決壊する水門。

濁流に呑み込まれたフィツの行方は??・・・のまま下巻につづく。



「石の思い出」A・E・フェルスマン著(堀秀道訳)草思社

2009-02-24 | エッセイ・実用書・その他
「石の思い出」A・E・フェルスマン著(堀秀道訳)草思社を読みました。
著者は20世紀ロシア(ソ連)の高名な鉱物学者。
彼が少年期からの石への情熱やロシア各地に鉱物資源調査に赴いた体験談を19の短文でつづった鉱物エッセイです。

冒頭の写真の孔雀石の小箱、伝説のダイヤモンド「シャー」など、うっとりとため息が出ます。ロシア、コラ半島のユージアル石からオルスクの碧玉まで、美しい文章で数々の石がつづられます。 

そして詩的な文章に加え、化学者ならではの独特な言い回しがあって面白いです。

たとえばこんな表現。
「オレンジやレモンの樹は結晶中の原子の配列のように生前と植えられている。」

あるいは、畑に蒔く二種類の肥料(燐灰石とマンガン)を元素番号で呼び(15番と25番)、そのふたつと結びつきやすい金属を「友達」と呼ぶ。
なんだか元素たちがワイワイ遊んでいるような想像がふくらみます。
小川洋子さんの「博士の愛した数式」に登場する博士をちょっと連想しました。

そして雪花石膏(アラバスター)の壷を描いたこの文章。
「ほのかな月光のような光は石を通して石の魂にまで染み渡っていくかに感じられた。」

「石の魂」!

これが感じられる、著者のすばらしさ。
石からよみとる地球の記憶、自然の法則に対する深い敬意と愛情が感じられます。

本の中では著者は「これまでに、私のことをドライだとか人間味が薄いという人々にしばしば出会ってきた。石が私を、希望を、夢までも支配していた。」と語っています。
もちろん著者は人間に興味がないのではなく、恩師や尊敬すべき化学者の名前をあげています。
でも個人的には、物言わぬひそやかな石の声を聞ける著者のような人は、なまなましい人間関係には「うとい」くらいでちょうどいいのではないかなあと思います。
「ドライ」という他人の方が、想像力が足りないような気もしますが。

そんな著者が語る、天青石(てんせいせき・淡い空色の石で、清く透明な空の色を持っている)を採りに行ったときの話。
とても繊細で美しい文章です。

「夕暮れがせまり、左岸の広大な地平線が紅く染まりだしたとき、僕たちにもよくやく幸運がほほえみはじめた。小さな晶洞の中に、空色の美しい結晶がいくつか、青い目のように光っていた。
ボルガ川の春の宵、この魅力を知らないものがいるだろうか。
夕焼けの最後の輝きが消え、家々に灯りがともりはじめる。大地の鼓動が聞こえるかと思うほど、静かになる。どこかで、曳船の煙突の火が単調な音をたてており、ときたま、客船とすれ違う筏舟の神経質そうな汽笛が響き渡る。家畜の群れが水のみ場へ下りてくる。そしてふたたび、静かに、静かになる。」

そして単に「美しい」ばかりではない、鉱石発見の苦労も。

「シーザーの名言「着いた、見た、勝った」で表されるほど、簡単に、やすやすと、とどこおりなく進むわけではない。その背後には驚くほど沢山の闘いがかくされていることが普通である。
それは、自分自身との闘い、たとえば自分の予想に個人的誤算が出たとき、また他人の不信やねたみとの闘いなどである。
「だれが発見したのですか」
よく聞かれる質問だが、この答えが一致することは少ない。発見は大勢の努力で登りつめた長い階段の最後の一段にすぎない。」

著者いわく、日本人が古木を愛するがごとく、ロシア人は石を愛するのだそうです。
以前に読んだロシアの民話「石の花」を思い出しました。

http://blog.goo.ne.jp/straighttravel/s/%C0%D0%A4%CE%B2%D6


「ふくろう女の美容室」テス・ギャラガー著(橋本博美訳)新潮社

2009-02-23 | 外国の作家
「ふくろう女の美容室」テス・ギャラガー著(橋本博美訳)新潮クレスト・ブックスを読みました。
「美容室(サロン)と酒場(サルーン)、どちらも人がふらりと入ってきては、別の姿になって出てゆく場所」。
美容室に踏みこんできた男とそれを迎える女の胸さわぎを描く表題作。
亡き夫レイモンド・カーヴァーの名短篇「大聖堂」と対をなす、盲目の男とある夫婦の一夜を描いた「キャンプファイヤーに降る雨」。
夫がひそかに隠していた浮気相手からの手紙を燃やしてしまう妻。その妻に、夫がかけたひとことの重み、「祈る女」。
人生の機微とその不思議を描きだす日本オリジナルの短篇集です。
父母をめぐるエッセイ二篇付き。

まず表紙の紫のグラデーションの美しい森の絵からひきこまれます。
イラストは「よしだけいこ」さんらしいのですが、どんな方なのでしょう?

著者は詩人・作家で、故レイモンド・カーヴァのパートナーでもありました。
ユーモラスな文章あり、鋭い人間洞察あり、しみわたる美しい情景ありと、さまざまな要素を含んだ短編集です。


この本で印象的だった作品は「石の箱」。
体質的なことから子どもを授かれないとわかった夫婦、アーレンとエリーダ。
彼らはシングルマザーになったエリーダの妹ドリーから、なかば強引に子どもエルミを押し付けられます。
もちろん育てるうちに深い愛情がわいてくるのですが、再婚したドリーは突然エルミを取り戻す、と実力行使に出ます。
「子供服やおもちゃを荷造りして送れ」と命令してくるドリーに石の詰まった箱を送るエリーダ。
そして結局姉妹は和解できぬまま時は流れ、エリーダが危篤の際にきたドリーの面会を断るアーレン。

「ドリーを玄関から閉め出した瞬間、人はいつでも叶うときに仲直りすべきだと、理屈で望んでいたはずの建前から一気に引き離された。それは確かに叶ったかもしれない。しかし彼を引き留める何かがあって、彼はその何かに従わずにはいられなかったのだ。」

自分が似たような状況になったときに自分の理想とするもの(建前)どおりに心が(体が)動くか、というのはまったくべつの問題なのだなあ・・・と実感しました。


「生きものたち」

美容師エルナはひも男ユージーンとすぱっと別れられず、娘にも甘甘。

「ことグレッチェンのためとなると、けじめなくずるずる境界線を超えてしまうエルナをシェリーは知っていた。そしてこれからも一生、自分の力の限界など顧みず娘のためならエンヤコラとやっていくのだろう、この人は。まったく救いようがない。エルナのこういうところが嫌なのだ、とシェリーは思った。
が同時に、そういう彼女を哀れとも思い、また偉いとも思う。少なくとも、救いようのなさというのは、危険を顧みず深みにはまるというこだ。この友人は、他の知り合いたちのような小賢しさや要領の良さとは何から何まで無縁のところで生きている。」

悪いほう、悪いほうへ向かっていく友人であっても、決して「友情」からは逃げ出さないシェリー。女友達ってこうかもね・・・。


「来る者と去る者」

夫ナイアルの生前の仕事をめぐる訴訟に巻き込まれる未亡人エミリー。
カーヴァーの作品をめぐって活動していた著者自身の立場も想像させます。
夫の墓碑銘として、彼女が心に決めている詩の話が印象的でした。

「君や来し 我や行きけん おもほえず」

彫る予定なのは上の句だけ。
(ちなみに下の句は「夢かうつつか 寝てか覚めてか」と続くそうです。)
「まるで墓の下で夫と自分の会話が続いているような」という発想が素敵です。

「彼の不倫を笑って思い浮かべられたのは、たぶんこの死というもののなせる技なのだろう。世間の妻たちもみなそうなのだろうか。
自分の夫が、たとえ本気でないにしろ、ふとした出来心で道を踏み外すようなことがあるかもしれないと思いつつ、内緒の浮気なら大目に見ようというような心の準備をしてるのか。そして、私自身そういう赦しのへそくりみたいなものを持っていたと、エミリーは気づいた。」

「彼が亡くなったとき、この世で二人がはぐくんできた愛は終わってしまったと思っていたけれど、それは間違いだった。むしろ、思いがけない意識が拓けた。彼女が知っていることも、知らないことも、とにかく夫が経験したであろうすべてのことを受け止めたとき、計り知れぬ、迸るような勢いで見えてきたのだ、自分がどれほど深く彼を愛していたか、今もなお愛しているか、そしてこれからもずっと愛し続けていくだろうということが。」

死んでもなお、のラブメッセージ、ロマンチック。
私もこんな風になりたい理想の夫婦像です。


園芸に関してのテスのお母さんへのインタビューも楽しかったです。
81歳のお母さん、素朴な言葉ながら素敵なセリフの数々。

「ずっと家にいたって、自分で変えない限り、何も変わらないだろ。
だけで、庭に出れば、毎日変化が見える。そこが好きなの。わたしなしで変わるってこと。」
「(庭とは)他のいろんな神聖なものと同じことだよ。人の思惑で汚されてないってことさ」



「ライオンボーイⅡ 奇跡の翼」ジズー・コーダー著(枝廣淳子訳)PHP研究所

2009-02-23 | 児童書・ヤングアダルト
「ライオンボーイⅡ 奇跡の翼」ジズー・コーダー著(枝廣淳子訳)PHP研究所を読みました。
オリエント急行でボリス王に助けられたチャーリーはベニスへ。
そこは海に沈み、傲慢な総督が幅を利かせている街。
味方だと思っていた人物の裏切り、パリで合流した巨大ライオンの隠された過去、アレルゲニーとは、両親を懸命に助けつづけた猫・セルゲイの秘密、そして両親とサーカス船の思わぬ関係。さらに舞台はベニスからアフリカへ向かいます。
ネタバレありますので、未読の方はご注意ください。

「ライオンボーイ」三部作の第二巻です。
次々と場面展開していった第一巻とは異なり、今回はじっくり一都市ベニスに主な話は集中。
ボリス王の邸宅に落ち着いたチャーリーとライオンたち。
ところが人目をさけるという名目で、なかば監禁生活をおくるはめに。
エドワードがライオンを総督にプレゼントする外出のときが逃げるチャンスだとチャーリーたちは計画を練ります。

一方チャーリーの両親たちは薬物とセミナーを受けコーポラシー社によってマインド・コントロールされようとしていました。
彼らがささやくのは「勤勉・努力・家族への愛情・快適さ・子どもへ託す夢」。
一見よさそうなうたい文句です。
・・・が、それは結果として、コーポラシー社にお金を落とすことが大事なだけ。
そして得るのは自分と似たものだけを囲い込む閉じた暮らし。
ニセモノからできたカッコいい暮らし。

「社交クラブではビールを飲ませてポテトチップスを食べさせたがり、治療棟では、健康に気をつけなさいとあれこれ指示しているのだが、この矛盾に気がつく人は誰もいないようだった。どうしてこんな矛盾があるのかというと、みんな自分がつかったものについて自分で支払うことになっているからだ。」

入れ替わり立ち代り同じことをささやかれ薬物を投与され、負けそうになるふたり。常に消費欲を煽る現実社会を象徴しているようです。

ほかにも古代生物を禁じられたDNA操作によって作り出す話、難民船、周囲を武装し水を求めるだけの人を上陸させない島など、現代社会の矛盾とひずみが物語のあちらこちらに登場します。

やっとのことで脱出したアネバとマグダレン。
そしてベニスを抜け出したチャーリー。
追うラフィ、そしてマッコーモ。
すべての人物たちがモロッコのエッサウィーラにたどりつきます。
ここでももちろんひと悶着あるのですが、ライオンたちが無事ふるさとにたどりつけてよかった・・・。
そしてもちろんチャーリーが成長したたくましい姿で両親たちに再会できてよかった!

第三巻の舞台はガーナへ?つづく!



「テンペスト(上)若夏の巻」池上永一著(角川書店)

2009-02-21 | 日本の作家
「テンペスト(上)若夏(うりずん)の巻」池上永一著(角川書店)を読みました。
時は、19世紀、幕末時代の琉球王朝。龍たちが荒れ狂う嵐(テンペスト)の晩に、難産の末、母の命と引き換えに女児は誕生しました。
男児が欲しかった父は娘に名前もつけず、娘は自分で自身に真鶴(まづる)と名前をつけました。
父は親戚の子・嗣勇(しゆう)を養子にしますが、彼は厳しい科試(こうし)の勉強、父の仕置きに耐え切れず逃げ出します。兄の代わりとして男(宦官)として生きる運命を背負わされた真鶴は「孫寧温(そん・ねいおん)」と名乗ることになります。
13歳の寧温と、神童のほまれ高い15歳の喜舎場朝薫(きしゃばちょうくん)は供に科試を突破し、王宮入りします。
男の政争、女の嫉妬。寧温には苦難の数々が降りかかります。
すさまじい霊力を持つ王族神、聞得大君(きこえおおきみ)の策略。
虎視眈々と寧温をつけねらう、紫禁城の好色宦官・徐丁垓(じょていがい)の鋭い毒牙。
寧温は尚育王(しょういくおう)のしもべとして難問を次々と解決し、出世の階段を駆け上がるかに思われたのですが……。

とっても面白かったです!あまりの面白さに一気に読んでしまいました。
ネタバレありますので、未読の方はご注意ください。

中国での科挙にあたり、それよりもっと難しい、琉球王国独特の「科試(こうし)」という、役人を決める制度ははじめて知りました。
「王宮に入れば一生安泰の官僚天国、入れなければ一生を棒に振る受験地獄」。

龍神に見守られて生まれた真鶴。
彼女は際立つ美しさ、百合のような香り、そして類まれな頭脳の持ち主。
名門・真和志塾を受験し朝薫という友を得ますが、カンニングのあらぬ疑いをかけられ試験に落ち、三代の王に仕えた元三司官(さんしかん)・麻真譲(ましんじょう)先生が教える破天塾に通うように。
ここで出会う中年男・多嘉良(たから)がとってもいい人。のんべえなんですが、情に厚く優しくて、いつも寧温のことを温かく見守っていてくれて・・・。彼が出てくるだけで本当にほっとします。

初試を突破し、科試を受けた真鶴の元に父が禁書(実は真鶴が宣教師から借りていたオランダの本)を持っていた罪で捕らえられた知らせが入ります。
獄中の父から明かされる秘密。それは孫家が、実は第一尚氏王朝の末裔だという事実でした。庭の木の下に一族の正統性を示す初代聞得大君・馬天(ばてん)ノロの勾玉の首飾りがあることを聞かされる真鶴。父は娘をかばい、そのまま死罪となってしまいます。

寧温(真鶴)は、「檄文を書いた」と科試を落ちかけますが、王のとりなしで合格、史上最年少で王宮に上がったうえに、評定所筆者主取(ぬしどり)という特に高い職に任命されます。
宦官という身の上もあり、役所中の男たちの嫌がらせを受け、孤立無援となる寧温。
そんな寧温を友人であり同僚の朝薫、そして花当(はなあたい=美少年の女形)となった兄・嗣勇だけが支えます。

しかし寧温をもっとも忌み嫌っている表十五人衆の馬親方が寧温につけた呼び名は「王宮の朽ちない花」。
役人たちの心にある、前例破りの寧温への嫌悪と同時に、世俗に染まらないことに惹かれる矛盾した感情がうかがわれます。

この時代、琉球王国は難しい立場にありました。
冊封(さっほう)国である清国と、薩摩藩からの二重支配。
冊封(さくほう)とは、中国皇帝との名目的な君臣関係のことで、中国を中心としたアジアの外交秩序を形成したものです。
でも実際には琉球国が危機に陥ったときに明国は救援をよこさず、琉球国は日本の薩摩藩からも支配(多額の借金も)を受けていました。
琉球にある御仮屋(うかりや・薩摩侍の常駐所、大使館のようなもの)で薩摩藩の浅倉雅博に出会った真鶴。
女を殺したはずの自分の中から芽生えてきた抑えられない想い。理念の宦官・寧温と、初恋にとまどう少女・真鶴との間で、引き裂かれる思い。
この場面はういういしくて、せつなくて、読んでいてどきどきしました。
物語の要所要所に琉歌が入るのもとても趣があっていいです。

冊封使からの難癖。英国の難破船への対応。
寧温は数々の難題を見事に乗り越えていきます。

さらに寧温は王宮内の財政改革に着手し、金の流れを探るために王の密命を受け、女性のみが住む御内原(うーちばら)に入り込みます。
ここの女たちの陰険な戦いがとってもこわい!
王妃と、聞得大君の側との対立。
聞得大君(きこえおおきみ)とは王族神のことで、王の女兄弟がなるものです。
青い目をした彼女は何でも見通す目を持ち、かつ非情で残酷。
次の王を指名する権利をもつため、誰も彼女に手出しができません。
彼女に女であることを知られ、兄を人質にとられた寧温は彼女に屈服しかけますが、あるたくらみ(というか、聞得大君のむごい所業がたたった)によって彼女を王宮から追い出すことに成功します。

さらに、王宮内の阿片にまつわる裏組織を暴くため糾明奉行(特命捜査官のようなもので、王に匹敵する権限を持つ)に就任した寧温はある男に出会うことになります。
それは冊封使団の鼻つまみもの、紫禁城の好色宦官・徐丁垓(じょていがい)。
この男がこの物語の中で一番のインパクトでした。
妖怪蛇男。いやらしくて気持ち悪い、憎たらしいのひとこと。
裏表紙の長野剛さんの絵もまさにその風貌をとらえていてさすがです。

女であり尚家の血筋であることを徐に握られた寧温。
いったんは王宮の職を辞しますが、尚育王が崩御し、その後を継いだ尚泰王が6歳なのを案じ、再び王宮に戻ります。
徐に陵辱され、彼のたくらみで雅博からも朝薫からも引き離されてしまう寧温。かわいそうでかわいそうで本当に心が痛みました・・・。
徐を道連れに命を絶つことを選んだ寧温でしたが、運命のはからいで生き延びることに。でも殺人罪として起訴され罪人として八重山に流されることになります。

寧温は本島に戻れるのか、そして寧温は雅博と(あるいは朝薫と)結ばれるのでしょうか。琉球王国の行方。下巻も早く読みた~い!



「ライオンボーイ 消えた両親の謎」ジズー・コーダー著(枝廣淳子)PHP研究所

2009-02-18 | 児童書・ヤングアダルト
「ライオンボーイ 消えた両親の謎」ジズー・コーダー著(枝廣淳子(えだひろじゅんこ))PHP研究所を読みました。
三部作の第一作目。
舞台は石油の尽きた近未来のロンドン。地球は「帝国」の支配を受けていました。車に乗れるのは特権階級の人々だけ。
主人公チャーリーは、ネコ語が話せる男の子。両親はどちらも科学者で、母親はイギリス人、父親はガーナ人です。チャーリーはふたりが誘拐されたと近所のネコに聞かされます。これには近所の不良少年ラフィが関わっているらしい。
チャーリーはカバンに両親が発明したある重要なメモをひそませ、両親を探し始めます。それを執拗に追うラフィ。川を進むサーカス団の船キルケ号に乗り込んだチャーリーは、そこでライオンたちに出あいます。ライオンはアフリカの平原に戻りたがっていました。

原作者は、シングルマザーのルイ―ザ・ヤングとその娘イザベルのふたりのペンネームだそうです。イザベルも物語の主人公と同じく、イギリス人の母ルイーザとガーナ人の父親の子どもだそう。そしてジズーとは、イザベルが飼っているトカゲの名前だそうです。
この物語は、ルイーザがイザベルに語り聞かせるために考えたものだそう。

巨大なサーカス船、両親が連れ去られた潜水艦、オリエンタル急行、と子どもが(大人も)喜ぶ乗り物が満載。
天野喜孝さんの絵がまたすばらしい。まざまざとした船の赤色にドキっとします。
両親や、サーカスの団員たちに教わったことを生かして、頭をフル回転させて生き延びる道を探すチャーリー、そしてアフリカの平原を目指すライオンたち、がんばれ!

ラフィや、両親を捕らえる男たちがまぬけすぎたり、あっさりオリエンタル急行に乗り込めたりするあたりにご都合主義を感じるものの・・・そこらへんには目をつぶっても、早く先が読みたい!ととてもわくわくさせてくれるファンタジーです。

「大人が主導権を握ると、すべてを無難に片付けようとしてしまう」
僕がライオンを助けるんだ!と訴えるチャーリーを受け入れるのみならず、チャーリーにその後を任せようとするボリス王、なんだかすごい人物です・・・。
第二巻が楽しみです。

スピルバーグのドリーム・ワークスでの映画化も決定しているそうです。
以下のHPの「ニュース」→「ライオン・ミュージック発売中」をクリックするとカライオピの視聴ができますよ。

http://www.php.co.jp/lionboy/index.html

「中国行きのスロウ・ボートRMX」古川日出男著(ダ・ヴィンチブックス)

2009-02-17 | 村上春樹
「中国行きのスロウ・ボートRMX(リミックス)」古川日出男著(ダ・ヴィンチブックス)を読みました。
村上春樹さん初期の短編集「中国行きのスロウ・ボート」を、著者がトリビュートした作品です。
小学校4年生の冬のある日、突如ベッドの中で死という限定の啓示を受け「僕」。「夢日記」をつけるためやがてベッドから出なくなり登校拒否児となります。
転校した先は東京拒否児を集めた秩父の山奥の小学校。そこで出会った初めてのガールフレンド。
「僕」は生まれ育った東京からの脱出計画を練り、3度にわたり実行をめざしますが、結果はいずれも失敗に。20代後半を迎え、ひとりぼっちのクリスマス・イブを過ごす「僕」は、導かれるように「ゆりかもめ」に乗り込みます。

村上春樹さんの作品では主人公が人生の途上で出会った3人の中国人のエピソードが物語のモチーフになっていますが、本作では少年が大人になるまでに「失った」3人のガールフレンドが登場します。

挑み続け、負け続ける主人公の生き方を「クロニクル」と名づけたり、それこそ「ねじまき鳥クロニクル」で主人公が井戸の壁を抜けて行った先の暗いホテルを連想させる部屋が登場したり、友人のペンネームがハートフィールドだったりなど、言葉遣いやモチーフにも村上春樹さんの作品への愛情があちこちに読み取れます。
個人的にはふたりめのガールフレンドのおっぱいの話が変わっていて面白かった。こういう不思議な着想、村上さんの作品にもありそう。

単純に作品として面白いし、CDなどと違って文学作品でトリビュートする、という試みも面白いと思うのですが、う~ん・・・やはり当たり前といえば当たり前ですが、村上さんみたいな作品を読みたいなあと思って読むと、違う・・・。
ほかにもそれぞれ別の作家で「ダンス・ダンス・ダンス」「国境の南、太陽の西」「回転木馬のデッドヒート」のトリビュート作品があるらしいのですが、現時点では読むかどうかは未定です。