Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ぼくは貝の夢をみる」盛口満著(アリス館)

2009-01-25 | エッセイ・実用書・その他
「ぼくは貝の夢をみる」盛口満(もりぐち みつる)著(アリス館)を読みました。
千葉県舘山市に育ち、子どもの頃から貝ひろいが大好きな著者。
夜、夢に見るのは色とりどりの貝を拾う自分の姿。
成長するうちに「いつまでも貝拾いや虫とりに夢中な自分は幼いのではないか?」
「普通でありたい・・・」と悩み過ごした学生時代。
そして就職し、やがて気づいた「普通」より「自分」であることの大切さ。
丁寧な貝のイラストが素敵なエッセイです。

個人的に私の実家が海のある町なので、著者が貝を拾い集める姿に特に親近感がわきました。私も子供の時、からすがいやふじつぼを拾って大事にお菓子の箱にいれていたなあ。
いろいろな貝の知識、エピソードを知ることができ興味深い本です。

しかし、それ以上に著者の生き方に親近感。
「貝が大好きだ!」と堂々と生きてきたわけではない著者。
小学校も高学年になると貝拾いや虫取りをしているのは自分だけ。
中学に入り、理科部も気にはなったが「そこに入ったら普通の人とかけはなれてしまう!」と焦って、運動オンチなのにバレー部へ。
高校時代は「このままだと女の子にもてなさそうだ」と、音痴で不器用なのにギターを買って一曲もひけずに終わり。
大学は理学部に入ったものの、植物生態しか扱っていない大学であることを知らず、いそしんだのは森の研究。

この「自分が好きなこと」と、「「それが好きな自分」は人にどう見られるか」の葛藤。
私の昔も思い出して、ものすごく共感しました。
「変」「おたく」グループには入れられたくないという気持ち。
こういうグループ格差みたいな意識って嫌ですよね・・・。
でも正直、私も高校時代はそういうこと、思ってました。

そして著者が教師になってから気づいたこと。
「だれも普通の人なんかいないんだ。
だから、だれもがどうしたら自分になれるかと悩むんだ」

なんとなく高校に行き、とりあえず大学受験。
そんな風にみんながだんごになっていた学生時代と違い、社会に出ると本当にみな違う道を歩み始めます。
そうして本当に危機感をもって自問自答するようになるのでしょう。
「自分はどうやって生きていきたいのか?」

そんな自分を海を旅する貝になぞらえる著者。
私も著者と同じくまだ旅の途上です。

著者は今現在沖縄のフリースクールの教師をしていらっしゃるそうです。
沖縄の貝はどんな色をしているのでしょう?