Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ペット・サウンズ」ジム・フシーリ著(村上春樹訳)新潮社

2008-06-03 | 村上春樹
「ペット・サウンズ」ジム・フシーリ著(村上春樹訳)新潮クレスト・ブックスを読みました。
ビーチ・ボーイズがサーフィン音楽を奏でるポップ・スターからの転機となった革新的なアルバム「ぺット・サウンズ」について語られた本。
曲についての言及とともに、父親との確執、引きこもり、麻薬の常用、肥満・・・といったブライアン・ウィルソンの半生についても語られています。
著者自身の人生とビーチ・ボーイズの音楽がきっても切れない関係にあるためその語り口は熱く、読み終えた後私もすぐに「ペット・サウンズ」を手に入れて聞きました。

村上春樹さんの詩訳もとてもいいです。
たとえば私が一番いいなあと思ったのは「I Just Wasn`t Made for These Times」。
通常「駄目な僕」と訳されている曲ですが、村上さんは「間違った時代に生まれた」と直訳調に訳しています。
前者は題名としての語呂も考えて短く意訳したのでしょうが、「駄目な僕」だと自虐の甘美さみたいなものを感じるのですが、村上さんの訳だと「自分がだめなのかどうかもわからない」という心の痛みが感じられて、いいなあと思うのです。
「ペット・サウンズ」村上訳歌詞バージョンも発売してほしいなあ。
ちなみに「間違った時代に生まれた」全訳はこちら。

自分にぴったりの場所を僕は探している。
自分の心をそのまま言葉にできる場所を。
いつまでも一緒にいたいと思える人々を、
みつけようと努めている。
僕にはアタマがあるってみんなは言う。
でもそんなもの何の役にも立ちやしない。
残念だけどね。
ものごとが再び動き出すたびに、
今度こそうまくいきそうだって気がする。
でもほら、必ずどこかでおかしくなっちゃうんだ。
ときどき僕はすごく悲しくなる。
僕はきっと、間違った時代に生まれたんだな。

また、同アルバムの「God Only Knows」は村上さんの著書「村上ソングズ」の冒頭で全訳されているので、ぜひそちらも味わって欲しいです。
村上さんの著書「意味がなければスウィングはない」のブライアン・ウィルソンの章も必見!