Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「Sudden Fiction2」R・シャパード/J・トーマス編(文芸春秋)

2005-02-28 | 柴田元幸
「Sudden Fiction2 超短編小説・世界篇」
R・シャパード/J・トーマス編(柴田元幸訳)(文芸春秋)を読みました。
以前に刊行された「Sudden Fiction 超短編小説70」の続編で、
前回と異なり、今回は世界中の作家の60作品が集められています。
そして作家陣がとにかく豪華。
ボルヘス、ガルシア=マルケス、コレット、イサーク・バーベリなどなど。
日本からは川端康成の「バッタと鈴虫」が選出されています。
手作りの灯篭の美しい光、改めて日本語って美しいなあーと感じました。

ファンタジックな不思議な味わいの超短編もあり、面白かったです。
ドイツのハインリヒ・ベル「笑い屋」、寡黙な職業的笑い屋の話。
アルゼンチンの作家フェルナンド・ソレンティーノの「傘で私の頭を叩くのが習慣の男がいる」。
モニカ・ウッド「消える」、水に魅入られた巨体の女性の話。
アン・ビーティ「雪」は文章がとてもきれいでした。

作風の違いに加えてそれぞれの国の文化の違いもあって、バラエティ豊かで面白いアンソロジーでした。

古代ローマ街道~道は何を運んだか!?(2005.2.26放送分・フジTV)

2005-02-27 | トルコ関連
古代ローマ街道~シルクロード・アウトバーン~道は何を運んだか!?ラ・ストラーダ
(2005.2.26放送分21時~フジTV)を見ました。
ナビゲーターは石坂浩二さん。「道」を軸にした文化の移り変わりを放送しました。

アフリカのけもの道から、ローマのアッピア街道、ピラミッド造営の道、パリのシャンゼリゼからスペインの巡礼路、ドイツのアウトバーンまで
切り口が多岐に渡っていてとても面白かったです。
なかでもローマ帝国の道路の建築技術には改めてびっくり。
排水の技術から歩道車道の区別、舗装の緻密さ、どこまでも直線で作っていったその技術!

また、昔はパリの道は雨の日はぬかるみ、投げ捨てられた汚物だらけで、
つばの広い帽子や香水・ハイヒールが発明されたというエピソードも面白かったです。

また、道の発達に大きな役割を果たしたのが乗り物の変化。
ハンガリーのコチ村という名前は初めて聞きましたが、馬車を作っていた村で、
サスペンションや方向転換の技術など、当時の最先端の技術があり、ヨーロッパの90%の
馬車を作っていたそうです。スゴイ・・・。

メインスポンサーが日産自動車だったため、番組の途中に巧みに車のCMが取り込まれているのが
新鮮でした。結局チャンネルを変えることもなく最後まで見てしまいました。やられた。
 
 

「飲めや歌えやイスタンブール」斎藤完著(音楽之友社)

2005-02-24 | 柴田元幸
「飲めや歌えやイスタンブール」斎藤完著(音楽之友社)を読みました。
尺八の演奏ができる著者が、尺八と似ているネイというトルコの楽器に惹かれ、
学生としてトルコ音楽院に留学した生活の記録です。
と、いっても実にならぬレッスンに業を煮やしネイは早々挫折。
トルコのカフェバー(民謡を聞かせる酒場)に興味を持ち、そこで働いた
体験記が主な内容です。
日本人が抱く「民謡」のイメージとは異なり、トルコの民謡は老いも若きも
踊って歌って盛り上がれる、制約のない楽しい音楽。
男性同士のキスの挨拶へのとまどいや、警察との戦いなど著者の生の体験談が面白いです。
トルコでは少数派といわれる、イスラム教アレヴィー派の祭りを訪れた章は珍しいなと思いました。


「幻の特装本」ジョン・ダニング著(宮脇孝雄訳)早川書房

2005-02-22 | 柴田元幸
「幻の特装本」ジョン・ダニング著(宮脇孝雄訳)早川書房を読みました。
ベストセラーになった「死の蔵書」の続編です。
警察を辞めて古書店主になった主人公のクリフは、元同僚から仕事の依頼を受けます。
その仕事とは、存在するはずのないポーの「大鴉」の1969年限定版を盗んだ少女を連れ戻すこと。
その特装本はもし存在すれば莫大な価値がある本。
仕事をひきうけたクリフはその事件を追ううちに、過去の連続殺人事件を知ることになります。

前回の作品と異なり、今回は装丁や印刷に重点を置いた本のうんちくが充実。
クリフが犯罪すれすれの捜査を繰り返すのは相変わらずですが、痛快です。
クリフがその都度得た手がかりを元に関係者をいったりきたりするため、
ちょっと作品的に長いかな~とも感じましたが、結末も納得。面白かったです。

私は本は内容だと思っているので、装丁や初版にはこだわりませんが、
本を「モノ」として愛する気持ちも理解できます。
蔵書家のこだわりはよく聞きますが、この作品では作り手のこだわりに焦点をあてているところがよかったです。

「世界遺産」ハンガリー(2005.2.20放送分)

2005-02-21 | 外国の作家
「世界遺産」(2005.2.20放送分)を見ました。
今回とりあげたのはハンガリーのトカイ地方。トカイワインで有名なブドウの産地です。
トカイワインは貴腐(きふ)ワイン。
貴腐菌がついて腐敗したブドウを絞った、甘みと味わいが増したワインだそうです。
貴腐菌がついたブドウだけを選んで手で摘むためとても手間がかかり、発酵も自然発酵のため、
出来上がるまで非常に時間がかかります。
熟成を待つ倉庫にもカビがびっしり。これもワインの味わいのひとつとワイナリーの方は語ります。
一口に「ワイン」といっても世界にはいろいろな種類があるのですね。


「世界ウルルン滞在記」カナダ(2005.2.20放送分)

2005-02-21 | 児童書・ヤングアダルト
「世界ウルルン滞在記」(2005.2.20放送分)を見ました。
今回の滞在先はナイアガラの滝から車で30分のカナダのアイスワインのワイナリー。
訪問者は女優の菅原禄弥(としみ)さん。

アイスワインにするブドウは一見枯れたブドウに見えますが、
実は完熟し、凍結・溶解を繰り返し甘みが凝縮されたブドウ。
水分が抜けて熟成が進んでいるので、搾れるブドウ果汁は一粒に一滴だとか。

収穫は、気温がマイナス8℃から12℃に下がった夜だけ。
ほかにも人工的にブドウを凍らせてはいけない、糖度は35以上などVOCの細かい規定があるそうです。
収穫後のブドウは果汁を絞り、半年間熟成させて完成するそうです。

以前母がカナダを旅行した時にアイスワインを飲み、「シロップのように甘くていまいち」と
評していたのですが、番組で見る限りとてもおいしそうでした。
今度機会があれば私も一度試飲してみたいワインです。

「イギリスからの贈りもの」 土屋守 文・写真 (駿台曜曜社)

2005-02-19 | 柴田元幸
「イギリスからの贈りもの」 土屋守著 (駿台曜曜社)を読みました。
公園、オークション、紅茶、ガーデニングなどなどイギリスのエッセンスが詰まった本です。
とにかく写真が美しくてうっとり。
著者は在英邦人向けの雑誌「ジャーニー」の編集長をしていた方だそうです。
チョコレートの自販機や、設置された年代がわかるポストのうんちく話など
実際にイギリスを旅行して確かめたくなる話が沢山で楽しめました。

「死の蔵書」ジョン・ダニング著(宮脇孝雄訳) 早川書房

2005-02-17 | 柴田元幸
「死の蔵書」ジョン・ダニング著(宮脇孝雄訳)早川書房を読みました。
ある日古書掘り出し屋のボビーが殺害されます。主人公の刑事クリフは古書マニア。被害者の蔵書に莫大な価値があることを知り、捜査に乗り出します。この作品はネロ・ウルフ賞を受賞しているベストセラー本。

古書に関するウンチク、古書店経営のいろはなど、殺人の筋以外もたっぷり楽しめる一冊。
主人公のクリフがボブの人脈をひとつひとつ調べていくごとに新しい事実がわかり、
最後は犯人がびしっと決まるあたり、ミステリーのお手本のような作品。
面白かったです。


「愛のゆくえ」リチャード・ブローティガン著(新潮社)

2005-02-15 | 柴田元幸
「愛のゆくえ」リチャード・ブローティガン著(新潮社)を読みました。
主人公は司書。彼の所属する図書館は普通の図書館のような本の閲覧や貸し出しはありません。さまざまな人が自由に書き上げた作品を受け取り、登録し、保管するだけの不思議な図書館です。
冒頭ではひとりの老婦人が訪れます。彼女は窓一つないホテルの一室でロウソクで花を育て、そのことを5年掛けて書き上げ、彼の図書館に持ち込み、満足して帰っていきます。
主人公は数年間図書館から外には一歩も出ていない世捨て人。『気持ちよく親切に接しなければならない。それが大切だ。本とそれを持って来た人に求められているという感じを与えることだ。それがこの図書館の主要な目的だからだ。それに求められていないもの、つまりはアメリカ人の書いた抒情的でとり憑かれた書物をここに気持ちよく集めることがね』

そんな彼のもとに、ある日ヴァイダという若い娘が本を持ち込みます。彼女はあまりに美しく、男性には激しい性欲を、女性からは憎しみを受ける自分の肉体に嫌悪を抱き自分を捨て去りたいと思っています。ヴァイダと主人公はお互いに響きあうものを感じ、ふたりの図書館での奇妙な同棲生活が始まります。そして主人公は彼女との関係のために一日図書館を他人に任せたことにより、司書を降りることになってしまいます。彼はヴァイダの部屋へ向かい初めてビートルズを聞き、朝食をとり、「普通の」生活に戻ります。

主人公は世間的な見方からすれば人生の敗北者。しかし同じような人々が書いた本を受け入れる司書の仕事こそが彼自身の「求められている場所」となり、そしてヴァイダと出合うことにより、さらに自分から「他人と関係を持つ」覚悟が生まれていきます。その過程が丁寧に描かれている一冊。主人公とヴァイダの会話もユーモラスであたたかく、ストーリーだけでなく、作者の文章の巧みさも楽しめる本でした。

「粋酒酔音 世界の音楽と酒への旅」 星川京児著 (音楽之友社)

2005-02-14 | 柴田元幸
「粋酒酔音 世界の音楽と酒への旅」 星川京児著 (音楽之友社)を読みました。
作者は音楽プロデューサー。民族音楽を中心としてさまざまなジャンルの音楽を手がけ、愛し、世界各国をめぐっています。そして無類の酒好き!
この本は章を春夏秋冬に区切り、世界中のおすすめの音楽と酒がとりあげられています。
音楽に携わっている方らしく、文章も切れがよくリズミカルです。そしてとりあげる音楽と酒がとてもマニアック・・・。
アジアの打楽器からロシアの合唱団、日本の民謡までその取り上げる音楽は本当に多彩。
お酒も、椰子酒トゥアック、インドの花の花片を使った蒸留酒モフア酒、アイルランドのミード(蜂蜜酒)、タンザニアの筍から作る酒、遊牧民のミルクの酒アルヒーなどなど聞いたことも飲んだこともないものばかり。通常一般の流通にのらない酒も紹介されています。
「酒席と音楽は切っても切れないもの。気持ちの酔えない音楽を作ってどうするの」という
言葉に、作者の自身の仕事に対する誇りとこだわりが感じられました。