Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「二つの時計の謎」チャッタワーラック著(宇戸清治訳)講談社

2010-02-12 | 外国の作家
「二つの時計の謎」チャッタワーラック著(宇戸清治訳)講談社を読みました。
モンコン男爵の放蕩息子チャクラが、床屋の老人を殴った傷害事件を調べるサマイ警部は、同じ夜に発生した二つの事件に突き当たります。
チャクラの出資する輸入品販売店の共同経営者の縊死。
チャクラの懐中時計を握ったまま運河で発見された娼婦の溺死体。
状況からチャクラの関与が疑われましたが、現場で発見された二つの時計は、同じ時刻、九時五五分を指して止まっていました。三つの事件はどう結びつくのか。
醜聞を恐れる男爵はサマイ警部の父親にまで働きかけ、警察へ圧力をかけます。
さらに中国マフィアの不穏な動きも。
1932年、立憲革命直後のバンコクを舞台に、サマイ警部と相棒ラオーの活躍を描くミステリー小説。島田荘司さん選の「アジア本格リーグ」シリーズの第二巻です。

今までいろいろな外国文学を読んできて、一番名前が覚えづらいのはロシア文学だなーと思っていたのですが、タイ文学がそれをうわまわるとは!
バンチョン・ケーヌパン警察少尉、モンコンシンパイサーン男爵・・・本書ではわかりやすく縮めて表記してありますが、原文に忠実に訳してあったらきっと途中で挫折していたことでしょう。
少し難点をいえば、直接のストーリーの流れには不要な注釈が多い気がしたのと、「今日はドロンは勘弁してくれ」「人力車(←これはトゥクトゥクのことかしら?)」などの訳文が古い感じがしました。(本自体は2007年に書かれ、昨年9月に邦出版されたものです。)

警察官でありながら私服で隠密調査をするサマイとラオーは、ハードボイルドな探偵的。格闘シーンもかっこいいです。
話の流れとしてはごくスタンダードな謎解き小説ですが、それだけではなくタイ人街や中国人街、運河、さまざまなタイ料理、とオリエンタルな雰囲気をたっぷりと味わえる本です。


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