「浮世の画家」カズオ・イシグロ著(飛田茂雄訳)早川書房を読みました。
戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野益次が語り手。
彼は多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にありましたが、終戦を迎えたとたん周囲の目は冷たくなりました。
弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まず。
小野は引退し、屋敷に篭りがちになります。
老画家は過去を回想しながら、みずからが貫いてきた信念と新しい価値観のはざまに揺れます。
ハヤカワepi文庫から再販されるにあたり作家の小野正嗣さんの解説が付記されています。
戦争中は賞賛された愛国主義が、敗戦とともに戦犯とよばれる。
敵と思っていたアメリカを追従する風潮が広まる。
180度価値観が変わった時代に生きる難しさを感じさせられました。
そして語り手である小野の自己正当化する語りと、周囲の反応との齟齬が話が進むにつれて段々と明かされていきます。
「私は自分の権威など気にしたこともない」と語りながら、美術界の大御所の斉藤家主人が自分を「大家」と呼んだときのことをいつまでも忘れずにいたり。
「弟子の黒田とは考えのいきちがいがあっただけだ」といいながら、黒田を密告した過去がほのめかされたり。
小野は本当に世間的に影響力のある画家だったのか?
カズオイシグロはこの作品を発表当時32歳。
それでこの老年の葛藤を描けるんですから、本当にすごい・・・。
自分が自分を語る、ということの難しさを感じさせられる作品でした。
戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野益次が語り手。
彼は多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にありましたが、終戦を迎えたとたん周囲の目は冷たくなりました。
弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まず。
小野は引退し、屋敷に篭りがちになります。
老画家は過去を回想しながら、みずからが貫いてきた信念と新しい価値観のはざまに揺れます。
ハヤカワepi文庫から再販されるにあたり作家の小野正嗣さんの解説が付記されています。
戦争中は賞賛された愛国主義が、敗戦とともに戦犯とよばれる。
敵と思っていたアメリカを追従する風潮が広まる。
180度価値観が変わった時代に生きる難しさを感じさせられました。
そして語り手である小野の自己正当化する語りと、周囲の反応との齟齬が話が進むにつれて段々と明かされていきます。
「私は自分の権威など気にしたこともない」と語りながら、美術界の大御所の斉藤家主人が自分を「大家」と呼んだときのことをいつまでも忘れずにいたり。
「弟子の黒田とは考えのいきちがいがあっただけだ」といいながら、黒田を密告した過去がほのめかされたり。
小野は本当に世間的に影響力のある画家だったのか?
カズオイシグロはこの作品を発表当時32歳。
それでこの老年の葛藤を描けるんですから、本当にすごい・・・。
自分が自分を語る、ということの難しさを感じさせられる作品でした。