Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「軽い手荷物の旅」トーベ・ヤンソン著(富原眞弓訳)筑摩書房

2007-04-17 | 外国の作家
「軽い手荷物の旅」トーベ・ヤンソン著(富原眞弓訳)筑摩書房を読みました。
ムーミンシリーズで知られるヤンソンが描く大人のための短編集。
木の絵が型押ししてある装丁が素敵です。

「八十歳の誕生日」の中で語られる、客の言葉が印象的。
「ほんとうに肝心なのは欲求を感じるということだ。あったりなかったりするからね。最初は放っといてもあるもんだ。そのときはわからず無駄づかいする。そのあとさ、こいつは大事にしなけりゃと思うのは」

「見知らぬ街」も面白かったです。
飛行場で帽子をなくす老人。疲れ果て遺失物の部屋で適当にとった帽子。
その後タクシーに乗る段になってホテルの名前を忘れたことに気づき、結局その見知らぬ人の帽子に書かれた住所に連れて行ってもらう話。

「エデンの園」のスミスの言葉もよかったです。
「あなたのような人にとっていやだというのはむずかしいのよね、わかるわ。
でもあなたたちには見識(イデー)がない。だれひとり首尾一貫した見識(イデー)というものをもっていない。あなたたちはアルコールと感情を水で薄める。わかってないのよ、ただひとつの、手応えのある、薄められていない見識(イデー)というものをね」

「体育教師の死」では、優雅なインテリアに心を砕き去勢された庭を愛でるニコルと、森を大事に思うフローの対決がみものでした。


「ロートレック荘事件」筒井康隆著(新潮社)

2007-04-17 | 日本の作家
「ロートレック荘事件」筒井康隆著(新潮社)を読みました。
舞台は夏の終わり、ロートレックの作品に彩られ「ロートレック荘」と呼ばれる、郊外の瀟洒な洋館。
そこに将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まりました。
優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのですが、二発の銃声が惨劇の始まりを告げます。一人また一人、殺される美女たち。
読みすすんでいっても、なんだか違和感というか、居心地の悪さがあったのですが、もうとにかく気持ちいいくらいだまされた!というトリックでした。
面白かったです。