森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

脳卒中後の機能回復に影響を与える要因(part3)

2011年07月27日 06時30分36秒 | 脳講座



運動発現における皮質脊髄路経由の発火
ただし,このネットワークは,身体運動中に全て関係するが,他の2つのネットワーク(part1part2)との組み合わせで優位になる。

Sharma N, Cohen LG. Recovery of motor function after stroke. Dev Psychobiol. 2010 Nov 17. [Epub ahead of print]

※part1,part2の組み合わせで運動実行は意味を持つと考えられています.
臨床のあるべき姿を考えることができると思います.
脳のネットワークから考えれば理解できます.


以下に一連のブログ記事からまとめた神経科学に基づく脳卒中後の機能回復に関する臨床推論を示します.

A)脳卒中後の4pの組織化に伴う運動機能回復に影響を与える要因
1.麻痺側への体性感覚フィードバック
2.運動イメージや運動観察に伴う運動予測型の脳活動
3.運動発現における皮質脊髄路経由の発火
   ※3.は1.と2.の神経ネットワークの組み合わせで有効

B)脳卒中後の手の機能回復促進のための臨床的推論
1.身体近位部に対する固有感覚フィードバック処理
2.身体遠位部に対する固有感覚ならびに皮膚感覚フィードバック処理
3.母指(手指)の能動的な触知覚課題
4.道具を接触し操作するといった運動イメージ想起課題
   ※ 3.と4.の導入が4p野の興奮性をより高める手続きになるのかもしれない.


8月の講演

2011年07月25日 18時41分17秒 | インフォメーション
1)第16回痛みを基礎から臨床まで考える会学術集会

8月7日(日)
10:00 シンポジウム 「ペインリハビリテーション」
シンポジウム1 「 痛みの解剖生理学 」  (30分)
     名古屋学院大学 リハビリテーション学部 肥田朋子
シンポジウム2 「痛みの末梢機構」  (30分)
     長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科      中野治郎
シンポジウム3 「痛みの中枢機構(認知面)」 (30分)
     畿央大学大学院 健康科学研究科 森岡 周
シンポジウム4 「痛みの中枢機構(情動面)」 (30分)
     甲南女子大学 看護リハビリテーション学部 西上智彦

名古屋国際会議場 会議室234

申込・問い合わせ先
メールタイトルを「学術集会参加登録」とし,①氏名,②所属,③会員種類(会員:一般,学生,非会員:当日入会予定,非会員),④参加予定日(1日目,2日目,両日)を明記して,8月1日までに以下のアドレスにお知らせにお知らせください.

事務局:坂野裕洋 itamikaijimu@ml.n-fukushi.ac.jp
         (@を小文字の@に変更してください)



2)Pain Rehabilitation 講習会のご案内

テーマ:脳科学からみたPain Rehabilitation
日 時:平成23 年8 月26 日(金) 19:00~21:00
会 場:沖縄リハビリテーションセンター病院
主 催:沖縄リハビリテーションセンター病院
講 師:森岡 周 氏(畿央大学大学院 健康科学研究科 教授)
定 員:120 名
受 講 費:2,000 円
申込方法:メールにて件名を「110826 講習会申込」として、①氏名、②職種、③所属、④経験年数を明記の上、tapic-reha@hotmail.co.jp 宛にお申込み下さい。
※同施設より複数名参加される場合、まとめてお申込頂くようご協力をお願い致します。
締 切:定員になり次第締め切り
問合せ先:沖縄リハビリテーションセンター病院 貞松・島袋・比嘉 098-982-1777

平成23年度 福井県高次脳機能障害セミナー

2011年07月25日 18時23分34秒 | インフォメーション
平成23年度 福井県高次脳機能障害セミナー 講演
日時:平成23年7月30日(土曜日)13:30~15:30
テーマ:脳科学から考える高次脳機能障害に対するリハビリテーション
講師:森岡 周(畿央大学)
場所 福井医療短期大学 視聴覚室
   福井県福井市江上町55字鳥町13-1(アクセス:http://www.f-gh.jp/fcm/)
対象者 高次脳機能障害を有する方及びそのご家族
医療・福祉・保健・行政・教育機関等の関係者
申込方法 平成23年7月27日(水曜(当日のご連絡もこちらまで)までにFAXかE-mail 
   福井県高次脳機能障害支援センター FAX 0776-25-8264 E-mail fukui-koujinou@kve.biglobe.ne.jp


日記:ワインハウスの死から

2011年07月25日 18時04分15秒 | 日記
先々週の週末は横浜で講演.
もう遠い過去のように過ぎ去ってしまう自分が嫌であるが,
かすかな記憶は日産スタジアムで行い,
3連休の中日,プールが隣接ということもあってか,
親子連れでにぎわっており,
もうかれこれ,こんな感覚はいつから感じてないかと思いながら,
講演先に向かった記憶がまずある.
それと日産スタジアムのため,
マリノスのホームスタジアムかと思った次第です.

また佐藤病院の藤本先生をはじめ,
スタッフの皆さんが真摯で,
良い感覚を受けました.

講演は神経機能回復を中心とした内容で,
5時間でしたが途中息切れでしたが,
まずまず内容は話せたと思います.

一方,先週末は徳島での協会主催の講習会.
これも200名ほど集まっていただき,
定員の150名をオーバーのようです.
横浜も徳島もオーバーで嬉しい限りです.
鶯先生,平島先生との懇親会.
徳島の海の幸を堪能しました.
私はなぜか,揚げ餃子のようなジャンクの方に手を出していましたが,
サザエ,イセエビを堪能できました.
また山田先生とも再会できましたし,
当日は岡崎先生とも再会できました.
古き良き友です.

こちらは協会主催ですので,
受講費が1000円ですので,お得だったと思います.

この両者を比較してみると,
前者は民間,後者は公的であり,
一方,前者は受講費がおそらく10000円,
後者は1000円です.

この9000円が何を示すかと思えば,
受講する者の質でしょうか.
それなりの金額を払って受講する者は,
ある程度,その金額に見合った情報を受け取って帰らないといけません.
だから,真剣です.
こっちも,それに見合ったものとして,
申し訳ない講演はできません.
一方,1000円の場合,
協会主催であり,しゃあ~なしで来る場合もあります.
今回はそれが少なかったようにも見えます.
前から講演しながら,みなさんの表情から読みとります.

なんというか,プロミュージシャンが来て,
それなりの演奏をしないといけないのが前者で,
後者は近所のアマチュアが運営費をとって演奏するという感じでしょうか.

僕は安いにこしたことはないと思っていますが,
けれども,500円だから行こうか,っていうのも?です.
もちろん,500円で来た者に対しても,
最高のパフォーマンスをするのがプロですので,
手を抜くつもりはありませんが,
なんというか,本人の主観的なものとして,
それなりに金をかけた場合,
脳が記憶をより高めようとするのです.
これは錯覚ですが,
それなりの価値を買えた,だからもっと高めようと思うのです.

こう考えれば妥当な額はいくらかとも思いますが,
それもわかりません.
そういうものは主観的な報酬価値ですから.
その日の自らの感情によっても左右されます.

一方,もうひとつの問題は,
受講費が10000円以上と高いにも関わらず,
講演者の講演料がものすごい低い場合があります.

例えば,以前京都(非営利団体)で講演した際,
200名で5000円とってたのですが,
私は3時間の講演でしたが,ほんの微々たる額をいただいただけで,
京都奈良の日帰りで懇親会もなし.
残りの100万近くはどこにいったか,不思議でたまらないのもありました.
もちろん民間企業の場合,
営利目的ですから,収入がないといけないのも重々承知です.
昨今,講習会ビジネスも増えてきました.
私はこれはある方向性を見出したことで,賛成です.
しかしながら,講演者は俳優,運営サイドはあくまでもディレクターであり,
受講生は講演者を目的に来ているのを忘れてもらいたくはないのです.
だから,講演者よりも多い金額が運営サイドに入ってはならないと思うのです.
一方.すべてが一律というのもおかしいものです.
営利目的の場合は,アーティストによって変えるはずです.
協会や学術団体のように営利目的でなければ,
だれでも一律の額というのはわかります.
あたりまえです.
法律上も.
一方,営利目的の場合は,コンサートのように変えないといけないとも思います.
私たちもプロですから.
それを究めようとする人とそうでない人の知識は一目瞭然です.
脳科学を軽くやっている人と,それを生涯の道としてやっている人では違うと思うのです.
知的財産という言葉があるように,
ものではなく,ひとに対価を払うというシステムの構築がまだ不十分に思えます.

講師料を上げろとはこれっぽっちも思わないですが,
講師の力量,受講生の動員力,会場のキャパ,そして今現在のニーズ,
そんなものを計算しながら,適切に運営してほしいと思うのです.


また・・・飲み食いに金を多く使うというのも見受けられます.
時には事務的に対応していただく方が喜びにもなります.
懇親会よりもグリーンをとか,ホテルをとも思ったりします.
(懇親会は好きな方で,必ず行きますが,年に数回は小言を聴かされたり,質問攻めにあったりして,不快な時もあります.)

つまり私がいいたいのは,
必ずしも自分のこころと他人のこころは同じではないということです.

自分がしてうれしいことを他人はそうとは思わないということであり,
これは治療にもつながるのです.
理学療法士からみた理学療法と患者からみた理学療法は同じではないのです.
リハビリテーションの理念の押し付けが必ずしも人の幸せをつくるとは思えません.

ワインハウスのREHABの歌詞がそのように訴えています.
(ガガのように言われていますが,彼女の生き方は,ほめられるものではなりませんが,破滅型芸術の典型です,純文学作家のような)
今頃,ジャニス,カートコバーン,ジムモリソン,ジミヘンらと酒をかわしてるかな.



日本理学療法士協会理学療法士講習会 講演

2011年07月24日 07時19分00秒 | インフォメーション
日本理学療法士協会理学療法士講習会 講演(徳島県理学療法士会担当)
平成23年7月24日(日)9:00~12:00
場所:徳島文理大学アカンサスホール
テーマ「身体知覚と運動学習」「知覚・こころとリハビリテーション
講師: 森岡 周(畿央大学)
    樋口貴広(首都大学東京)

日記:出直してきなさい...

2011年07月20日 20時10分05秒 | 日記
先日,ある学会で発表を終えた院生からの伝達で,
いくつかの指摘を受け,
さまざまな意見をいただき有意義であったとの報告を受けました.

この学会はリハではなく,
運動制御に関する学会であり,
神経科学者なども多く参加するものです.

さて,院生のNIRS発表に対して,
さまざまな意見をいただいた中で,
批判的吟味をしていただき,
例えば,こうすればこのようになるかもしれないとか,
このデータはこのように処理したほうがこうなるとか,
良い意見をいただきました.
その人たちはもうすでにNIRS研究にて,
国際雑誌にも掲載されている方であり,
よく把握しているからこその助言です.

一方,NIRSを使用しているあるセラピストから,
NIRSは,データが曖昧だとか,
何を計測しているのかわからないとか,
ダイナミックな動きを行った場合,
例えば歩行など,データが変わるとか,
さらに我々はNIRSを移動させながら計測しているのですが,
これではデータの信頼性がないなど,
云々を院生にいったようでした.
まあ,ここまでは許せるのですが(しょうがない),
そのあとの発言がよくない.以下に記します.
「我々もNIRSを使用してたんですが,最近はデータの信頼性がないから,NIRSを用いて計測するのをやめてますと・・・」

この文句は自分がユーザーであることを忘れています.
計測の問題はいくつもあれど,それをうまく使うことで信頼性をあげることを忘れているのです.
我々の仲間,例えば,Dの信迫,谷口,中野らは,前述したさまざまな問題をクリアしながら計測の準備をしています.
そのデータはとても信頼のおけるものです.
だから,逆に言いたいのです.
下手ではないのですか?と.

先日,対談したバイオリニストの飯島さんは,
ストラディバリウスを使用していません.
確かに,ストラディバリウスは名器かもしれません.
けれども,演奏者によってそのい名器は生きるか,死ぬか.
一方,名器といわれないものであっても,
演奏者によって生きるのです.

演奏者はバイオリンのユーザーであって
製作者ではありません.
ユーザーは製作者に意見は言いますが,
その楽器がよくないからと言って使わないなどとは言いません.

ユーザーと製作者が協調することで,
さらに発展するのです.
われわれにとっては,島津製作所と私たちです.
島津の技術担当者なくして,
私たちの研究は成り立ちません.

ユーザな者が,機械の性能が悪いから使用しないとはいってはなりません.
家のクーラーのききがわるけば,
そのクーラーのききが最大限になる方法を生み出すのが
研究者なのです.

セラピーも同様です.
手技が悪いわけではありません.
それを使えない,使いこなせない人間がよくないのです.

使いこなせてこそ,本当の意味での欠点がみえ,
それこそが技術員が待ち焦がれていた意見なのです.

いずれにしても,NIRSやMRIはしょせん・・・といっている人には,
「ところでおたくの業績は?」「国際雑誌は?」と私は問い返すでしょう.
なぜなら,そのような装置を使ってちゃんと成果を挙げている人がいるのだから.

そういう人には「業績なくして発言なし」ともいうでしょう.

そして,NIRSやMRIは解釈学なのですが,
「解釈するための知識を相当につけて出直しなさい」ともいうかもしれません.
解釈するためには相当の神経生理学,特に動物のニューロン研究の知識が必要なのです.

勘違いしてはなりません.
私たちはユーザーなのです.
その機器を開発するものではないのです.
だから,使いきることがとても大切なのです.
車といっしょです.
性能が悪いからと言って乗り換えることはできません.
なぜなら,脳機能イメージング装置を超えるものは
現在のところないのだから.


脳卒中後の機能回復に影響を与える要因(part2)

2011年07月19日 19時28分18秒 | 脳講座


Sharma N, Cohen LG. Recovery of motor function after stroke. Dev Psychobiol. 2010 Nov 17. [Epub ahead of print]

Cohenらは,一連の運動イメージなどの先行型活動が運動機能回復に関与する2番目の因子と報告しました.
これは運動イメージや運動観察に関するネットワークの再組織化であり,運動前野との機能連結の促進に基づくものです.
二つ前のブログ記事の機能連結にも相当します.

以前に示した機能回復に影響を与える要因(1)に続いての介入可能性になります.

ひとつ前のブログと照らし合わせながら解読すると臨床のヒントが浮かんできます.


運動イメージと4p野の興奮性

2011年07月19日 19時13分53秒 | 脳講座


上は運動イメージ中のBA4p野の活動と運動回復の関係を表した相関図です.
左図は損傷側4p野の活動の大きさと運動機能に相関があることを示したもの(r=0.61, p<0.05),
右図は損傷側4p野の活動変化と運動機能に相関があることを示したもの((r=0.67, p<0.05)
皮質下脳卒中の4p野の活動は,患者の運動機能を予測すると同時に,4p野の興奮性に運動イメージが関与することが明らかになりました.

Sharma N et al: Motor imagery after subcortical stroke: a functional magnetic resonance imaging study. Stroke. 2009
40(4):1315-24.

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大脳皮質間の連結から考える臨床的思考

2011年07月19日 14時17分29秒 | 脳講座

丹治 順:運動と脳.共立出版より

4野(一次運動野:M1)には体性感覚野からの入力を受けていますが,それは高次感覚野の1野,2野からです(上図).
その領域は3野で一次的に感覚処理(体部位再現)された後,外部環境との関係性によって,身体と外部の関係性を知覚するところです.
ここは,注意の機能によって,感覚情報を強めたり(促通),弱めたり(抑制)するところです(下図).
知覚される状態はここを指します.


岩村吉晃:タッチ.医学書院より

すなわち,感覚刺激のみによって4野に神経連結するのではなく,注意によって高次処理された情報が4野と連結します.

よって,先日示したold M1やnew M1に置き換えて考えてみると,
固有感覚刺激,皮膚感覚刺激でなく,
それらの情報処理に基づいた機能回復になります.

物理的刺激による介入も,患者自らの注意の影響を大いにうけるわけです.
その考察が国際的な論文にもありません.
なぜなら,対象者を選択しているからです(除外基準から).