森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

日記:再掲(昨年7月7日掲載のブログ)

2011年07月10日 22時58分37秒 | 日記
困難の度合いというタイトルのブログ

突然,脳卒中になって倒れ,志半ば目標が失われた人,それによって家族が路頭に迷ったケーケース.
突然,がんを宣告され,死の恐怖が募った方.それにより愛すべき人を失う不安に苛まれたケース.
こうした方々に対して,自分は心底から共感することは難しいと思います.
なぜなら,それに近い事態に巡り合っていないからです.

しかしながら,その人たちと共に歩き,その後のプロセスについては共感することが可能になると思います.
困難・苦労・不安など幾度とない経験をしていないと,一緒にこれらの方々と共同注意しながら立ち向かうことができないと思います.

今,実習に行っている学生諸君は,社会という厳しさにおいて,困難という壁をつきつけられています.
しかし,そのような困難は,先に示した病気と闘っている方の困難・不安とは比べ物になりません.

わからない,レポートが書けない,などと言っていますが,そのような困難度はみなさんが関わらないといけない人たちの度合いに比べ,とても小さなものです.
しかしながら,その小さい困難がこれからも幾度となくあらわれ,それを些細ながらも,小さいながらも乗り越えていく経験の繰り返しによって,そのような人たちの苦しさが共感できないながらも,理解しようとするこころを生み出していきます.

患者さんたちはリハビリに向かい,もっとよくなろうと懸命に努力しています.
その努力に比べ,学生諸君の努力はまだまだ足りません.
懸命に真面目に努力する,そうした姿勢の繰り返しが,自分の無力さを知るとともに,「無知の知」を生み出し,知らなければならない,もっと技術を高めなければならないという志向性を生み出すのです.

もう一度言います.みなさんの困難・不安は比べようによってはとても些細なものです.
それをすぐさま乗り越えられなくても,乗り越えようとする姿勢の繰り返しによって,経験が構築され,信頼されるセラピストへ進化するのです.
「書けない」「できない」と嘆く学生たち,思うように「動けない」患者さんたちの真の苦しさがわかりますか?自分をプロテクトせず,前を向いてがむしゃらに,自分をさらけだし,できないことをできるようにするように懸命に努力し,わからないことに蓋をせず,生きていってもらいたいと思います.


涙の質を上げるよう,日々頑張ってもらいたい.