森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

非効率性こそ脳の進化の象徴

2013年07月29日 23時43分26秒 | 脳講座
科学、芸術、祭事、などなど、文化的といわれるものは、生物学的な生存のためにはまったく必要ない。しかしながら、それは社会学的な人間を豊かにするかけがえのないものである。「知る欲求」「表現する欲求」「感じる欲求」これらを満たしてくれる媒体である。この3つの中で、科学や芸術はそれ自体が仕事になるが、「祭り」は仕事でもない。その仕事でもない、生存のためにも直接的に関係しない、この生きて行くために非効率的なものを人間は代々伝承してきた。ここに人間の素晴らしさがあり、人間の強さがあるように思う。

これまでの生態学を中心とした様々な研究によって、社会行動と霊長類の大脳新皮質の大きさと相関するものとして、以下の7つがあげられている。

①社会集団の大きさ
②密接な関係を同時に維持できる個体の数
③社会的技能の程度
④戦術的ごまかしの頻度
⑤社会的遊びの頻度
⑥社会的な「絆」
⑦生活の複雑さやプレッシャー

祭りをすること、その意味が上記の7つを読み解けば、わかるような気がする。人間はなぜ祭りを継承してきたのか、そしてそれを継承しようとするのか、それが脳を育むために重要だと言う事を暗黙的に知っていたからではないだろうか。昨今の効率よくいき、安く人生を済ます、この志向性は、自己の一生でなく、末代の生涯に影響するかもしれない。それを進化と呼ぶか、退化と呼ぶか、どの視点に立つかで変わるだろう。

いずれにしても、祭りは生存のための仕事ではない。一見、生きるために非効率なこのもの、それに人間の豊かなる脳のヒケツが隠されているのかもしれない。そういう一見、無駄だと思われることに、一生懸命になっている人間は、とても豊かで、人間らしい人間だと思うのである。自己肯定というバイアスも入るが、おそらく三人称的にとらえれもそれはある程度の根拠は存在していると思うのである。

8月~10月の講演スケジュール

2013年07月29日 15時49分27秒 | インフォメーション



福岡青洲会病院ニューロサイエンスセミナー
<開催日>平成25 年8 月18 日(日曜日) 10:00~16:00 (受付開始9:30~)
<開催場所>福岡青洲会病院健診棟(4階講堂)
<セミナーテーマ>
「神経科学に基づいた脳卒中後の機能回復に対する臨床手続き」



合同会社geneセミナー
高次脳機能障害の脳内機構とニューロリハビリテーション~東京会場~ 
講師 森岡 周 先生 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 教授・理学療法士
開催日時 平成25年8月25日(日) 10:00~16:00(受付9:30~)
会場 株式会社 東京証券会館 8階 ホール 東京都中央区日本橋茅場町1-5-8



senstyleセミナー

テーマ 脳卒中片麻痺に対するニューロリハビリテーション in福岡
日時 平成25年8月31日(土)~9月1日(日)
講師
森岡周先生(畿央大学 教授)
松尾篤先生(畿央大学准教授)
信迫悟志先生(東大阪山路病院)
竹林崇先生(兵庫医科大学)
場所 福岡市立東市民センター


第18回日本ペインリハビリテーション学会
日時 平成25年8月31日(土)~9月1日(日)
場所 九州ビルディング9階大ホール
特別講演司会
 神経科学に基づくリハビリテーションアプローチ
  講師:住谷 昌彦 先生(東京大学医学部附属病院・麻酔科)
  司会:森岡  周 先生(畿央大学大学院)



2013年度日本認知科学会サマースクール
日時: 2013年9月2日(月)13:00 ~ 9月4日(水)15:30
場所: 神奈川県箱根市 箱根湯本富士屋ホテル
セッション(2)「身体性・社会性の認知科学と医療の接点(仮)」
コーディネータ:嶋田総太郎(明治大学)
講師:森岡 周(畿央大学)



senstyleセミナー
テーマ ニューロサイエンスから考える脳卒中リハビリテーション
講師 森岡 周先生(畿央大学 教授)
日時 平成25年9月8日(日) 10:00~15:30(受付開始9:30)(予定)
会場:医療法人おもと会 沖縄リハビリテーション福祉学院 沖縄看護専門学校


日本理学療法士協会心理精神領域理学療法セミナー
日時 平成25年9月14日(土)
テーマ 社会性の神経科学-心理・精神障害者を理解するー
場所 土佐リハビリテーションカレッジ
講師 森岡  周(畿央大学 教授)


合同会社geneセミナー

テーマ 神経科学から考える脳卒中リハビリテーション-運動機能回復のための臨床手続-~名古屋会場~
講師 森岡 周 先生 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 教授・理学療法士
開催日時 平成25年9月15日(日) 10:00~16:00(受付9:30~)
会場 名古屋市中小企業振興会館 7階 メインホール 愛知県名古屋市千種区吹上2-6-3


平成25年度全国大学保健管理協会近畿地方部会保健師・看護師班研究集会
日 時 平成25年9月19日(木)
場 所 畿央大学 冬木記念ホール
テーマ 脳の発達と社会的コミュニケーションの関係
講師 森岡 周


畿央大学 ニューロリハビリテーションセミナー応用編

日時 平成25年9月28日(土)、29日(日)
場所 大学冬木記念ホール


旭川リハビリテーション病院特別研究会
日 時 平成25年10月5日(土)~6日(日)
場 所 旭川リハビリテーション病院
テーマ ニューロサイエンスから考える脳卒中リハビリテーション
講師 森岡 周


医学書院 2013年度 理学療法教員サポートセミナー
テーマ どう教える? どう学ぶ? 神経理学療法 授業を“組み立てるコツ”,伝授します!
日時:2013年10月12日(土) 13:00~16:30
講師:森岡 周
会場:東京都文京区・医学書院 本社2階 会議室
定員:70人
受講料: 6000円 (講習会費+資料代,消費税込。懇親会は無料)

Q.o.A.A.特別研修会in新潟
日時 平成25年10月13日(日)
場所 未定
テーマ『痛みと情動のニューロリハビリテーション』
10:00~12:00 『ニューロリハビリテーション』        信迫 悟志 先生
13:00~17:00 『痛みと情動のニューロリハビリテーション』  森岡 周 先生


第21回日本物理療法学会学術大会
会期: 2013 年 10 月 19 日(土)~ 20 日(日)
会場:神奈川県立保健福祉大学(横須賀市平成町 1-10 -1)
特別講演 ペインリハビリテーションー臨床と神経科学の融合ー
講師 森岡 周



合同会社geneセミナー
高次脳機能障害の脳内機構とニューロリハビリテーション
講師 森岡 周 先生
畿央大学 健康科学部 理学療法学科 教授・理学療法士
開催日時 平成25年10月20日(日)
10:00~16:00(受付9:30~)
会場 大阪科学技術センター 8階 大ホール
大阪府大阪市西区靱本町1丁目8番4号


senstyle講演
講師 森岡 周、他
場所 神戸市
日時 平成25年10月27日(日)
テーマ 未定


8月1週目~2週目の週末はよさこい祭り関係で帰省です。
9月22日は大学院入試、21日はライブの予定です。


シナプス刈り込みとかけまして。。

2013年07月25日 22時48分29秒 | 日記
デカルトはベッドの上でゆったりと、ゆっくりと、考え、デカルト座標にいたった。ゆったりと、ゆっくりと、ここにヒケツがある。そして身体はせわしく動いていない。ゆったり、ゆっくりする時間をどう獲得するかが人生を決めるといっても過言でないが、現実、そうもさせてくれない。

私ごと、論文を書く時間だけでなく、論文を読んだり検索したりする時間すらない。ないのである。そして私は安直に睡眠を減らすといった方法や、プライベートな活動を削減するといったこともしない。それだけのキャパしかないと自分自身が思うからだ。こうした決断はまぎれもなく自己が選択してきた路でもある。

現実、今、自分自身の役割を認識しつつも、どっかで、自己で微妙に修正していかないと、大学教員の資格すらもなくなるのではないかと思っている。巷には良くやっているとか言われるが、まだまだ物足りない。報酬を最大限にしようとする脳をもってこそ、喜びを持つ。そうした報酬を最大限にしようとしなくなれば、それは引き際でもある。一線に残るのも他者のため、一線から退くのも他者のため。発達において、シナプスが刈り込まれるのも、神経ネットワークに隙間をつくり、新たなつながりを創発するためでもある。そこのあなた。。新たなつながりを邪魔してませんか?

少しばかりのお願い

2013年07月25日 09時52分14秒 | 脳講座
昨日で4年生は臨床実習が終わりましたね。
教育者として。。

1回しかない自分の人生、好きなように使えばいい。命は限りあるもの。だから、命を使い切るということが大切。けれども、この好きなようにっていうのは自分勝手に生きるというものではない。

自己は他者にいかされている。自分の心(脳)はまぎれもなく、他者の影響を受けながらつくられてきたものである。その他者は親、先生、友達、彼女、彼氏、指導者などなどである。その恩恵を意識すれば、どのようにこれからの行動をふるまうかを意識しつつ、今度は他者の脳に影響を与える、あるいは他者の脳をつくるという意識のもと社会貢献を考えていってもらいたい。

自分の人生は自己の中だけでなく、他者の中にも生きている。

人間として生まれてきた以上、いや哺乳類として生まれていきた以上、他者を喜ばすことができるわけである。それは愛する人でもあり、対象者でもあり、パートナーでもあり、親族でもあり、仲間でもあり。。。

他者を「喜ばせるヒケツ」それは、ただそこに健康に存在しているだけでいいのである。

健康で生きていること、それが教育者として、あるいは少しばかりの先輩としてのお願いでもあるのである。

今こそ「分かれ目」

2013年07月19日 08時35分52秒 | 日記
ほんの少し行動を起こし前に進める。ほんの少し未来のリスク管理を行う。この繰り返しで人生は決定される。そのボタンを掛け違えるとサイコロは負にふられることがある。そして負にふられると、その負の自己を肯定してしまう。自己を見ずして他者を批判したり、あるいは自己を卑下したりと。ほんの少しの違い・イベントから始まるのである。

この負のサイクルが起こり始めると似た者同士で共感しあい、その負のコミュニティが形成される。そうすると共感しあうために、脳が錯覚をしはじめる。自分(たちは)は間違っていないと。そして間違っていない情報のみで自己脳を構築する。妄信することのはじまりであるし、聞く耳持たない意識のはじまりでもある。同じように犯罪等の悪の道に手を染めていくこともある。弱い心の持ち者同士が共感していってしまうシステムだ。社会コミュニティは脳間操作系である以上、致し方ない。類は友を呼ぶ、って言葉はある意味真実でもある。

あんな子ではなかったのに。とメディアに登場するパターン。ミラーニューロンシステムの存在を信じれば、そういう連鎖はサイエンスからみても納得される。そのきっかけは些細なイベント、ボタンの掛け違えである。この一線を越えるべからずといったリスク管理としての認知能力が人生道を異なるベクトルに進めてしまう。

学生達にはほんの少しの前に進める行動を期待したい。あ~だこ~だ理屈をこねる大人になるか、ならないか、今が勝負でもある。

疼痛研究の夜明け

2013年07月14日 08時33分28秒 | 日記
日本疼痛学会を予定より早く切り上げて昨日の夜帰ってきました。柿木隆介先生の色が出ていた学会でした。率直に疼痛の脳イメージング研究は諸外国に比べ少し遅れている感が否めないと思いました。これは長年疼痛研究・臨床が外科・整形外科・薬の範疇で議論されてきたことや、痛みに対する文化的側面が関与しているのではないかと思っています。日本人はある程度の客観的データ(例えば炎症反応や骨)がない痛みを「こころ」の問題とあつかい、こころ=精神的な弱さという視点で、気持ちの問題として、それに向き合ってきませんでした。日本人の精神にはよき意味での「我慢」とあしき意味での「我慢」があります。後者は我慢を強要するという視点です。しかしながら、近年のこころの問題が脳イメージング研究などで明らかにされてきた背景から、徐々にその問題を取り上げるようになってきました。やっと疼痛の脳研究は端緒についたばかりかなと思った次第です。ここまでくるのには相当の時間がかかったということを何よりも柿木先生は思ったのではないでしょうか。リハビリテーション療法士も、このスタートラインに研究者、医師と同時につくことが大事ではないでしょうか。うちの研究グループの方向性は間違っていないとある程度な確信をえました。研究室では疼痛の研究を推進してくれる者を積極的に求めたいと思います。

さてさて、昨日は大変でした。めまい、嘔吐、腰痛が醜く、座っているのも大変でしたが、見事な座長さばきでした。笑。僕は講演するよりも、座長や司会業が向いているのかな。編集能力の方が発揮できると思います。。。

6月終わりから昨日までほとんど出張で奈良にいたのは3日。過労は否めない状況でした。「無理をするな」といわれますが、私がスケジュールを決めているわけではありません。笑(私は基本堕落した心を思っています)。そして講演(授業もそう)などは休むことはできないわけなのです。代行できないということは、プロフェッショナルとなったのでしょうか?笑。まあ私の哲学は「無理ができるときに無理をしておく」なのです。20代~30代前半なんか特にそう。仲間と研究で朝4時になったことなんかしばしば。「やすのり!」それより心配なのはペインの仲間たちです。彼らも年をとり、過労で検査や入院となっています。バトンタッチの意識を急ぐ訳です。対象者のために研究をとめるわけにはいかないので。

さて、今日はオープンキャンパスです。個別相談ですが、腰や自律神経もつかな??多数の人々をお待ちしております。終わり次第、大分、徳島の講演資料に向き合います。明日は院生の論文を修正したり、自分の原稿に向き合ったりの仕事です。

学会雑感

2013年07月07日 08時10分24秒 | 日記
昨日は認知神経リハ学会にて、ATRの今水寛先生の講演の司会、ならびに対談を行いました。僕としては、最近のcerebellum-parietal cortexの運動学習における関係性に関する研究のアルゴリズムが知りたいと思い、後半にそれを聞くことができてとても勉強になりました。

2007年以降の論文を読んでも、結果、要約については理解できていたのですが、そのアルゴリズムならびに方法論が計算論的アプローチのため読解できていませんでした。その手続きを口頭で聞くことができとてもうれしかったです。その、これでもか、これでもかと行動の視点から統制していく手続きに関しては、研究者として本当に見習わなければならないと思いました。

いずれにしても、前頭ー頭頂ネットワークにおける認知段階の初期学習、頭頂連合野における連合段階の中期段階、そして小脳に内部モデルが形成された自動段階、これらの心理的概念が神経科学的手続きによって解明されつつあります。大脳ー小脳連関の重要性、ならびに、座標変換を考えながらの学習の質を問いかける治療が今後吟味されるべきでしょう。運動学習の手続きは、運動を出力させたり、感覚を入力するだけの単純な神経メカニズムではありません。

いろんなアプローチをしながら、結局はメソドロジー理論にしか生きられないのは問題です。今水先生との対談の最後に、彼からコネクティビティーを考えたオーダーメイドな治療を提供することがリハビリテーションである意見を聞けて、よかったです。これは司会の力でしょうか?笑。僕としては上頭頂小葉における予測的視点、下頭頂小葉における文脈的視点に今後の臨床展開可能性を感じ、そして側頭葉を含めたTPJのモデルと小脳のモデルの意味を考え、人間における高次な運動制御・学習(行為)を考えてみたいと思います。

後半の口述では信迫氏の成長を思い、もう私は超えられたと思い、今後は彼に仕事を少しずつ渡していこうと思います。臨床的示唆、飛躍的考察のなさ、研究手続き、そしてそれに関するサーベイ、さらには発表態度、質疑応答に対応する言動、これらのすべてがエレガントでした。

本日は若手・中堅研究者とのコラボのようです。疼痛では研究室の大住君が、運動イメージでは研究センターの信迫氏が、手の運動機能回復では院修了の大松さんが、そして発達障害では研究室の浅野氏と院修了の此上君が、それぞれ東大の住谷先生、ATRの雨宮先生、産総研の村田先生、上越教育大・さきがけの森口先生とよきディスカッションをすることでしょう。

学会は教育の場ではありません。そして概念を守る場でもありません。意見を出し合いながらよき方向に導き、今後えれを補完し合いながら、社会をよくしていくための媒体です。基礎研究者の知見をどのように応用するか、そしてそれを彼らにフィードバックし、どのような研究が今後必要か、解明すべき問題点を共有するところに意味があります。本当の意味でも学会を、私の遺伝子たちには期待しています。守破離も意識し、行動、言動に責任をもってちょうだい!