森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

脳卒中後の機能回復に影響を与える要因(part2)

2011年07月19日 19時28分18秒 | 脳講座


Sharma N, Cohen LG. Recovery of motor function after stroke. Dev Psychobiol. 2010 Nov 17. [Epub ahead of print]

Cohenらは,一連の運動イメージなどの先行型活動が運動機能回復に関与する2番目の因子と報告しました.
これは運動イメージや運動観察に関するネットワークの再組織化であり,運動前野との機能連結の促進に基づくものです.
二つ前のブログ記事の機能連結にも相当します.

以前に示した機能回復に影響を与える要因(1)に続いての介入可能性になります.

ひとつ前のブログと照らし合わせながら解読すると臨床のヒントが浮かんできます.


運動イメージと4p野の興奮性

2011年07月19日 19時13分53秒 | 脳講座


上は運動イメージ中のBA4p野の活動と運動回復の関係を表した相関図です.
左図は損傷側4p野の活動の大きさと運動機能に相関があることを示したもの(r=0.61, p<0.05),
右図は損傷側4p野の活動変化と運動機能に相関があることを示したもの((r=0.67, p<0.05)
皮質下脳卒中の4p野の活動は,患者の運動機能を予測すると同時に,4p野の興奮性に運動イメージが関与することが明らかになりました.

Sharma N et al: Motor imagery after subcortical stroke: a functional magnetic resonance imaging study. Stroke. 2009
40(4):1315-24.

</font>

大脳皮質間の連結から考える臨床的思考

2011年07月19日 14時17分29秒 | 脳講座

丹治 順:運動と脳.共立出版より

4野(一次運動野:M1)には体性感覚野からの入力を受けていますが,それは高次感覚野の1野,2野からです(上図).
その領域は3野で一次的に感覚処理(体部位再現)された後,外部環境との関係性によって,身体と外部の関係性を知覚するところです.
ここは,注意の機能によって,感覚情報を強めたり(促通),弱めたり(抑制)するところです(下図).
知覚される状態はここを指します.


岩村吉晃:タッチ.医学書院より

すなわち,感覚刺激のみによって4野に神経連結するのではなく,注意によって高次処理された情報が4野と連結します.

よって,先日示したold M1やnew M1に置き換えて考えてみると,
固有感覚刺激,皮膚感覚刺激でなく,
それらの情報処理に基づいた機能回復になります.

物理的刺激による介入も,患者自らの注意の影響を大いにうけるわけです.
その考察が国際的な論文にもありません.
なぜなら,対象者を選択しているからです(除外基準から).