森岡 周のブログ

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成長的思考と固定的思考

2015年11月17日 12時15分43秒 | 脳講座



ちょっとした古い2007年の学術論文(Blackwell LS, Child Development 78)ですが、固定型思考(知能は変わらない)と成長型思考(知能は変えられる)の者のその後の学業成績は想像通り、成長型思考の者が上がったのは言うまでもありません。

ここまでならありきたりなんですが、この研究の背景には努力を褒められた子どもと知能を褒められた子どもが、どちらに至るかを考察しています。知能すなわち、この場合は結果(成績)を褒められた場合、うまくいっているとき(成功しているとき)は成績は良いのですが、失敗するととたん成績が下がっていき、最終的には努力を報酬としていないため、固定型思考になっていくというわけです。それを明らかにしたのは1998年の論文(Mueller CM, J Personal Soc Psych 75)です。

私たちの世界の「結果」という意識にも何かつながりませんか?それを意識しすぎるばかり、何年かすると、結果が必ずしも得られず(失敗して)努力することをしなくなるというプロセスに(学習性無力感の成立)。あるいは自分自身でオープンし他者の目(道徳倫理を意識する上で第3者の視線は重要)に触れる経験が少なくなると、とたん「結果」を自分の都合のいいアウトカムしかみなくなる世界観(利他性を利用した超利己的主義)に。

自己意識。時制に従い、過去自己ー現在自己ー未来自己を意識し、過去自己に対して現在自己、そして未来自己を報酬にもつ。そういう人生が成長型思考につながっていくと思います(幼児実験のマシュマロ実験もそれに相当)。最終的にそれが私自身の意識である固有自己が成長し続けている!!という視点にたつことができます。

ただ、報酬にはトリックがあって、まだ時制の理解、プロセスの理解がない幼児は結果を報酬として与え、学童期後半、青年期になると必ずしも結果が得られない時があるため、努力(本当は経験プロセス)を報酬にした方が成績があがると言われています。

入職したてで、今度どうなるんだろう?といった時制が明確でない場合(未来を創造する力がない場合)、結果を得る手続きも必要でしょうね。しかし、それが治療結果にあるかは、僕は別だと思っています。

今日の人間発達学では、「社会性の発達」をまとめますが、最後にそのあたりを話して、来週からの「知能・認知の発達」にうつります。