森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

ニューロリハビリテーションセミナー「基礎編」

2010年04月29日 21時27分01秒 | インフォメーション
ニューロリハビリテーションセミナー「基礎編」

日   時 平成22年7月24日(土)、25日(日)
場   所 畿央大学
定   員 150名
受 講 費 10,000円
内   容

ニューロリハビリテーションの基礎となる

1.脳の発生、構造、発達
2.ニューロン、グリア、シナプス、ミエリンの構造と機能
3.脳幹、大脳基底核、小脳、大脳辺縁系、大脳皮質(後頭葉、側頭葉、頭頂葉、前頭葉)
の構造と機能について学ぶ。

プログラム
7/24(土)
12:00~ 受付
12:50~13:00 開会式
13:00~14:30 (1)脳の発生とその構造
14:40~16:10 (2)脳幹と大脳基底核の構造と機能
16:20~17:50 (3)小脳の構造と機能
18:00~18:30 テーブル討議

7/25(日)
9:00~10:30 (4)皮質下および辺縁系の構造と機能
10:40~12:10 (5)後頭葉・側頭葉の構造と機能
13:00~14:30 (6)頭頂葉の構造と機能
14:40~16:10 (7)前頭葉の構造と機能
16:10~16:30 質疑応答
16:30~16:40 閉会式

7講座の充実した内容!配布資料も充実の予定。
今年度は基礎編はこの1回しか開催しません。
間もなく大学ホームページで受付開始!!!


自然の美

2010年04月27日 22時27分22秒 | 脳講座
 上海万博における盗作に関する一連の出来事で,岡本真夜さんのとった行動が賛否両論のようです.岡本さんはなんと懐の大きく深い人物だという肯定的,賞賛的な意見と,前例をつくることでますます中国の盗作問題が拡大し,挙句の果ては後でなんとかなるという意識をつくってしまうという否定な意見が両方あるようです.

 岡本さんは高知県出身,高知南高校出身です.私が近森リハで臨床をしている,あるいは高知医療学院に教員になったころにデビューしました.高知県の人たちは,細かなもめごとを嫌います.権力には大いに抵抗しますが,些細というべきもめごとは,「なんちゃあじゃないき」といって,極力議論をさけます.著作権もとりわけ面倒となるわけです.坂本龍馬が大らかで議論を避けるというのもその一種です.これに関しては大らかで人当たりがよいという良い面もあれば,無責任でもあるという意見もあります.龍馬の言葉で,仕事は8割までやり,残り2割はだれかがやればよい,というのも手柄を独り占めしないというところで,もてはやされますが,もう一方で,最後まで責任をもてていないという部分もあります.これは高知の県民性のようです.言うことは言うが最終的な完結にはとても苦手な面です.板垣退助の行動もその典型です.県民性は脳の学習の産物です.文化は環境として自分自身の脳に大きく影響を与えているのです.今度の脳を学ぶ(2)ではそれについても解説しています.

 よさこい祭りがこれほど全国に拡がったのも作曲家である武政英策さんが,著作権を持たなかったことが理由としても挙げられますし,何よりも権利を優先せずに,自由を愛するという高知の心の現れです.すっかり全国的に高知よりも大きな規模で祭りが開かれるようにもなりました.こうした拡がりも高知が発祥だったことが影響しているのかもしれません.これは高知の「おきゃく」の精神のあらわれと思います.

 無責任であれば,逆に大らかで自由で創造性を持つことができる場合があります.人間とは実に相対的であり,そして人間同士がつながると,その相対性を埋めるようにコミュニティが拡がっていきます.どこか弱さをもっていれば,誰かがそれを埋める.社会のシステムはそのように成り立っているし,これからもそういうシステムを人間はつくっていかないといけないと心から思うのです.雑草が集まることで自然の美をつくるように.




いわて認知運動療法研究会 特別研修会

2010年04月25日 23時48分36秒 | 脳講座
いわて認知運動療法研究会 特別研修会

日 時 : 平成22年5月8日(土)14:00~17:00(受付13:30~)
            5月9日(日)10:00~14:30
講 師 : 森岡 周(畿央大学)
会 場 : 盛岡友愛病院大会議室(新館7階)

対 象 : リハビリテーションに従事する者
定 員 : 100名(すでに締切)

アイスランドの噴火におもう

2010年04月21日 11時30分50秒 | 脳講座
 人間は数々の困難を乗り越えてきました.自然の変化に適応していくことで,脳をはぐくみ,リフォームしてきました.アイスランドの火山の噴火により,今その脳の機能を見直しているところです.アイスランドには12年前に向かい研修しました.ちょうどその1年前に学術雑誌「Physiotherapy」に姿勢制御をシステムの視点から考えた論文が発表され,その著者であるマリアの働くIceland University Hospitalで研修させてほしいとイギリスのアパートから手紙を書いてOKをもらい,そのままIcelandに飛び立ちました.その時はメールなんかはまだなく,自筆の手紙を書いてポストに入れたのを記憶しています.研修の話はここではしませんが,着くなり,その雪深さ,そして温泉,ときよりの火山の噴火など自然のすごさを感じたことを今でも記憶が蘇ります.

 今回の自然現象はまさに予期できないものであり,こうした予期できない「偶有性」に出会うことで人は新たな知恵を磨いていくのだと思うのです.もし,自分が空港で巻き込まれても,少々はパニックになると思うのですが,各国を渡り歩き,ベルギーでは強盗に出会い,数々のホテルトラブルの経験などから,おそらく大丈夫な自分がいそうです.ことばが通じなくても,人間というのは,その時々で「動く」ことで何らかの知恵が生まれ,そして新しい自分をつくっていくのだと今回の一件で特に思いました.これこそ,脳の学習ですし,これが積もり積もって経験が伝承され,そして人間の進化に寄与していくものだと思うのです.

 しかし,先日も授業をしていて,はたして現代の若者はこうした事態に出会ったとき,どのように行動をとるのかを考えたとき,「キレる」や「自暴自棄」になり,「フリーズ」を起こしたり,行動を他人任せにしたり,とその表情からネガティブなものが読み取れたり,あるいはたくましく生きられるだろうなと思うものもいたりして,自然に適応する現象において,人間は明暗が分かれるだろうなと思った次第です.結果は最後についてくるものです.成功したりするのは,その時々の偶有性にどのように認知し行動をふるまってきたかで違うんだろうなと,今回のアイスランドで不安の最中にいる人の表情と,昨日の授業の学生の表情を照らし合わせながら,学生たちは人工に囲まれ,そして豊かさが当たり前に育ってきたために,自然,そしてたくましさというものを忘れ,そしていつしか人は予想だにしない自然現象に打ち負け,ほろんでいくのかもしれないな,とも思ったりしたのです.その時,もはや種の保存のために生きる(生き続ける,守る)という生物らしさはなくなってしまい,ほろんでもいいや,しんでもいいや,という概念形成が蔓延しているのかもしれません.食べればいいや,無理しなくてもいいや,といった心はその始まりかもしれないのです.



情報が動くということ

2010年04月19日 16時53分20秒 | 脳講座

 人の神経細胞(ニューロン)の数は胎児8か月ごろが一番多く,この時期あたりまでにシンプルな五感の形成を行います.ちょうど脳で言うとprimaryと呼ばれる領域の分化であり,胎児期にはすでにシンプルな感覚を持ち得ています.この時期,ニューロンはピークを迎えます.その後,胎動を止め,外界に誕生することを待ちます.すでにこの時期はニューロンが減りつつあります.

 生後,外界で生活し始めると,ニューロン同士のシナプス形成が豊富に行われます.大きなネットワークができるというのですが,救急車のサイレンが近付いてきたとか,聞こえなくても口の動きだけで何をしゃべっているのかわかるとかは,感覚同士が結びついたもので,高度な知覚ということになります.こうしたネットワーク形成に欠かせないシナプス形成は大脳皮質の領域でその発達は異なりますが,基本的な機能を処理する領域,たとえば頭頂葉なんかは早いうちに完成されていきます.全般的にはシナプス過剰形成といって,生後シナプスを増やしますが,その後だいたい8か月ごろから減り始めます.シナプス刈り込みと呼びます.

 新生児はこのシナプスの豊富さから大人では違いがわからないものもキャッチすることができます.Nature neuroscienceに報告された有名な赤ちゃんはサルの顔の区別ができるだとか,赤ちゃんは絶対音感を持っているだとか,赤ちゃんはお母さんの母乳をかぎ分けられるとか,日本の赤ちゃんでも韓国語の発音の違いを聴き分けられるとか,記憶や概念がないからこそ,そのような区別ができます.まさに違いがわかる男,女です.最近,ネスカフェの宣伝が「違いがわかる男」シリーズが復活して,とてもうれしいです.些細なことに大人は知らぬ間に気付かなくなってしまっています.先入観もその一つです.経験は知恵を生み出すものですが,時間を優先するがあまり,個々人の来歴に基づいた間違った解釈も生み出してしまいます.これは思考のためにとても重要なもの(解釈脳)ですが,それが横行してしまうと真実を見失ってしまいます.脳の中の記憶と現実のフィードバックを常にモニターする心がとても重要だと思います.脳のなかの来歴だけで生きず,そして他人の情報ばかりほしがらず,その両方を巧みに使い分ける脳でありたいものです.

 土曜日は聖隷クリストファー大学の大城研究室との情報交換会,本学からは松尾先生,冷水先生,前岡先生,そして博士課程の研究員たちが参加しました.とても情報が往来する良い会でした.そして日曜日は甲南女子大学の西上先生,生理学研究所の大鶴先生に痛みの神経機構と脳内機構についてご講演していただき,情報が動くという感覚を得ました.概して,一人の脳では情報が停滞します.そしてそれは濁り,最終的には自己の中だけで完結してしまい先に言ったバイアスを大いにかけてしまいます.他者コミュニケーションの本体は,他者によって自己の脳のなかの情報が動くというものであると,今回体感しました.最近はoutputばかりで,ともすれば自己脳だけで完結してしまうがあまり,自己を崩壊してしまいそうでしたが,他人から情報を得て,そして自己の脳で動かすという,まさに脳を身体で経験するという醍醐味をこの週末で感じることができ,とても有意義な週末だったと思います.講演するより,講演を聴くことの楽しさを久しぶりに経験しました.ありがとうございました.



2010(平成22)年度 畿央大学ニューロリハビリテーションセミナー

2010年04月14日 19時08分01秒 | インフォメーション
畿央大学理学療法学科講師陣による専門かつ先進的なニューロリハビリテーション講座の開講!

畿央大学では、全国の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の病院施設関係者および大学院生等の方々に向けてリハビリテーション分野で脚光を浴びつつある脳神経科学に焦点をあて、「基礎編」「応用編」「臨床編」「実践編」の4つの講座を下記要領にて開講いたします。いずれの講座も土曜日、日曜日の2日間連続して受講していただくことにより、プログラム内容の充実を図っています。

【基礎編】平成22年7月24日(土)、25日(日)  定員150名 受講費10,000円
【応用編】平成22年9月11日(土)、12日(日)  定員150名 受講費10,000円
【臨床編】平成22年12月18日(土)、19日(日)  定員150名 受講費10,000円
【実践編】平成23年2月19日(土)、20日(日)  定員 30名 受講費20,000円

会場:畿央大学
   〒635-0832 奈良県北葛城郡広陵町馬見中4-2-2 最寄駅「近鉄五位堂駅」
講師:畿央大学 教授  森岡 周
          准教授 松尾 篤
          助教  冷水 誠
          助教  前岡 浩 他

後日,大学ホームページで,その詳細をお知らせします.