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 牧口常三郎先生 生誕記念日に寄せて㊤ インタビュー 創価大学 伊藤貴雄教授 

2022年06月06日 | 妙法

危機の時代を生きる〉 牧口常三郎先生 生誕記念日に寄せて㊤ インタビュー 創価大学 伊藤貴雄教授 2022年6月6日

人道的競争の時代を開く
「貢献的人間」の育成を!
牧口常三郎先生
牧口常三郎先生

 きょう6月6日は、創価学会の初代会長である牧口常三郎先生の生誕151周年の記念日。新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ危機など、先行き不透明な状況が続く時代にあって、牧口先生の思想と行動に何を学ぶべきか。創価大学の伊藤貴雄教授へのインタビューを上下2回にわたって掲載する。(聞き手=小野顕一、村上進。下は7日付に掲載予定)

時代への警鐘

 ――牧口先生の『人生地理学』が出版されたのは、日露戦争が勃発する4カ月前(1903年10月)のことでした。同書は地理学書という形式をとってはいますが、激動する時代状況を具体的に見据え、世界の中で日本がどうあるべきかを考察されています。人々の分断や対立など厳しい状況が続く現代の危機を前に、改めて学ぶべき点は何でしょうか。
   
 牧口先生が生きた時代は世界的に「帝国主義」が巻き起こった時代でした。
 一般的に帝国主義は、1870年代の列強諸国の植民地獲得競争から、1945年の大日本帝国の敗戦まで続いたとされています。牧口先生は1871年に生まれ、1944年に亡くなりました。つまり、その73年の生涯は帝国主義の歴史とほぼ重なっているのです。
 戦後、帝国主義は終わったかのように見えましたが、完全に姿を消したわけではありません。帝国主義は、「領土の膨張・拡大」や「国民の意識統一」という特徴を持っています。まさに今、私たちが直面している状況は、帝国主義の残滓ともいえるものです。この負の遺産に再び世界が巻き込まれているといっても過言ではありません。
 思想家の幸徳秋水は『廿世紀之怪物 帝国主義』(1901年)の中で、帝国主義は「愛国心を縦糸に、軍国主義を横糸にして織り成した政策である」(趣意)と述べました。帝国主義は、国民の忠誠心を利用して武力増強を図るものだというのです。そして、こうした体制を下支えしていたのが当時の「教育」です。
 国民の意識統一を図ろうとする教育に対し、牧口先生は、一人一人が自分で物事を考え、幸せをつかむ「価値創造」の理念を掲げ、帝国主義の時流に対して異議申し立てを行ったのです。
   
 ――19世紀後半から吹き荒れた帝国主義の嵐は、現代における排他的なナショナリズムや利益至上主義のグローバリズムへとつながっていくものでした。当時の教育において、帝国主義の影響はどのように表れたのでしょうか。
   
 日本の教育が帝国主義の方向に舵を切ったのは、1890年の「教育勅語」発布からといえます。その前年の大日本帝国憲法発布によって、限定的ではありますがデモクラシーの制度的な設計が日本に入ってきました。
 しかし保守的な政治家たちは、革命が起きて国体が否定されることを危惧し、日本を万世一系の天皇中心の神の国とする国体思想を強めていきました。その結果、天皇と国家への「忠」(忠誠心)が教育の目的であるとうたわれ、教育勅語が生まれたのです。
 しかし、特定の国家を絶対的なものと位置付けることは、その国の子どもたちに他の世界との関係性を断ち切らせることにつながります。もちろん、それは本来の意図ではなかったかもしれませんが、結果的に、子どもたちの視野を日本国内に閉じ込める風潮を生んだことは否定できません。

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