眠りについて悩む原因は「8時間睡眠」にとらわれていること?
目を覚まさずに8時間ぐっすり眠れないのが問題なのではなく、
「人間にとっては(8時間連続で眠ることが)健康的かつ生理学的に望ましい習慣だ」という思い込みを持つのが問題だということです。そして、次のように説明しています。
精神科医のThomas Wehr氏は1990年代に、被験者に毎日14時間を暗闇の中で過ごしてもらい、その状態を1カ月間続けるという実験を行いました。
被験者の睡眠時間がこの日照リズムに合わせて規則的になると、不思議なパターンが浮かび上がってきました。
彼らはまず4時間眠り、そのあと1~2時間の覚醒時間をへて、2度目の4時間睡眠に落ちていたのです。
その中で、非常に興味深い事実が明らかになっています。人間は夜、途中で目覚めることなく一気に眠るように進化したわけではなく、最近まで2回に分けて睡眠をとっていたというのです。
Ekirch氏は同書の中で、「第1睡眠」「第2睡眠」と呼ばれる、2回に分かれた睡眠について詳しく解説しています。同氏は個人の日記や人類学の研究、さらには古典文学に至るさまざまな文献資料をあたり、
この睡眠パターンの例を500件以上集めました。すると、それらはすべてパターンが一致したといい、Parramoreさんいわく、「古代の天体観測儀アストロラーベが忘れ去られた星の位置を指し示すように、
日没から2時間後に第1睡眠が始まり、1~2時間の覚醒時間をへて、さらに第2睡眠に入っていたことが参考文献の記述からわかった」そうです。
第1と第2睡眠の間の起きている時間帯は、読書や祈り、同居人や近所の人とのおしゃべり、あるいはセックスの時間として使われていたのだとか。
現代生活でどう生かすのか
人類に刻まれてきた睡眠習慣に関する集合記憶が消し去られてしまったため、夜中に目が覚めると不安になり、私たちはさらに眠れなくなっています。
そして、何としてでも8時間の睡眠をとらなければという強迫観念が、さらなるストレスを生んでいるのではないでしょうか。1日のきつい肉体労働を終えた後は、十分に時間をとってゆったりとくつろぐのがかつての習慣でした。
そちらのほうが、わざわざ出かけて行ってヨガのレッスンを受けるよりも、心の健康のためには効果的なのかもしれません。
結局、問題なのは、身体の自然なリズムに逆らった生活をしているにもかかわらず、夜中に目が覚めてしまうと気に病むことなのかもしれませんね
「眠れない」と悩むのをやめたら状況が改善されたのだそうです。「眠れなかったらどうしようと不安を覚えながらベッドに向かう代わりに、
眠りの快楽をイメージしました。起きていればあれもできた、これもできたと考えてしまいますが、そういった罪悪感はひとまず押しやって、夢と現実の間に漂う感覚を楽しむようにしました」。
さらに彼女は「睡眠と休息を生活の中心に据えることは、食生活や病気を治す薬と同じように、私たちの健康にとっての基本なのではないか」との気づきに至りました。
というわけで、もし可能なら、今までより早めに眠りにつき、「途中で目が覚めたらイヤだな」と心配するのをやめてみませんか。
人間が持つ自然の睡眠リズムはとりあえず棚上げするしかなさそうです。