新宿にタイニイアリスという小劇場があり、毎年アジアのいろいろな地域から劇団を招いて国際フェスティバルを開催している。たしかここでの国際フェスティバルの開催はもう十年をはるかに超えているはずだ。小さいながらも息の長い活動を継続しているところは大したもので、小劇場の経営に関わるものとしては見習いたいものである。やはり小劇場を経営の雄であるdie pratzeと共同で発行しているミニコミ誌が「カットイン」。これもすでに30号近くを数えている。最近では、「東京国際芸術祭」の活動がレギュラーで紹介されるようになり、全体としてマイナーで過激なトーンの中にも何となくバランス感覚がうかがえるようになってきたように思う。今年2月に開催された東京国際芸術祭はクウェート、レバノン、パレスチナから3つのカンパニーを招聘してあっと言わせたのだが、その中でも格別に評判の高かったのがクウェートの劇団が日本で初上演した「アルハムレット・サミット」だった。シェイクスピアの「ハムレット」と現実の中東情勢とが交錯しあって進行していくような複雑なしかけの舞台だが、頭でっかちなつくりかと言えばそうではなく、観ていて非常にスリリングな舞台だったらしい(私は恥ずかしながら見逃してしまった)。最新号の「カットイン」で紹介されていたのは、日本人の俳優たちがこの「アルハムレット・サミット」のリーディングによる舞台上演に挑んだ、という記事。演出は俳優座の宮崎真子氏。日本で政治的状況にダイレクトにコミットする舞台は(坂手洋二氏の舞台など少数を除き)非常に少ないので、非常に意欲的な試みだと言えるだろう。ちなみに、今月の「カット・イン」には他のライターによる「華氏911」の評も載っていて、ライター氏は「華氏911」は「情報映画」であり、「情報映画」で何が悪い、と言っていた。確かに、そういうスタンスはあってよいし、この映画に対する摂氏方として(変換ミスだがおもしろいのでこのままにする)推奨できる態度であろう。
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