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曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

佐々木俊尚「キュレーションの時代」

2011-02-20 22:45:22 | アーツマネジメント
最新のベストセラー、佐々木俊尚「キュレーションの時代」(ちくま新書)を読んだ。

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
佐々木 俊尚
筑摩書房


昨年出た同じ著者の「電子書籍の衝撃」(ディスカバリー携書)も大変示唆的な本だったが、今回はその続編、拡張編というだけでなく、人間にとっての情報の意味づけがさらに明快な理論として示されている。

同書によると、「所有の時代は終わった」とされ、そして、いまや「接続と承認の象徴としての共鳴」が世の中全体の原動力になっていると指摘されている。

個人が、いろいろな場に「チェックイン」することで、明示的に各自の視座を示すことができる。これが著者の言う「キュレーション」であって、そのことで、情報を受け取る側に「世界観のゆらぎ」がもたらされ、固定化した思考の外に出ることが出来る。

非常にざっくりと言えば、上記のようなことが提起されている。

「所有から共鳴へ」というのは、「私有から共有へ」というのと一見似ているようで大きく違うように思う。
というのは、従来のような共通の場所や集団に規定された共有ではなく、互いの間に「接続と承認」の回路が必要であり、その回路が誰に対しても、どの方向に対しても多様に開かれているからである。

また、同書の中で「フィードフォワード」という言葉が使われている。私は、これが非常に面白いと思った。もちろん、「フィードバック」と対になる言葉である。
「フィードバック」だと、閉じた円環の中から出られない感じがあるが、「フィードフォワード」には、その行為自体に情報提供者の意思、コミットメントが感じられるし、受け手の存在に対して開かれていることが前提になっている感じがする。

この本を読みながら、「フィードフォワード」という言葉は、そのまま、今日のアートの特質をあらわすものになっているのではないか、という感想を私は持った。


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