ときどき、ドキドキ。ときどき、ふとどき。

曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

市民大学講座の発展形がつくれるのではないか

2006-01-16 07:40:24 | アーツマネジメント
先日の生涯学習に関する記述の続き。

→ (参考)生涯学習と文化政策 (2006/01/12)

生涯学習の取り組みとして、市民大学講座というタイプの催しは一般的だが、普通は受講生は単に講義を聴いてそれで終わりであり、そこから何かが発展的に出てくることは少ない。

思いつきだが、受講生が、講座で学んだことを活かして、次の年(または半期あと)の公開講座の内容を企画し実施運営を手がけることをやったらよいのではないか。

実は、横浜の「BankART1929事業」では、すでにそういうことをやっている。
「バンカートスクール」というのがそれだ。
これは、美術、演劇、ダンス、音楽、建築などさまざまな分野の第一線で活躍するアーティストや評論家が講師を務め、基本的に毎週一回、8週連続のレクチャー(一回の講義時間は120分)を行うものだ。
長時間の講義を連続して、という講義の性格からだろうが、講師によっては(というか、ほとんどの講師は)、いま現在自分の最も関心を持っているテーマをストレートにぶつけてくる。したがって、いわゆる入門編にとどまらない、深いレベルの議論になっている。

また、受講生も、一方的に講義を聴いておしまい、ではなく、講義終了後にバーに立ち寄ってあれこれと意見交換をする。実は、このことが大事である(別にお酒を飲まなくてもお茶でもよい)。受講者の数が多くても20人ほどの少人数であることも大事なことだ。

そして、このスクールから発展して、実際の展覧会などの催しが(全体ではなく一部の要素であっても)企画として成立している例も多いようだ。

この例にならって、例えば、同じ市民大学講座をやるにしても、ある程度の予算は市が用意しておいて、内容は市民(受講修了者)が協議に加わってつくるようにすれば、一方通行の講義の何倍何十倍もの効果を生むだろう。

講座の中身を考えることは、そう簡単ではない。ただ受け身で講義を聞いているだけでは自分でそれをできるようにはならない。自分の知識や経験を総動員して自分の考えをまとめ、他の人たちと意見を交換し、何度も自分の考えを修正する中から、はじめて企画として提案するに足るアイデアが生まれてくる。
最初は専門家のアドバイスが不可欠だろう。

このようなちょっとした工夫を取り入れるだけで、市民大学講座は(あるいは大学が主催する市民公開講座も含めて)いま普通に考えられているよりずっと大きな可能性を持っていると言えるのではないだろうか。

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4 コメント

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すでに事例は多いようです (うしのすけ)
2006-01-16 14:45:19
生涯学習講座から発展してNPOまでつくるという事例はまちづくり系では最近多いようです。

だいたい元気な主婦がその主役になっています。
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そうでしたか (sota)
2006-01-16 23:30:33
あ、そうでしたか。

私が知らないだけでしたね。



生涯学習とまちづくりは相性がいいということですかね。



芸術文化系ではイベント、まつりがきっかけになってアートNPOが誕生していくという事例はありそうですね。推測ですが。



趣味を同じくする人たち以外まで活動が拡がっていくかどうかが重要だ、ということでしょうか。
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おうみ未来塾 (ねぎやま)
2006-01-17 14:47:41
ども、ご無沙汰しています。

草津に移住して一年半余のねぎやまです。

僕も、この地で昨年6月から、滋賀県域の市民活動分野で「地域プロデューサー」(人材)育成のための「おうみ未来塾」なるものに入塾(第7期)して学んでいますが、これも、塾生が自分たちで塾運営を協議してやっていくというものです。

ひとくちに市民活動と言っても「環境」「福祉」「教育」「まちづくり」等々多伎にわたるテーマに関心があるほんま幅広い年代、職業(企業人、行政マン、主婦、退職者ほか)の方々と出会えるので、地域を知る上でとても参考になりますし、とても刺激になってます。



アートの領域も、すでに市民活動としての側面を無視できない状況にあると思うので、各地域でアート関係者が市民活動シーンにどんどん入っていくことが進めば、さらに活力を増せるものと思いますね。
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公立文化ホールをうまく活用すれば (そた)
2006-01-17 17:21:51
根木山さん、ご無沙汰です。



「おうみ未来塾」第7期ですか。すでに相当蓄積が出来てきていそうですね。



こういう企画は、公立文化ホールが地域資源を発掘する上で、とても重要ですね。



専門家のプロデュースによるハイレベルの公演等と市民プロデュースの催し(これも公演に限らない)とが刺激を与えあうような関係になれば、公立文化ホールの存在意義はその地域全体にとって大きなものになると思います。
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