ダンナのぼやき

あられダンナの日々のぼやきです。
色んな事を思い、考えぼやいてます…。

風立ちぬ

2013-08-24 22:20:57 | アニメ・コミック
『風立ちぬ』を観た。

日本が世界に誇るアニメ映画監督の巨匠・宮崎駿の最新作。
近年のジブリ作品の没落ぶりは酷かった。
「日本最高のアニメ・スタジオ」と呼ばれたのは遠い昔、作品の完成度の低下は明らかに著しかった。
そのハッキリした原因はアニメの技術的な事ではなく、優秀は脚本家や監督が出来る存在の育成に失敗した事が大きい。
結局、「スタジオ・ジブリ」の体質として良くも悪くも巨匠・宮崎駿と言う絶対的な存在が大きく影響しているからだと思う。



しかし、その巨匠・宮崎駿の前作『ポニョ』を観た時。
あの“問題作”により「巨匠、衰えたり」と思った。
同時に、その天才的な才能も遂に枯渇したとも感じた。
ジブリ産のアニメはその後も何本も公開されたが、全盛期のような血湧き肉踊るような躍動感、瑞々しいまでの美しさによる感動に欠ける凡作ばかりだった。



僕が歳をとったから?
それも事実だと思う。
今の若い世代が観れば、今のジブリ作品を観ても良いと思えるのかもしれない。
そんな僕には、もうジブリ作品を楽しめないのか?
それは「NO」だった。



本作に対して賛否両論が激しいとは聞いていた。
しかし、個人的には傑作だと思う。
正直に告白すると…泣いた。
素晴らしい作品だと思う。
やはり巨匠・宮崎駿は凄かった!!



本作の公開前。
これが宮崎駿の“遺書”であると言われた(後にジブリ側が否定)。
更に試写にて、巨匠自身が完成した本作を観て号泣したと言う。



正直な話。
巨匠の年齢を考えれば、本作が長編アニメ映画を監督するのは本当に最後になるかもしれない。
あと当初は巨匠の新作は、従来通りファンタジー系の作品だったらしい。
しかし、あの「3.11」を目の当たりにして巨匠は「今、この時代に何を作れば良いか?」と悩みスランプに陥った話も聞いた。
そして巨匠自身が出した答えは、他でもなく「自分自身」を描く事だった。



本作の主人公・堀越二郎は零戦を開発した人物(正確にはモデルにしている)。
だが、アレをアニメ作りに置き換えれば良く判る。
「堀越二郎=宮崎駿」である。



本作は簡単に言ってしまえば、未曽有の大震災に遭っても。
祖国が戦争を起こしても、自分の作り出した零戦により多くの命を奪う事になっても。
最愛の人が病に冒されて、その最愛の人を失う事になっても。
自分の描いた夢を追う事しか出来ない、不器用で哀れな男の物語だ。



でも、だからこそ魂を揺さぶるような衝撃と感動を呼んだのかもしれない。
ひょっとしたら自分も、この二郎のような男なのかもしれないと思ってしまった。
エゴイスティックで、大人になりきれないバカな男なのかと思えた。



批判が多い二郎役の庵野秀明の起用。
個人的には「他人の作品に出てる暇があったら、サッサと「劇場版エヴァ」を完結させろ!」と思った(笑)。
だが、コレが見事にハマっている。
あの『トトロ』における、お父さん役の糸井重里氏起用の奇跡の再現だと言える。
浮き世離れしていると言うよりも、自分の狭い世界の中で生きている男の“声”にハマっている。
ただ二郎自身のあまりに「いい男」描写が多いのは、巨匠のナルシズムとしか思えなかったが(苦笑)。



ある意味、本作にジブリのブランドとしての命運がかかっていたのかもしれない。
でもジブリは本作で自らの「殻」を破った、今後もソレを作品作りに反映出来るかに成否が出るだろう。
あと巨匠自身、自らの後継者に庵野秀明を指名したって印象も更に強まった(息子ではないのね)。
ジブリ側からのスタジオ・カラーへの懐柔は、今後更に強まるのは間違いない。



その辺りの事は抜きにして、僕個人としては本作を傑作だと評価したい。
夢溢れるファンタジー系の作品を期待すると「?」となるが、先に言ったように巨匠自身が開き直って自身を主人公にした作品だと思えば作品に対する見方も変わると思う。
巨匠・宮崎駿、老いてもその刃は未だに観る者に強烈な傷跡を残す程に鋭利であると痛感しました。

「少年よ、まだ風は吹いているか?」


PS:エンディング、この主題歌で涙腺が完全崩壊してしまいました…。



高いあの窓で あの子は死ぬ前も
空を見ていたの 今はわからない
ほかの人には わからない
あまりにも 若すぎたと
ただ思うだけ けれどしあわせ


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