天女戦3番勝負。先に2勝した方がその地位に就く。初戦は硬くなり、いいところなく敗れた。後のない第2局は、開き直りが、思った通りの指し回しにつながり、勝つ事ができた。そして1勝1敗で迎えた第3局。
振り駒の結果、私が先手となった。私は持ち前の攻め将棋で、早田天女を押し込んだ。自玉の囲いもそこそこに、私の駒が前進していく。早田さんは守りが固い棋風で、防戦一方の中、耐えて反撃の機会をうかがっていた。それでも、この日の私の攻めは冴えていて、しだいに優位を拡大していく。そのまま攻め手を緩めず、117手目を指した。早田さんは少し考えていたが、118手目はなかった。水で喉を潤し、しばしの沈黙の後「負けました」との穏やかな声が心地よく響いた。
青い畳のい草の匂い、障子から漏れてくる斜陽、慣れない着物の重み。私は勝った。天女となった。森村先生は涙を流して喜んでいた。もう随分、遠い日の出来事になった。
振り駒の結果、私が先手となった。私は持ち前の攻め将棋で、早田天女を押し込んだ。自玉の囲いもそこそこに、私の駒が前進していく。早田さんは守りが固い棋風で、防戦一方の中、耐えて反撃の機会をうかがっていた。それでも、この日の私の攻めは冴えていて、しだいに優位を拡大していく。そのまま攻め手を緩めず、117手目を指した。早田さんは少し考えていたが、118手目はなかった。水で喉を潤し、しばしの沈黙の後「負けました」との穏やかな声が心地よく響いた。
青い畳のい草の匂い、障子から漏れてくる斜陽、慣れない着物の重み。私は勝った。天女となった。森村先生は涙を流して喜んでいた。もう随分、遠い日の出来事になった。