ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

ひよっこ終了

2017-09-30 08:41:03 | Weblog
朝ドラ「ひよっこ」が終了しました。半年間、ほぼ毎日見続けたので、少し淋しいですね。

「ひよっこ」は前半、視聴率が伸びず「内容は悪くないのになあ」と個人的には思いながら視聴していました。特に主演の有村架純演じる谷田部みね子は「昭和の農村の娘」というイメージにはまっていました。

後半に思わぬことがありました。菅野美穂の登場です。前作「べっぴんさん」に出演していたので、今回の出演は考えもしませんでした。しかし、脚本家の岡田恵和さんが「べっぴんさんへの出演は知っていましたが、戦友である菅野美穂さんに、ぜひとも川本世津子役を演じてもらいたかったので、だめもとでオファーしました」という経緯を辿り、後半からの出演が実現しました。

危惧されていた視聴率も、途中からうなぎ上りとなり、続編の要望も殺到するほどの盛り上がりを見せました。主演の有村架純さんはものすごい美人という訳ではないけれど、表情が豊かで、将来が楽しみですね。脚本の岡田さんも大のお気に入りというのも頷けます。

「ひよっこ」は悪人がほとんど出てこないドラマでした。岡田作品らしいですね。しかし、ある意味、現実離れした設定で、物語を破綻させることなく仕上げる芸当は彼にしか出来ないのではないでしょうか。有村さん演じるみね子を始め、出演者がみんな輝いていました。

2017年、外に目を向ければ北朝鮮問題、国内ではさらに深刻化する少子高齢社会。そして「われ以外はみな騒音」という殺伐とした世の中で、ひよっこというドラマは、そうした重い現実を、ひと時忘れさせてくれたドラマでした。

さようなら「ひよっこ」。またあう日まで。
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凛とした光

2017-09-28 21:20:28 | Weblog
バケツから不安が溢れ出していたから

僕はそちらに気をとられて

握り締めていた、小さじ一杯の希望を落としてしまった

絶望の大海に落としてしまった


あれだけの希望を集めるのに

どれほどの時間を要したことか

どれほどの労力を要したことか


秋は同情もせず

あざ笑いもせず

ただただ凛とした光を放っている


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女性銀行員(1話完結)

2017-09-23 22:22:03 | Weblog
北野奈美は銀行員だ。主に窓口業務や事務処理などを担当している。現在A銀行では大幅に定額預金の高金利キャンペーンを行っている。ここ数日、奈美は客の苦情処理に没頭しているのだ。

A銀行に預金している客に高金利キャンペーンを大々的に宣伝した。しかし、今の世の中、うまい話は転がっている訳もなく、注意書きとして「普通預金から定額預金への移行は対象外」と記してあった。要するに、自宅に溜め込んでいる金、理想的なのは他行に預けている金をA銀行へ移してくれる事なのだ。

「定期に移せば、高金利になるんじゃなかったの?話が違うじゃないか」
年配男性は興奮気味だ。
「案内に、これまで預けているお金を定期に移し変えるのは、無効と書かれていたはずです」
入行して7年になる奈美は、涼しく答える。それでも、何人もの相手を繰り返していくうちに疲れは蓄積される。

奈美は銀行を退社して駅へ向かう。二人の女子高生とすれ違う。彼女らは笑いながら話していた。どう見えているのだろう、あの子達に私は。彼女たちの年代から、いくつかの恋は経験してきた。特に2年前に別れた歯科医とは結婚を意識していた。しかし、最初は優しかった彼も、付き合って1年を過ぎたあたりから、一緒にいても楽しそうでなくなり、やがて不機嫌になった。つられて私も、不満をぶちまけ喧嘩になった。私は修復のための喧嘩のつもりだったが、彼は別れたかったようだ。

29歳。30を目前に控え、孤独を感じるようになった。男勝りに仕事に集中しても、自宅に帰ると、淋しさが浮かび上がってくる。日に日に若さが、女性らしさが薄皮をはがすように、削り取られていくような気がする。これからまだ恋は出来るのだろうか?結婚は?子供は?

仕事の後、同僚と食事した帰り、すでに午後11時を過ぎていた。駅から自宅まで10分もない。しかし、光が消えた街を歩くのは少し怖い。ヒールの音が自分をますます弱くする。後ろから誰かが歩いてくる。少し振り向いたら体格の良い男性だった。男性も気を使ったのか、足を速めて奈美を抜いた。自宅に辿り着き、安堵した瞬間、皮肉にも自分が女性である事を体の奥底から感じた。
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孤独だろうか、宇宙は

2017-09-15 21:16:22 | Weblog
18の時、自分が壊れ

やがて、生活や人間関係が壊れ

何もかもが壊れていった

今は時も随分流れ、自然に壊れていくものも絶えない



生きていくには、騙していくしかなかった

数え切れぬほど、自分を騙してきた

今は「苦しみや試練を重ねるほど、自らの力となる」と誤魔化している

自分もうまく誤魔化されるよう努めている

こうした建前はどうしても僕には必要なのだ



本音は宇宙のひとかけらを借り、漂っていたい

一人分の酸素と一輪の枯れない花

それだけあればいい

たった一人

孤独だろうか?

人々が何十億と暮す星だから孤独なのではないか?




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漠たる不安(一話完結)

2017-09-10 22:02:44 | Weblog
現在、一ノ瀬哲也は4年前に定年を迎えた会社で、嘱託社員として働いている。契約が切れるまで、すでに1年を切った。埼玉から東京まで電車で1時間以上の往復。出勤時間も変わりなく、この日も7時にはリビングで新聞に目を通す。キッチンでは慌しく、妻が朝食を作っている。そしてテーブル越しに座っているのが、息子の正志だ。

哲也は朝食を終え、7時半前に自宅を出た。駅まで10分程度。少しくたびれた住宅街を縫うように歩く。年齢による衰えか、それとも数年前に胃がんの手術をしたからか、少し足腰が弱ったような気がする。息子のことが気掛かりだ。年齢は35歳。自分の後を追うように自宅を出る。しかし昼には自宅へ戻るのだ。週4日ほど、スーパーでパートをしている。いまだに哲也が扶養しているのだ。

子育ては順調に進んでいるつもりでいた。思春期にもこれといった反抗期はなく、真面目に受験勉強にも取り組み、一流に近い大学に進学した。しいて言えば、少し大人しいかなと思う程度だった。最初に変化を感じたのは、大学4年に進学した頃だった。就職活動をしないのだ。哲也が妻に尋ねると「専門学校に行きたい」との事だった。今にして思えば、この時、正志と話し合うべきだった。

正志は専門学校を中退。すでに大学卒業の賞味期限は切れている。ある意味、自然の流れで彼はフリーターになった。あれから12年ほどの歳月が流れてしまった。哲也が不思議に思うのは、正志が朝から夜までの長時間労働をしない事だ。少し痩せているが、特に体の悪いところはない。しかし、なぜか3、4時間の短時間のバイトを選ぶのだ。彼に直接聞いてはいないが、妻によると、「これくらいの時間が限界」と話しているようだ。今も昼に帰ってきて「疲れた」と漏らすらしい。

哲也は人を怒るのが苦手だ。それは自覚している。会社でも人との争いは出来るだけ避けてきた。母親は大概、息子に甘いものである。だから本来、父親である自分が、正志に強く言うべきなのかもしれなかった。しかし、摩擦を起こす勇気がなかった。哲也の会社の、正志と同世代の社員の働き振りを見ていると、到底、息子には無理だと感じる。しかし、今さらどうすれば良いというのだ。

あと少しで、会社を辞め、年金生活に入る。その収入が一ノ瀬家の柱となるのだ。10年後、哲也は75歳、妻も70を越え、息子は45歳。勇気を持てなかった罪なのか?何か、奥底から得体の知れない強い怒りが湧いてくる。正志に対してなのか、自分に対してか、社会に対してかよく分からない。動悸が速いのは、駅へ急いでいるばかりではなかった。
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羽のような、幻想のような

2017-09-08 22:30:54 | Weblog
豪雨がおさまり、小降りになった

世渡りの傘は持ち合わせていないが

今この軒下を飛び出し、走って目的地に向かおうかと迷う

迷っているうちに、雨は再び激しさを増した


いつになったら踏み出せるのだろうと不安になる

不安の正体は雨ではない

自分の弱さであり

前に向けない気持ちであり

時間である


雨は止んだ

しかし、空全体は分厚い黒雲に覆われている

夕方になり、西に目を向ける

夕焼けがない事を確認し、俯く

そもそも、僕の残りの人生に太陽は存在するのだろうか?


けれども未来の天気は知りたくない

そこに太陽がなければ死にたくなる

羽のような、幻想のような希望

それを携えていたからこそ、これまで生きてこられた

この先の人生、どこかに太陽は存在するという希望


膨大な苦しみ、諦めの影で

少年のような、今日にすべてを捧げる情熱を

思いもよらぬところで抱きしめながら


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緑色の雨

2017-09-04 21:26:57 | Weblog
夜空から緑色の雨が降る

傘にはじかれ、滴り落ちる雫は透明である

緑色の雨は、夏の花火の残像なのだろう

閑静な住宅街は、静かで寂れた街並みに変わった

萎れた空気を秋の音色が鳴いて励ます


僕は例年通り、辛さや苦悩の色に埋め尽くされている

未だに幸せの色を知らずにいる

早いもので、今年も4ヶ月を切った











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一話完結(父と娘)

2017-09-02 22:15:24 | Weblog
永田宏は一流企業の商社で課長職にある。仕事帰り、行きつけの居酒屋に寄り「そろそろ俺も子会社に出向じゃないかな」と店のママに不安とも愚痴ともつかぬ言葉を残し、店を後にした。思えば海外勤務を終え、本社に戻され、数年で課長に昇進して以来、10年以上がたつ。すでに50を過ぎた。

自宅に着いたのは午後11時半過ぎ。妻の幸代が玄関まで迎えに来る。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、食卓のテーブルに彩られている料理に箸をつける。

「美樹はどうした?」

「まだ戻ってないわ」

「連絡は?」

幸代は首を横に振った。

「全く、しょうがない奴だ。ここのところ毎日じゃないか」

「まあ、遊びたい盛りだから」

「まだあいつは未成年だぞ」

「大学に入って、付き合いも広がったのよ。あまり怒らないでね」

「さあな。それは向こうの出方次第だ」

12時過ぎ、チャイムが鳴り、幸代は玄関に向かった。しばらくして美樹がリビングに姿を現し、宏に「ただいま」の一言を残し、自室へと立ち去ろうとした。

「おい、美樹。ちょっと待て」

「何よ?」

「何かあるだろ、言うべきことが」

「だから、ただいまでしょ」

「その後だよ。すいません、遅くなりましただろ。大学生にもなって、そんなことも分からないのか」

宏の口調は、知らず知らずに強まっていた。美樹は少し宏を睨むようにして無言で立ち去った。

「あれじゃ、ろくな男に引っかからないな」

宏は幸代に捨て台詞を吐いた。

その夜、宏はなかなか寝付けなかった。10代半ばに人並みの反抗期はあった。しかし高校に進学した頃には、元の仲の良い父娘の関係に戻っていたはずだ。それが大学に入学したあたりから少しずつ、様相が変わってきた。女の子は難しい。宏の本音だった。

朝方、少し寝て6時過ぎに自宅を出て、いつもと変わらぬ時間帯の電車に乗る。座席に深く腰掛け、何駅か過ぎた。隣に若い女性が座る。美樹と同年代だろう。OLではなさそうだ。女子大生だろう。女性は早速、スマホをいじりだす。10分ほどでそれをしまい、しばらくして彼女の動きが止まった。宏は普段どおり、背筋を伸ばし、前を見ていた。突然、左肩に柔らかな重みと、羽のような感触にはっとした。左肩に目をやると、彼女が宏の肩で眠っている。睫毛をわずかに震わせながら。朝日が差し込み、彼女の髪を輝かせた。シャンプーの香りがした。

宏は目を閉じた。美樹を初めて抱いた時、風呂に入れた時、自転車が乗れるようになった時の笑顔。美樹の成長を辿っていた。このまま駅が消えてしまえばいい。永遠にこの電車が止まらなければいい。宏は願った。
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