ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

秋冬

2022-11-29 15:09:49 | Weblog

北風のドリブルが深く切り込んで

脆くなった秋の鍵を壊し、冬をこじ開ける。

 

僕は残りの運を捉えようとして

西へ東へ手を繰り出し、掴もうとするが

それは少女の心のように滑りやすく

気紛れに動くために

広げた掌には何も確認できない

 

秋冬の空は何らかの事情を抱えていて

見られてはならぬものがあるらしく

太陽を素早く隠し、夜に変えてしまう。

 

暗くて何も見えない

輝くのは月や星たちばかり

 

 

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蹴球の通り雨

2022-11-24 10:39:58 | Weblog

ワールドカップが開幕し、昨日、日本はドイツとの初戦を迎えた。

にわかと言われれば、返す言葉もない

4年に1度の通り雨

僕は僅かばかりの昂揚を覚えた。

 

 

試合前、チームを率いる森保は君が代を歌いながら泣いていた。

1点を先制させた日本は、前半終了間際、追加点を許した。大国ドイツを相手に致命的だった。

僕はテレビを消して、コンタクトを外し、風呂に入るという普段のルーティンに戻した。

 

再びテレビをつけると、すでに後半が始まっていた。

得点は1対0となっている

ビデオ判定により、ドイツの2点目は無効になったようだ。

これならまだ可能性がある。

僕はコンタクトを外したことを後悔した。

 

 

後半は森保の采配が冴え渡り、それに呼応するように、戦士たちが躍動した。

ラインを押し上げ、投入した選手が次々にゴールを決め、逆転したのだ。

ドイツの猛攻を体を張って凌ぎきり、勝利を手に入れた。

 

ぼやけた目で選手たちのインタビューを見聞きしながら、僕は少し人生を想った。

つまり後半での逆転である。

しかし、人生の後半には体力、知力の低下

それに数多くの病気が待ち構えている。

逆転はおろか、ゴールネットを揺らすことも至難だ。

それでも前掛かりに、いや、前のめりに

何度もつんのめって倒れながら立ち上がり

その繰り返しの中で、終了のホイッスルを聞けたなら、それは美しい響きに違いない。

 

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善人

2022-11-14 11:16:59 | Weblog

仕事上の関係で知り合った人が、病に倒れた。

ご家族によれば、すぐに手術だと言う。

一命はとり止めても、もう会うことはないかもしれない。

 

今年、初めて会い、それでも数十回は顔を合わせた。

大体、僕から話かけることが多かった。

無口でいて、温厚が伝わってくるような人。

印象に残っている言葉は

「中秋の名月、見ましたか?」

静かな語り口だった。

60代半ば、これから少しはゆっくり過ごせただろうに

 

僕はそんなことを考えながら、何年か前の秋服に身を包み、日毎に活気をなくしていく街を歩いた。

風が冷たくなった

まもなく木枯らしでも吹くのだろう

 

 

 

 

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イルカ「雨の物語」

2022-11-10 10:40:29 | Weblog

化粧する君の その背中がとても

小さく見えて 仕方ないから

僕はまだ君を 愛しているんだろう

そんなことふと思いながら

窓の外は雨 雨が降ってる

物語の終りに

こんな雨の日 似合いすぎてる

 

窓の外は雨 雨が降ってる

いく筋もの雨が

君の心のくもりガラスに

 

イルカと言えば「なごり雪」しか知らなかったのですが、「雨の物語」という名曲を発見しました。作詞作曲は伊勢正三。

伊勢さんいい仕事してますね。歌詞や曲からは情感が滲み出ています。この人はもっと評価されていいのではないでしょうか。「君と歩いた青春」とか。

それにイルカさんの歌声が味わい深いですから鬼に金棒です。個人的には吉高由里子の映像と重ねて観ると完璧です。

僕のリアルタイムは80年代、90年代ですが、70年代の情感のある曲にはまりかけています。

 

 

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マスクを外した貴族

2022-11-07 10:43:50 | Weblog

10月28日の深夜に差し掛かったA級順位戦

佐藤天彦の集中力は極限に達していた

脇息にもたれ掛かって長考にふける彼とは、また別の姿だった。

盤に近づき、体を前傾させ、小刻みに頭を揺らす。

 

対戦相手の永瀬は対象的だった

盤上を見詰めているかと思えば、頻繁に席を外した。

 

天彦はマスクをしていなかった

集中のあまり無意識に取ってしまったのだ

局面は天彦が有利に進めていたが、まだ難しい。

彼は必死に勝利への道筋を探していた

そんな時、突然、対局は中断された。

理由は天彦が1時間程していないことだった

そして判定は下され、天彦は負けた。

将棋にではなく勝負に

天彦は怒りが収まらぬまま、将棋会館をあとにした。

 

数日後、天彦は藤井聡太との対局に勝利した。

感想戦では弁舌滑らかに、藤井と二人だけの世界を楽しむ、普段と変わらぬ天彦の姿があった。

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もう少しだけ

2022-11-01 10:50:20 | Weblog

昨夜のテレビに賑わう渋谷が映る

若者たちの熱狂

参加していない若者の多くも

「東京へ出たい」

「この連中より楽しい人生にする」

と心を熱くしたのかもしれない。

 

同じ夜、僕は中島みゆきの「ファイト」が心に響かなくなっていることに少し落胆した。

画面の彼らを見て、思い出したことがある。

すでに心は壊れていた

確か19か20

何らかの決意を固め、僕の目には涙が溢れていた。

心が巨大な困難に立ち向かっていた

あの思いは知らぬ間に何処かへ消えた

 

誰かが言った

「人は諦めた時に年を取る」と

振り返れば諦めの連なり

走れとは言わない

歩いてくれ

ゆっくりでいい

立ち止まってもいいから

もう少しだけ前へ進んでくれないか

 

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