「そこの古い魂どいてくれ。頼むから」
老人は何らかの気配を察したのだろうか?歩調を緩めることなく、僕を容易にふるい落とした。いったん、アスファルトに叩きつけられたが、逆引力により、また僕は浮いた。このまま空まで飛んでいってしまいそうだったから、必死で下へ下へ向かおうとした。老人の後ろ姿が次第に遠くなる。彼のペットの姿も。
「仕方ない。ここまできたら犬でもいいか」
そう考え付いた時には、すでにターゲットを追う力も残っていなかった。その場にとどまり続けるだけで精一杯だった。
遥か前方に映る老人と犬とすれ違った人が、こっちに近づいてくる。若い女だ。僕の力がすべて抜けた。だからてっきり、空に吸い込まれたのだと思った。しかし、どうやら違う。街の景色に変わりはない。ただ、目の前の若い女だけが消えたのみだ。
理解するまでに時間がかかった。そして、ようやく確信した。「助かったんだ」と。何故、受け入れてくれたのかは解らない。とにかく彼女の優しさに僕は救われた。それにしても体内は心地いい。疲れた。しばらく眠りたい。人体の操縦はもうひとつの、というよりは本物の魂に任せておこう。
老人は何らかの気配を察したのだろうか?歩調を緩めることなく、僕を容易にふるい落とした。いったん、アスファルトに叩きつけられたが、逆引力により、また僕は浮いた。このまま空まで飛んでいってしまいそうだったから、必死で下へ下へ向かおうとした。老人の後ろ姿が次第に遠くなる。彼のペットの姿も。
「仕方ない。ここまできたら犬でもいいか」
そう考え付いた時には、すでにターゲットを追う力も残っていなかった。その場にとどまり続けるだけで精一杯だった。
遥か前方に映る老人と犬とすれ違った人が、こっちに近づいてくる。若い女だ。僕の力がすべて抜けた。だからてっきり、空に吸い込まれたのだと思った。しかし、どうやら違う。街の景色に変わりはない。ただ、目の前の若い女だけが消えたのみだ。
理解するまでに時間がかかった。そして、ようやく確信した。「助かったんだ」と。何故、受け入れてくれたのかは解らない。とにかく彼女の優しさに僕は救われた。それにしても体内は心地いい。疲れた。しばらく眠りたい。人体の操縦はもうひとつの、というよりは本物の魂に任せておこう。