「東の増田、西の藤井」。かつてこのように評された二人が、初めてタイトル戦で激突しました。結果は3勝0敗のストレートでしたが、3局ともいずれも僅差で、藤井棋王を苦しめた増田八段の研究が光りました。
今期は藤井聡太にとって、明らかに転換点になりました。初のタイトル失冠、そしてデビュー以来守り続けた勝率8割も途切れそうです。それだけ藤井さんが挑戦者にAI研究をぶつけられ、苦しんだ印象です。藤井さんと第2グループとの差は明らかに縮まりました。それでも叡王失冠の後は、棋聖、王位、王座、竜王、棋王と防衛し、七冠を維持したのは立派でした。
AIは年々強くなります。来期もその研究を精鋭たちがぶつけてきます。藤井さんはこれまで通り横綱相撲で受けて立つでしょうが、彼もまた進化しなければならない厳しい状況にあります。藤井聡太は将棋の天才であって、AI研究の天才ではありません。残念ながら今はAI研究も才能のひとつになってしまったようです。
しかし、昨日のNHK杯のような類いまれなる終盤力を生かした大逆転勝ちのような魅せる将棋は、藤井さんにしか指せません。
明治安田生命の調査では、藤井さんが理想の新入社員の男性1位に選ばれたそうです。彼はまだそういう年齢なんですね。スター性、知名度。将棋界は完全に藤井頼みの状況が続いています。22才の方にずっしりとした重みを感じながら藤井聡太はこれからも戦っていくのでしょう。