ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

不可抗力

2024-03-27 11:46:47 | 

桜の開花は寒の戻りで遅々として進まない

「全然、咲いてないな」

若い声が通りすぎていく

青春は振り返るために存在することを

只中の人々は知らない

 

この世界はなるようにしかならない

この人生もなるようにしかならない

諦観はずっしりとした絶望と

掴みどころのない安堵が混じり合う

蒸し暑い部屋で冷たい汗を流したり

弱者であることを滲ませる強がりを口にしたり

大いなる鳥かごの中で小さく夢を見たり

そして、ついには行き着くところに行き着くのだ

 

只中にある人よ

これから花が咲き

暖かくなり

日も長くなり

どこまでも長くなり

いつしか闇は消えて

光に満ちた世界が完成されるね

 

目に鮮やかな青天井の下

足どり軽やかに美しく走れ

青春が振り返るために存在することを知る

その日までは

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

喝采を浴びるために彼女は

2024-03-25 11:53:37 | 

すらりとした長身

端正な顔立ち

パリオリンピックの代表選考会

女子200メートル決勝

第4レーンに大橋悠依の姿はあった

 

彼女は東京五輪の個人メドレー200・400mの金メダリストである

しかし、この選考会で女王は窮地に立たされていた

400mは4位で代表を逃した

10才程も若い力に屈したのだ

「200で代表になれなければ多分やめる」

偽りのない本音だろう

もはや彼女に後はなかった

 

このレースに全てをかけた気迫に

持ち前の美しさを加えた泳ぎ

背泳ぎ、バタフライ、平泳ぎをこなし、トップに立った

残り50メートル、自由形の勝負

大橋は若手の追随を許さなかった

体半分のリードを保ち、逃げ切った

 

しかし、これでオリンピックの切符が手に入った訳ではない

設定タイムを上回らない限り、代表落選となるのだ

大橋は電光掲示板を見上げた

少しして彼女は安堵の混じった笑顔を見せた

記録は設定タイムを大きく上回っていた

 

東京五輪で金メダリストになり、モチベーションの維持に苦しんだ

しかし、まだひとつだけ手に入れていないものがあった

東京はコロナ渦で無観客だった

次のオリンピックでは満員の観衆の前で泳げるのだ

彼女は喝采を浴びるためにパリへ行く

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

藤井の全盛期はいつまで続くか?

2024-03-20 12:31:19 | 将棋

藤井聡太棋王に伊藤匠七段が挑戦する棋王戦五番勝負第4局が3月17日に行われ、藤井棋王が伊藤七段に勝ち、3勝0敗1持将棋で防衛しました。これでタイトル戦14連勝として、大山康晴十五世名人に次ぐ史上2位となりました。

また、中原誠十六世名人が持つ最高勝率記録はNHK杯決勝で佐々木勇気八段に敗れ8割5分2厘となり、中原十六世の8割5分5厘に惜しくも及びませんでした。それでも歴代2位。自己最高の勝率を残しました。

 

藤井聡太の2023年度は終了しました。前半は苦労する場面もありましたが、10月以降の竜王戦、王将戦、棋王戦は負けなしの圧倒的な強さを見せました。

果たして、藤井八冠の全盛期はいつまで続くのでしょうか?40才まではまず難しいでしょう。35才もかなり厳しいと思います。AIの登場で将棋の進化のスピードが格段に速くなりましたから。30才でタイトルを現在の半分、すなわち4つ保持していたら大したものではないでしょうか。しかし、もはやこの状態では全盛期とは言えません。

 

では、いつから藤井八冠が全盛期だったのかといえば、19才で五冠王、A級に上がった頃だと思われます。現在2年が過ぎて21才。個人的に全盛期の条件になるのは、タイトルと勝率だと考えます。例えばタイトル戦の場合は、1日制の五番勝負なら敗れる可能性はあると思います。ただ、藤井八冠が現在の強さで2度失冠する可能性は低いでしょう。よって、ひとつは六冠に後退した時、もうひとつは、14才でデビューして以来、7年続いている勝率8割を切った時です。驚異的な勝率があってこそのタイトル戦負けなしですから、8割を切れば自然とタイトル戦でも失冠が混じり始めると考えます。

ただ、個人的に藤井八冠には二大タイトルである名人、竜王の座は守り続けて欲しいです。また、一度ピークアウトした後、果たして逆襲できるのかということにも注目しています。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日の空はきっと青い

2024-03-12 10:52:12 | 

今にも雨が降りだしそうな

分厚い雲に覆われている

気象予報士によれば

先行きの天気は思わしくないらしい

路上には紙くずの日々たちが散らばっている

清掃ボランティアが巨大な袋に詰め込むが

紙くずの広がりの速さに追い付けそうにない

 

ヒトが水やタンパク質で出来ているなら

明日は何で成り立つのか

不確定なイレギュラーバウンドに

膨らむ不安と微かな期待

またその逆もあるのだろう

いずれにせよ不安は勝手に浮かび上がる

そのため生きていくには

期待をこしらえる事に力を尽くすしかない

 

声に出して叫ぶ自信など毛頭ない

だからせめて心で呟くのだ

「明日の空はきっと青い」と

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

斉藤由貴「卒業」

2024-03-07 11:36:39 | 音楽

制服の胸のボタンを

下級生たちにねだられ

頭かきながら 逃げるのね

ほんとうは嬉しいくせして

人気ない午後の教室で

机にイニシャル 彫るあなた

やめて 思い出を刻むのは

心だけにしてとつぶやいた

 

離れても電話するよと

小指差し出して 言うけど

守れそうにない約束は

しない方がいい ごめんね

セーラーの薄いスカーフで

止まった時間を結びたい

だけど東京で変わってく

あなたの未来は縛れない

 

ああ 卒業式で泣かないと

冷たい人と言われそう

でも もっと悲しい瞬間に

涙はとっておきたいの

 

作詞・松本隆 作曲・筒美京平。1985年2月発売。オリコン最高位6位。斉藤由貴のデビューシングル。

 

デビュー曲でありながら、作詞 松本隆、作曲 筒美京平のゴールデンコンビが名を連ねたところに、斎藤さんへの期待度の大きさが伺えます。この年は斉藤由貴、菊池桃子、尾崎豊が同時期に「卒業」という同じタイトルの曲をリリースして話題になりました。

当時は今以上に卒業というものに特別な思いがあったのかもしれません。高校から社会に出る人も多かったですから。

 

「制服の胸のボタンを下級生たちにねだられ、頭かきながら逃げるのね。ほんとうは嬉しいくせして」

今でもあるんですかね。こうした光景は。僕自身は目撃したことはないですけど。

「人気ない午後の教室で、机にイニシャル彫るあなた」

当時としてはこれも定番です。別に卒業式に限ったことではありませんが。

 

「離れても電話するよと小指差し出して言うけど、守れそうにない約束はしない方がいい、ごめんね」

斉藤由貴がいかにも言いそうなセリフです。建前よりも真実を好む。大人びています。

「セーラーの薄いスカーフで、止まった時間を結びたい。だけど東京で変わってく、あなたの未来は縛れない」

この辺りは松本さん、やはり上手いですね。

 

「ああ、卒業式で泣かないと、冷たい人と言われそう。でももっと悲しい瞬間に、涙はとっておきたいの」

やはりここです。この部分は自分も子供だった事もあり、理解できませんでした。「でももっと悲しい瞬間に」って?しかし、今なら分かる気がします。斎藤さんの生き方って独特ですからね。当時、松本さんは斎藤さんを間近で目にして、彼女の普通でない雰囲気を見抜いたのでしょう。

同じく松本さん作詞の卒業ソングである松田聖子の「制服」と比較するとよくわかります。いずれも名曲に違いありませんが「制服」は聖子さんの卒業、「卒業」は斉藤由貴の卒業にふさわしいのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心の杖

2024-03-01 10:39:43 | 

冬を残しながら春へ変わる通り道は夕暮れ

疲れた大人たちの背中は、あの頃に戻りたいと呟く

思い出は醜いものをどこかへ捨て

美しいものだけを残していく

明日になれば、その美貌にさらなる磨きがかかるだろう

 

子供たちはよく笑う

何が楽しいのか笑いが絶えない

社会に染まるほどそれを忘れ

愛想笑いさえぎこちない

笑い方が下手になっていく

生き方が下手になっていく

 

だから思い出にすがるのだ

それは心が倒れそうな時

杖となって支えてくれる

どしゃ降りの中、傘も差さずにはしゃいでいたあの頃の記憶が

セピアの光を帯びた杖となって

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする