制服の胸のボタンを
下級生たちにねだられ
頭かきながら 逃げるのね
ほんとうは嬉しいくせして
人気ない午後の教室で
机にイニシャル 彫るあなた
やめて 思い出を刻むのは
心だけにしてとつぶやいた
離れても電話するよと
小指差し出して 言うけど
守れそうにない約束は
しない方がいい ごめんね
セーラーの薄いスカーフで
止まった時間を結びたい
だけど東京で変わってく
あなたの未来は縛れない
ああ 卒業式で泣かないと
冷たい人と言われそう
でも もっと悲しい瞬間に
涙はとっておきたいの
作詞・松本隆 作曲・筒美京平。1985年2月発売。オリコン最高位6位。斉藤由貴のデビューシングル。
デビュー曲でありながら、作詞 松本隆、作曲 筒美京平のゴールデンコンビが名を連ねたところに、斎藤さんへの期待度の大きさが伺えます。この年は斉藤由貴、菊池桃子、尾崎豊が同時期に「卒業」という同じタイトルの曲をリリースして話題になりました。
当時は今以上に卒業というものに特別な思いがあったのかもしれません。高校から社会に出る人も多かったですから。
「制服の胸のボタンを下級生たちにねだられ、頭かきながら逃げるのね。ほんとうは嬉しいくせして」
今でもあるんですかね。こうした光景は。僕自身は目撃したことはないですけど。
「人気ない午後の教室で、机にイニシャル彫るあなた」
当時としてはこれも定番です。別に卒業式に限ったことではありませんが。
「離れても電話するよと小指差し出して言うけど、守れそうにない約束はしない方がいい、ごめんね」
斉藤由貴がいかにも言いそうなセリフです。建前よりも真実を好む。大人びています。
「セーラーの薄いスカーフで、止まった時間を結びたい。だけど東京で変わってく、あなたの未来は縛れない」
この辺りは松本さん、やはり上手いですね。
「ああ、卒業式で泣かないと、冷たい人と言われそう。でももっと悲しい瞬間に、涙はとっておきたいの」
やはりここです。この部分は自分も子供だった事もあり、理解できませんでした。「でももっと悲しい瞬間に」って?しかし、今なら分かる気がします。斎藤さんの生き方って独特ですからね。当時、松本さんは斎藤さんを間近で目にして、彼女の普通でない雰囲気を見抜いたのでしょう。
同じく松本さん作詞の卒業ソングである松田聖子の「制服」と比較するとよくわかります。いずれも名曲に違いありませんが「制服」は聖子さんの卒業、「卒業」は斉藤由貴の卒業にふさわしいのではないでしょうか?