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ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

今日という世界

2025-04-28 12:06:29 | 
祈りながら生きているよ
届かないと分かっていても
それは私もあなたも
呼吸が流れるように
鼓動を刻むように
幾千年も前から

汗をかいて生きているよ
実らないと分かっていても
それは私もあなたも
馬が走るように
泥が跳ねるように
幾千年も前から

息を飲むほどに美しいものや
愚かなほどに優しいものは
明日には姿を消してしまう
抗えない魔力が巨大な岩のように

幾億の汗と祈りの集合の上に成り立っている
文明と不条理に覆われた今日という世界
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夢を見た頃

2025-04-21 12:43:34 | 
ためらいのない
光を浴びて輝く
赤い服の缶コーラ
痺れながら飲み干す
ガラス細工の少年

若葉は眼に鮮やかで
その香りは風に吹かれて
街を心地よく染める

真新しい人が
上り坂の季節を
少しだけ息を切らしながら
駆け上がっていたあの日
宇宙に手が届くような気がしていた
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フェイバリット

2025-04-15 10:36:08 | 
歩みをあきらめた腕時計など
誰にも評価はされるまい
窓から差し込む光を浴び
皮肉にも輝いている

ベンチで佇む老人の背中は
静かに歴史を伝えてくれる
出来れば聞いていたいのだが
まだ僕は旅の途中なのだ

幼い頃に目を奪われた
野に咲いた鮮やかなレンゲソウは
生涯で最初に出会った
美しい刹那の夢だった
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春の眠り

2025-04-11 14:27:55 | 
励ますような陽だまりに
追いかけてくる君の声
落ちてゆく淡い花びら
落ちてゆく春の夢へ

しばらくして目覚めれば
少し痩せた横顔
君は驚いたように振り向いた

白いカーテンを開けると
母親に纏わり付く幼子
あのよちよち歩きでさえ
天国に近づき始めているのだ

君は眠りについていた
その冷たい手に触れてみた
飽きることなく握りしめた
温もりの戻らない君の手を
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絶望の誘惑

2025-04-07 11:37:31 | 
乱暴な寒暖に揺られ
いつ折れるとも知らない
頼りない枝にぶら下がり
そろそろ離すか
離せばどこに落ちるのか
次第に考える余裕さえ奪われていく
もうどうでもいいや

戸惑いの春の辺りは暮れて
痩せた道に人がぽつりぽつり
なす術なく流れてゆく
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法則

2025-03-18 12:44:35 | 
必ずと言い切れるだろう
美しさの奥には儚さが宿っていると

穢れのない白さ
透き通るようなまなざし
心地よく高鳴るときめき
青く澄みわたった夢

花盛りのその先に
詫びるように季節は過ぎて
誰もが知っていながら
すっかり忘れていた結末を描くのだろう
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パーツ

2025-03-14 15:30:00 | 
その背中には意思がある
丸まればおぼろげで
ピンと伸びれば明確になる

その口には目的が写る
締まりがなければぼやけて
しっかりと結ばれれば定まる

その老人の皺には威厳がある
自宅では長く生きた証しに過ぎないが
社員を前にすると空気を一変させる

その若者の目は多くを語る
細めているからといって
喜びを表しているとは限らない
見下しているのかもしれない
機嫌を伺っているのかもしれない
ただ、あの時の目は、はっきりと「悲しい」と叫んでいた
「この世の終わりだ」と叫んでいた
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夏の夢

2025-03-10 12:40:39 | 
夢の中で夏を探していた
美しかった夏を探していた
大きな網を持ち
足音を殺しながら

もし捕まえることができたなら
春の裏側にそっと置いておく
ある人には懐かしい夏を
ある人には初めての夏を
ゆらゆら立ちのぼる陽炎
早く見つけなければ溶けてしまう

小麦色を愛していて
Tシャツで歩けば
生ぬるい夜風が心地よく
カミナリは刺激的で
浴衣姿の花火は涼しげだった
何処へいったのだろう
遠くで海が騒いでいる

本当は分かっているんだ
あの夏が二度と還らないことを
たとえ夢の中でさえ
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三寒四温

2025-03-01 13:36:38 | 
街の中心に出向くと
多くの学生たちを見かける
この三寒四温の季節が
彼らにはよく似合う

売り言葉に買い言葉
些細なことで声を荒げ
僕は雨の中、家を飛び出した
傘など差す気分ではなかった
しかし雨は強まり
やがてどしゃ降りになった
たまらず古い店の軒下に体を滑らす

しばらくして雨が上がった頃には
僕の気分も鎮まっていた
ポケットに手を入れてもコインはない
街をふらつくうちに夜も深まってきた
渋々とぼとぼと家に近づいていく
そんな苦い記憶すら懐かしい
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夜が明けたように

2025-02-25 12:51:44 | 
年を重ねるほど
くっきりしてくるものがある
夜が明けたように見えるのだ

人生は短いということ
遥か未来もとうの昔も
案外、近いのだ
80才、90才、100才
100年は長い
しかし100年の人生はどうなのだろう

悲劇は突然やってくるということ
前もってそれを教えてくれる者は
めったに現れず
もし顔をあわせても
あまりにも遠慮がちで
そして間もなく襲われる者は
その気配に鈍感だ

それにしても春への歩みは
まだゆっくりしているね
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