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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高橋睦郎『つい昨日のこと』(20)

2018-07-28 09:59:48 | 高橋睦郎「つい昨日のこと」
20 凡人の権利

 英雄と対比し、「凡人の権利」を高橋は、こう語る。

八十歳になって彼らの優劣を論うたのしみは
英雄にも暴君にもなれなかった草莽 我らのもの

 「論う」は「あげつらう」と読む。「論じる」あるいは「語る」ときの、「内容」よりも「論じ方」(語り方)の方に重点があるのかもしれない。自分を棚に上げて何かを言う、というのが「あげつらう」だと私は思う。
 たしかに庶民(凡人)の権利ではある。
 でも「英雄にも暴君にもなれなかった」と言ってしまうと、そこに羨望がまじってしまう。「権利」は負け惜しみになってしまう。
 「草莽」は「そうものう」か。
 私はひねくれた性格なのか、こういうことばを読むと、凡人はこういうことばはつかわないなあ、と反発してしまう。
 「英雄にも暴君にもなれなかった」ではなく、「なることを拒んだ」ひとのことばの方を読みたい。「英雄や暴君」を笑うことばを読みたい。

 高橋のことばはゆるぎがないが、それは教養の完結のなかでのゆるぎのなさだ。暮らしの中で生き抜いてきた強さとは違う。ずるさ、たくましさがない。

つい昨日のこと 私のギリシア
クリエーター情報なし
思潮社

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