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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

大橋政人『朝の言葉』

2018-07-28 10:31:32 | 詩集
大橋政人『朝の言葉』(思潮社、2018年07月25日発行)

 大橋政人『朝の言葉』は、表題作になっている「朝の言葉」がいちばん印象に残る。

まあ、花はえらいね
いろんな色に咲き分けて

隣に住んでる
田野倉トメさん、八十九歳
毎朝、勝手にわが家の庭に入ってきて
ひとまわりして出て行く

花はえらいもんだよ
だれが色を塗ったという訳でもないのに

毎朝、同じことを言っているのに
本人はそのことに気づかない

毎朝、同じことを聞いているのに
聞いている方も聞き飽きない

いつ聞いても
新しい
朝の言葉だ

 「同じ(こと)」は「いつ(聞いて)も」(いつも)と言いなおされている。「いつも」とは「普遍(永遠)」でもある、と要約してはいけないのかもしれないが。さらに、この「いつも」は「えらい」と言いなおされているのかもしれない。「普遍/永遠」に達したものは「えらい」。
 この「同じ」「いつも」の反対のことばは「いろんな」(同じではない、同じとは違う)と「新しい」(いつもと違う)だね。しかし、反対のことばなのに、知らない間に「同じ」「いつも」と重なってしまうところがある。
 どうしてだろうか。
 繰り返すからだ。
 「同じことを言っている」(同じことをしている)、「同じことを聞いている」には、繰り返しがある。繰り返すから「同じ」だとわかる。でも「同じ」を繰り返しながら「同じ」ではない。「新しい」。
 何が?
 ここから先を説明するのはむずかしい。
 「同じ」に見えるが、「同じ」ではないのだ。毎回、「まあ、花はえらいね」ということばは生み出し直されている。違う日に言っているのだから、そこには「違い」があるはずだ。でも、「違い」よりも「同じ」ことの方を強く感じる。そして、「同じ」ならば退屈するかといえばそうではなくて、「同じ」であると「新しく」判断するのである。「新しい」は聞く側からも生み出されている。「同じ」ではなく「新しい」が毎日生み出される。
 「永遠/普遍」は、どこか遠いところにあるのではなく、日々、「同じ」を「新しく」生み出し続けるとき、その瞬間の中にあらわれる。





*

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朝の言葉
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