破棄された詩のための注釈02
2020年7月29日
荒廃した人格の一部は、若いときの恋人によってつくられたものだが、彼女には意識できていなかった。それは階段をのぼるとき、手すりをもつのではなく、壁に手を這わせる癖となって出ていた。
この文章は削除され、別の散文詩の一場面につかわれた。かわりに、こう書かれた。
階段をのぼりながら、女はこころのなかで、後ろからついてくる男をあざ笑った。そうしないと絶頂に達しないからだ。そして、まだ何もしていないのに、足もとがふらついた。
しかし、その描写には、「悪魔的描写」をするという作家の文体がまじっていることに気づいたのか、さらに書き直された。
踊り場の高い窓から射してくる白い光は、スカートに触れて青い色を散らした。
陳腐だ。男は唾を吐き、陳腐さを隠すために、こうつづけた。
踊り場の高い窓から射してくる白い光は、スカートに触れて青い色を散らした、という夢を見てはいけない。このことばは、自画像として、いつまでも彼女を苛んだ。
2020年7月29日
荒廃した人格の一部は、若いときの恋人によってつくられたものだが、彼女には意識できていなかった。それは階段をのぼるとき、手すりをもつのではなく、壁に手を這わせる癖となって出ていた。
この文章は削除され、別の散文詩の一場面につかわれた。かわりに、こう書かれた。
階段をのぼりながら、女はこころのなかで、後ろからついてくる男をあざ笑った。そうしないと絶頂に達しないからだ。そして、まだ何もしていないのに、足もとがふらついた。
しかし、その描写には、「悪魔的描写」をするという作家の文体がまじっていることに気づいたのか、さらに書き直された。
踊り場の高い窓から射してくる白い光は、スカートに触れて青い色を散らした。
陳腐だ。男は唾を吐き、陳腐さを隠すために、こうつづけた。
踊り場の高い窓から射してくる白い光は、スカートに触れて青い色を散らした、という夢を見てはいけない。このことばは、自画像として、いつまでも彼女を苛んだ。