94 ダレイオス
「ダイオレスが/いかにペルシャ帝国を継承したか」。そのことを書こうとしている。池澤の註釈によれば「詩人フェルナジス」は架空の人物。「ダイオレスが/抱いたに違いない感情を分析せねばならぬ。」
だが、戦争が起こって詩作は中断。そして、最終蓮。
「慢心と陶酔」が繰り返される。この繰り返しを読むと、「慢心と陶酔」はふたつのものではなく、ふたつでひとつという感じがする。いや、「慢心は陶酔」「陶酔は慢心」とイコールで結ばれ、ひとつになっているように感じられる。結合のなかにセックスの「愉悦」の響きがある。ギリシャ語ではどういう「音」なのかわからないが。
「去来する」ということばがあるが、「慢心と陶酔」は、それこそ「去来する」のだろう。去ったと思えばまたやってくる。やってきたと思えばまた去っていく。その行き来さえ「愉悦」だ。
散文だとこういう繰り返しは「うるさい」が、詩の場合は「聴く悦び」を与えてくれる。カヴァフィスは、繰り返しの音楽が得意だ。モーツァルトのように。
池澤の註釈。
たしかに「哲学を要する問題だ」ということばは出てくるが、どうだろうか。「君主」も虚構のための素材ではないのか。誰にでも「慢心と陶酔」はある。カヴァフィスが目を向けているのは、人間に共通する愉悦だと私は思う。
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詩人フェルナジスが、執筆中の叙事詩の
ある重要な部分に心を砕いている。
「ダイオレスが/いかにペルシャ帝国を継承したか」。そのことを書こうとしている。池澤の註釈によれば「詩人フェルナジス」は架空の人物。「ダイオレスが/抱いたに違いない感情を分析せねばならぬ。」
おそらくは慢心、そして陶酔--いや、むしろ
偉大なるものの空しさを見てとったのではないか。
詩人はこの問題を深く考える。
だが、戦争が起こって詩作は中断。そして、最終蓮。
さりながら、この衝撃と困惑の中で、
詩に関わる思いはそれでも去来する--
慢心と陶酔、それだったに違いない。
ダイオレスが感じとったのは慢心と陶酔だったのだ。
「慢心と陶酔」が繰り返される。この繰り返しを読むと、「慢心と陶酔」はふたつのものではなく、ふたつでひとつという感じがする。いや、「慢心は陶酔」「陶酔は慢心」とイコールで結ばれ、ひとつになっているように感じられる。結合のなかにセックスの「愉悦」の響きがある。ギリシャ語ではどういう「音」なのかわからないが。
「去来する」ということばがあるが、「慢心と陶酔」は、それこそ「去来する」のだろう。去ったと思えばまたやってくる。やってきたと思えばまた去っていく。その行き来さえ「愉悦」だ。
散文だとこういう繰り返しは「うるさい」が、詩の場合は「聴く悦び」を与えてくれる。カヴァフィスは、繰り返しの音楽が得意だ。モーツァルトのように。
池澤の註釈。
政治のみにかかわった偉大な君主の心を詩人が推量する。彼はこれが哲学を要する問題だと考えている。
たしかに「哲学を要する問題だ」ということばは出てくるが、どうだろうか。「君主」も虚構のための素材ではないのか。誰にでも「慢心と陶酔」はある。カヴァフィスが目を向けているのは、人間に共通する愉悦だと私は思う。
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