goo blog サービス終了のお知らせ 

詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

誰も書かなかった西脇順三郎(40)

2009-07-27 07:21:44 | 誰も書かなかった西脇順三郎
 『旅人かへらず』のつづき。

五四
女郎花の咲く晩
秋の夜の宿
あんどんの明りに坐わる
虫の声はたかまり
手紙を読む
野辺の淋しき

 この作品は1行目が印象的だ。なぜ「晩」なのだろう。いつも気にかかる。私自身を納得させることばがみつからない。

五五

くもの巣のはる藪をのぞく

 なぜ「藪」か。蜘蛛の巣がはっているから、といえばそれまでだが、「やぶ」という音も重要だろう。ここにも西脇の濁音好みがあらわれているとわたしは思う。

五六

楢の木の青いどんぐりの淋しさ

 「の」の連続。そして、「青いどんぐり」。完成したもの(完熟したもの)よりも、これから完成へ向かうもの。その「淋しさ」は「美しさ」とおなじである。「いのち」の、これから広がっていく力。そこにあるのは、力の充実かもしれない。




定本西脇順三郎全詩集 (1981年)
西脇 順三郎
筑摩書房

このアイテムの詳細を見る

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北川透「「海馬島遺文」四片」 | トップ | 樋口伸子訳・エリオ・パリア... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

誰も書かなかった西脇順三郎」カテゴリの最新記事