『旅人かへらず』のつづき。
この作品は1行目が印象的だ。なぜ「晩」なのだろう。いつも気にかかる。私自身を納得させることばがみつからない。
なぜ「藪」か。蜘蛛の巣がはっているから、といえばそれまでだが、「やぶ」という音も重要だろう。ここにも西脇の濁音好みがあらわれているとわたしは思う。
「の」の連続。そして、「青いどんぐり」。完成したもの(完熟したもの)よりも、これから完成へ向かうもの。その「淋しさ」は「美しさ」とおなじである。「いのち」の、これから広がっていく力。そこにあるのは、力の充実かもしれない。
五四
女郎花の咲く晩
秋の夜の宿
あんどんの明りに坐わる
虫の声はたかまり
手紙を読む
野辺の淋しき
この作品は1行目が印象的だ。なぜ「晩」なのだろう。いつも気にかかる。私自身を納得させることばがみつからない。
五五
くもの巣のはる藪をのぞく
なぜ「藪」か。蜘蛛の巣がはっているから、といえばそれまでだが、「やぶ」という音も重要だろう。ここにも西脇の濁音好みがあらわれているとわたしは思う。
五六
楢の木の青いどんぐりの淋しさ
「の」の連続。そして、「青いどんぐり」。完成したもの(完熟したもの)よりも、これから完成へ向かうもの。その「淋しさ」は「美しさ」とおなじである。「いのち」の、これから広がっていく力。そこにあるのは、力の充実かもしれない。
定本西脇順三郎全詩集 (1981年)西脇 順三郎筑摩書房このアイテムの詳細を見る |