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漫画貧乏

2013-02-08 19:48:48 | Weblog

「漫画貧乏」(佐藤秀峰著)という本を読みました。今日のブログは久々に読書感想です。

以前は自分の電子コミック制作日記の合間に、マンガや小説などの読書感想をブログに混ぜていたんですけどね、最近はもっぱら制作日記オンリーでした。

たしかにここのところあまり本読んでなくて、久しぶりに読んだのがこの「漫画貧乏」。「ブラックジャックによろしく」や「海猿」の佐藤秀峰が、理不尽な漫画業界に七転八倒し、オンラインコミックサイト「漫画 on Web」を立ち上げるまでの悪戦苦闘を記録した本です。

そういえば「ブラックジャックによろしく」は、このブログでも感想を書いたことがあるんですけどいつごろだっけ...と調べてみたら、2007年4月12日のブログでした。もう6年も経つのかΣw(゜д゜* )wなんと!!

病気で苦しむ患者の身になり、その治療にあたる医師の立場になり、その現場に肉薄して描く「ブラよろ」には圧倒されたものでした。医療現場の矛盾や問題に苦悩し戦う主人公と共に、作者・佐藤秀峰の戦う姿も透けて見えるような作品でした。

あれから6年、同じ作者の「漫画貧乏」を読みました。やはりここでも作者は戦っていました。戦場をマンガの出版業界に移して。

本の中で著者は、適正な原稿料を求めるために雑誌編集部に「原稿料の定義」について説明を求めます。

お金の話をすることが下世話という風潮がある日本人としては、なかなか編集者や編集長に「原稿料の定義についておしえてください」とはなかなか聞きにくいですよね。私の偏見かもしれませんが、とくにマンガ家という人種にとっては苦手な分野かもしれません。

私はITの世界で飯を食ってきたんですが、見積書や請求書を書いたり、たまに契約書に印鑑を押したり、自分の仕事の範囲を決めたり、といった制作や開発の現場で実戦を通して否応無く交渉術のようなものを身に付けてきました。

でも昔、マンガの原稿料を少しですがいただいたこともあるし、出版社のメディア事業部の社員として出版の現場で働いたこともあります。

その時の印象としては、お金について他の業界にはないアバウトな考え方というか、後回しというか、「言わなくてもわかってるよね?」的な雰囲気があったような気がします。まあ自分が知っている業界なんて高が知れていますが。

原稿料がいつ支払われるのか分からなくて電話で確認したら、「末締めの翌々末です」とかいわれて、『あ、そうですか...(まだ2~3ヶ月も先か、がっくり)』なんて若かりし頃のほろ苦い気持ちを、今この文章を書きながら思い出しました。

「漫画貧乏」に話を戻すと、マンガの出版業界の理不尽なシステムの中で、割の合わない待遇を押し付けられているマンガ家の状況を変えようと孤独な戦いに挑む著者。

やがて出版不況に加え、時代がデジタルに向かう中、著者はネットの海に漕ぎ出します。

それにしても業界の体質的な「ひずみ」や「問題点」に挑むのは、普通はマンガの中で主人公にやらせるものですが、この著者はリアルの世界で自らやってしまうところがすごいですね。マンガを描くエネルギーをそちらに吸い取られてしまいそうなもんですが...

佐藤秀峰曰く、「漫画はもうかりません。本当だよ。」

しかし、世界に誇るべき日本の文化であるマンガとアニメ...「漫画貧乏」と「赤貧アニメーター」。なぜかくも過酷な現場なのであろうか?

そんな現場で生命を削って紡ぎ出される作品だからこそ、何かが宿るのかも(‐ω‐)ふむ。

あまりにも日本人的すぎる(TДT*)!