Webcomic.tv

動画・音声・インタラクティブ性などで織り成す新スタイルのマンガ制作日記

桃太郎 海の神兵(iBooks Author制作日記43)

2013-10-03 19:05:04 | iPad版制作日記

先月末ごろに、NHKアーカイブスの「日本アニメの開拓者・手塚治虫~“鉄腕アトム”放送から50年」を観ました。

その中で、ずらーっと手塚治虫のコミックスを並べて映していましたけど、いやはや人間業とは思えない仕事量ですよね。それでも「アイデアはバーゲンセールするほどある」と本人が言っていたように、まだまだ人生の時間が足りなかったようです。

病気で入院後も病室で描き続け、こん睡状態になってからもふっと眼を覚まし「鉛筆を...」と求めたそうですから、最後まで本当にすさまじい創作意欲でした。(この部分は上記TV放送にはありません)

手塚治虫には、あと40年分アイデアがあったそうです。そのアイデアをとりあえず書き留めておいて、いざというときは後輩にバトンタッチするということはありえなかったんでしょうか。

そのマンガの神様・手塚治虫が、16歳のときにあるアニメーション作品に出会っています。それが日本初の長編アニメーションといわれる「桃太郎 海の神兵」。

1945年の終戦4ヶ月前に封切られているこの長編アニメは、松竹動画研究所の制作で、国威発揚のための国策映画です。よくもまあ終戦間際の激しい空襲の中、このような長編アニメが作られたものですが...。

当時旧制中学の学生だった手塚治虫は、焼け野原に立つ松竹座のひえびえとした客席で泣きながらこのアニメを観たそうです。そして、「日本でもこんな見事な作品が作れるようになったんだ!」「一生に一本でもいい。オレの漫画映画を作ってこの感激を子供たちに伝えてやる!」と決意したそうです。

手塚治虫にとってこのアニメとの出会いは、後のTVアニメにかける熱い思いにつながる決定的なものだったんじゃないでしょうか。

この「桃太郎 海の神兵」の絵柄がとてもほのぼのとしていて可愛いんですよ。そして上品な雰囲気を醸し出していて非常に魅力的なので、ちょっと調べてみたら美術で参加されてる黒崎義介という童画家の絵柄なんですね。私の好きなタイプの絵です。

その可愛らしく子供達に夢を与えるほのぼのとした絵柄で、戦争を描かなければならなかった時代と制作者の思いが、叙情的なシーンや戦闘場面など随所に込められているように感じました。

ディズニーの「白雪姫」が日本で初めて公開されたのは1950年なので、それより5年前に「桃太郎 海の神兵」のようなハイクオリティの長編アニメが日本で作られていたことが驚きです。

その当時、日本のアニメ制作現場にどの程度ディズニーなどの海外のアニメーション情報がもたらされていたのか知りませんが、すでにその当時から熱い思いでアニメ制作に取り組んでいた人達がいて、その思いが今の日本に受け継がれていることに感動です!

さて最後に、電子コミック【ナナのかぼちゃパン】の進捗状況を少々(^^;)。

上の画像は、最終ページの1ページ前の雄作とお客さんの会話シーンですね。

まず雄作のアドバイスにより改良された「ナナのかぼちゃパン」が、店内に並んでいる画像が全画面でバーンと表示されます。

次に、客のお姉さんがかぼちゃパンを発見し「あっ、かぼちゃパンだー!」と喜ぶシーン。

そしてその後、雄作とお客さんの会話が始まります。雄作が喋るときは雄作のコマのレイヤーが上に来て、客のお姉さんが喋るときは反対に入れ替わることで会話にテンポを持たせています。ってほどのもんでもないすけど(^Д^)。

コマの上下に少し立体感を出したかったので、2つのレイヤーの間にもう1枚陰のレイヤーを挟みました。

「桃太郎 海の神兵」の時代、そして手塚治虫の時代に、パソコンでアニメを作る環境があったら、彼らはどんな世界を作り上げ見せてくれたんでしょうか。

ついそんなことを考えてしまいます。