ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 75ページ目 マジシャンソムリエとの対決  

2012-03-26 21:15:30 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【75ページ】


「それでは、ローソクの火を消します。」


狩野は、トランプのカードを一枚抜き出し、人差し指と中指の間に挟んだ。

そして、両指から放たれたカードは、ローソクに向かって飛んで行き、ローソクの芯

をかすめて飛び越していった。


「おっ!」

二人は、ローソクの火が消えたと思って感嘆の声を上げた。

しかし、炎は再び点った。

もう一ミリ芯の下にカードが当っていれば、完全に消えていたのだが・・・・。


「残念ですが、ローソクの火を消すことができませんでした。」


狩野は、申し訳なさそうに言った。


「ワインマジックは失敗です。 ヴァルミュールを赤ワインに替えることができません

でした。」


「和さん、ヴァルミュールをいただきましょうか?」


高木社長が言った。


「ええ、いただきます。 狩野さん、ひとつ聞いてもいいですか?」

「何でしょうか?」

「もし、ローソクの火が消えていたら、赤ワインに本当に替わったのですか?」

「私は、マジシャンですから!」


狩野は、和音の質問をかわした。

彼は、箱の中から、シャブリ・グラン・クリュのヴァルミュールを取り出し、

二人のグラスに注いだ。